小野薬品は30日、ONO-5334についての 新型コロナ感染症治療薬としての開発を見送ると発表した。また、現在、新型コロナウイルスに関する臨床試験実施中の蛋白分解酵素阻害剤「フオイパン」については、引き続き開発を推進することも併せて発表した。
ONO-5334は、24日に英科学誌「Nature」で、ヒトiPS 由来の肺細胞における新型コロナウイルスの増殖を抑える有望な化合物の一つとして報告された同社が創製したカテプシンK阻害作用を有する化合物。
経口剤で骨粗鬆症の治療薬として国内P2試験を進めていたが、2012年に骨粗鬆症領域の競合状況や環境の変化などを踏まえ、骨粗鬆症領域での開発を中止した経緯がある。
Natureでの報告では、ONO-5334がコロナウイルス感染に関与するカテプシンLなどへの阻害作用を有することから治療薬としての可能性が示唆されていた。また、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルス SARS-CoV-2の肺や気道での主要なウイルス感染については、蛋白分解酵素TMPRSS2が大きく関与することが知られている。
こうした中、小野薬品は、ONO-5334、カモスタットメシル酸塩を含むプロテアーゼ阻害剤のサンプルを国内外の研究施設に提供し、ウイルス感染抑制効果を検討してきた。その結果、ONO-5334は「Nature」で報告された感染阻害作用と同様の結果が確認されたが、TMPRSS2が高発現しているヒト肺上皮細胞などを使用した実験系では効果が著しく減弱してしまうことが確認された。
一方、同社が新型コロナウイルス感染症治療薬として開発を進めているフオイパンは、①TMPRSS2を発現している系での感染抑制効果、②カモスタットメシル酸塩の血中濃度と感染阻害濃度との関係、③ヒトへの豊富な投与経験に基づく一定の安全性など様々な知見を有している。
こうした状況も踏まえ、小野薬品ではONO-5334についての開発は行わず、引き続き、現在、フェーズⅠ試験を実施中の「フオイパン錠」の開発を推進していく。