医薬品合成の効率化、製造開発のスピード化に期待
京都薬科大学薬化学分野の古田巧教授らの共同研究グループは13日、触媒の構造制御において、非共有結合性相互作用である「カルコゲン結合」を活用する新たな方法を見い出し、その方法で創製された触媒により有用な化合物の合成を達成したと発表した。
同研究は、医薬品や有機材料等の合成を効率化する優れた触媒の開発につながるとともに、医薬品の製造・開発スピードの加速に寄与するものと期待される。
触媒は、医薬品や有機材料などの有用な有機分子の合成を効率化し、短工程での合成を可能にする。従って、優れた機能を持つ触媒の開発は、非常に重要な課題である。触媒の機能は、その構造に依存するため、触媒開発にあたっては「構造をいかに制御するか」がキーポイントとなる。
触媒のひとつであるロジウム二核カルボキシラート触媒は、通常不活性なC–H結合を活性化させる有機合成上極めて有用な触媒である。
だが、その構造中に自由回転する結合を含むため、構造の制御が困難となっている。ロジウム二核カルボキシラート触媒の中でも特に、鏡像異性体を作り分けるために使われる不斉ロジウムカルボキシラート触媒では、触媒構造に高い対称性が要求されるが、その構造制御がしばしば問題となっていた。
今回、同グループは「カルコゲン結合」と呼ばれる非共有結合性の相互作用を用いることで、ロジウム二核カルボキシラート触媒の構造中にある結合の回転を抑制させるとともに、対称性の高い構造に制御された触媒(不斉ロジウムカルボキシラート触媒)の創製に成功。さらに、その触媒により有用な化合物の合成を達成した。
同研究成果は、触媒設計に「カルコゲン結合を活用する」という新たなコンセプトを示すものであり、有用で高機能な種々の触媒の創製につながると考えられる。これにより、医薬品の効率的な合成や医薬候補物質の開発への展開も期待される。
なお、これらの研究成果は、2020年12月28日(米国時間)、米国の国際学術誌「ACS Catalysis」のオンライン速報版で発表された。