新型コロナウイルス感染症治療薬として血漿分画製剤開発に着手     武田薬品

 武田薬品は4日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を有するハイリスク患者の治療薬として、血漿分画製剤の抗 SARS-CoV-2ポリクローナル高免疫グロブリン(H- IG)の開発に着手すると発表した。併せて、同社で上市済み製品および薬物候補ライブラリの中からいくつかを選定し、それらがCOVID-19に対する有効な治療薬の候補となる可能性について探索していると報告した。同社では、今後、9~18か月での上市を目指す。
 COVID-19は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV-2)によって引き起こされる疾患で、肺炎を引き起こす可能性がある。最近の発見以来、世界中で 3000名以上が死亡しているが、現時点で、COVID-19の予防もしくは治療に用いるワクチンや薬剤は承認されていない。
 新型コロナウイルス感染症治療薬として期待される高免疫グロブリンは、これまでに重症急性ウイルス性呼吸器感染症の治療薬として有効性が示されている血漿分画製剤で、COVID-19 の治療選択肢となる可能性がある。
 武田薬品は、75年以上にわたる血漿分画製剤の開発経験を有する同分野のリーディングカンパニーとして、抗 SARS-CoV-2ポリクローナルH-IG となり得る TAK-888の研究、開発、製造に関する専門性を有している。現在、同社は、TAK-888に関する研究を迅速に進めるために、米国、アジア、欧州における複数の国の規制当局や医療関連パートナーと協議している。
 TAK-888の開発推進には、COVID-19から回復した患者、またはワクチンが開発された場合ワクチン接種を受けた人から得た原料血漿にアクセスする必要がある。COVID-19から回復したドナーは、COVID-19患者の病状の重症度を軽減し得る、また感染を予防し得る抗ウイルス抗体を産生している。高免疫グロブリンは、回復した患者や将来的にはワクチン接種を受けたドナーから採取した血漿の病原体特異的な抗体を濃縮することで作用する。
 抗体を患者に投与すると、その患者の免疫系の活性を高め、回復の可能性の向上が期待できる。
 TAK-888 に必要な血漿は通常の血漿ドナーからの取得が難しいため、武田薬品、では、まず、米国ジョージア州の製造拠点の隔離されたエリアで製造を開始する。TAK-888の開発と製造に伴う、同社既存の血漿分画製剤製造に対する影響はない。
 同社Vaccine Business Unit Presidentで、COVID-19対策チームの共同代表者の Rajeev Venkayya氏は、「当社は、新型コロナウイルスの脅威に対処するため、あらゆる対応を行っていく」と強調。さらに、「社内において関連するアセットや技術を特定済みであり、COVID-19の患者や患者をサポートする方々に対する治療オプションの拡大を願っている」とコメントしている。
 武田薬品の上市済みの製品およびパイプラインの中でCOVID-19 治療への再利用の探索については、早期段階にあるものの同社の中で高い優先順位を与えている。また、公衆衛生、ワクチン、血漿分画製剤、および研究開発の社内専門家で構成されるワーキンググループでは、COVID-19に対処するため、同社の専門知識と世界中に広がるパートナーとのネットワークを活用して、引き続き検討を進めていく。

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