塩野義製薬は2日、抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」投与後のPA/I38アミノ酸変異株検出と症状悪化に関して、臨床試験データで明確な関連性が確認されなかったと発表した。
これらの臨床試験データは、4月中旬にオランダで開催された欧州臨床微生物学感染症学会議、および 8月28日~9月1日に シンガポールで開催されたOPTIONS Xで報告されたもの。
それによると、PA/I38アミノ酸変異株の検出頻度は、低年齢小児患者で高かった。また、ウイルスの型としては、成人・青少年、小児ともにA/H3N2型で検出頻度が高かった。
さらに、PA/I38アミノ酸変異株は、服薬前時点でのインフルエンザウイルスに対する抗体価が低い患者で高頻度に検出され、低年齢小児患者でPA/I38アミノ酸変異株の検出頻度が高かった。その要因としては、免疫機能の未成熟が影響している可能性が考えられる。
成人・青少年におけるPA/I38アミノ酸変異株と臨床症状の関連は、CAPSTONE-1試験では、ゾフルーザ投与後にPA/I38アミノ酸変異株が検出された患者群の罹病期間中央値は、同変異株が検出されなかった患者群よりも長い傾向にあったが、プラセボ投与群より短かかった。
CAPSTONE-2試験では、ゾフルーザ投与後にPA/I38アミノ酸変異株の検出された患者群の罹病期間中央値は、同変異株が検出されなかった患者群よりも短かく、両試験において、PA/I38アミノ酸変異株の検出と症状の悪化に明確な関連性は認められなかった。
一方、小児では、国内小児試験(錠剤・顆粒剤)は、ゾフルーザ投与後にPA/I38アミノ酸変異株が検出された患者群において、罹病期間中央値が長い傾向が認められ、特にA/H3N2型に感染した低年齢小児で罹病期間が長い傾向にあった。
また、一部の患者で再発熱が認められたが、この試験では比較対照群のデータはなく同変異株の臨床症状への影響の有無を明確に判断することはできなかった。
グローバル小児試験では、ゾフルーザ投与後にPA/I38アミノ酸変異株が検出された患者群での罹病期間中央値は、同変異株が検出されなかった患者群と比較して長い傾向が認めらたが、オセルタミビル群と同程度であり、小児集団も、一定の治療効果が示唆された。
これらの結果から、成人・青少年では、ゾフルーザ投与後のPA/I38アミノ酸変異株の検出と罹病期間中央値の関連性に一定の傾向は認められず、また同変異株の有無によらず、評価した集団において治療効果を示すことが示唆された。
小児では、比較対照のない日本人集団での試験成績で、PA/I38アミノ酸変異株が検出されたA/H3N2型感染の低年齢小児患者で罹病期間中央値が長い傾向や、一部の患者における解熱後の再発熱が認められたが、グローバル小児試験では、小児で治療効果が確認されているオセルタミビルと比べて明確な差はみられず、一定の治療効果を示唆する結果が得られた。
現時点では、小児において解析に利用可能なデータが限られており、引き続きデータの収集と解析が必要と考えられる。