
第19回日本在宅薬学会学術大会が19・20日の両日、グランキューブ大阪(大阪市北区)で「薬局DXで実現する外来・在宅・OTC~これからの薬局の3本柱」をメインテーマに開催され、同じ薬局、同じ薬剤師がこの3つの機能を継続的に提供していくことが今後の薬局経営の本質となることが確認された。
同学術大会は、2009年に設立された日本在宅薬学会の前身である在宅療養支援薬局研究会が実施してきた半年に1回、1日開催のシンポジウムに起因する。その後、2013年7月、日本在宅薬学会へと名称を変更し、現在の2日間形式の学術大会が開催されるようになった。
同学会が産声を挙げた頃の在宅医療は、“一部の薬局で、一部の薬剤師が取り組むもの”というイメージが強かったが、現在は一般的な取り組みとなっている。OTC医薬品に対する認識や取り組みも、スイッチOTC医薬品の拡大や、OTC類似薬の保険給付の見直しなどを背景に、今後、急速に広がっていくものと予測される。
こうした中、これからの薬局経営には、外来・在宅・OTCを3本柱と位置付けることが不可欠になると考えられる。だが、今の体制のままではその実現は容易ではない。現状を打破するには、機械化、ITC化、AIを活用しながら薬局パートナーなどの非薬剤師スタッフと薬剤師が協働し、薬局DXを推進していくことがキーポイントとなる。
「外来・在宅・OTCで切り拓く薬局の未来」をテーマに大会長・理事長講演を行った狭間研至氏は、「医薬分業が定着し、今後薬局はどのような方向に進んでいけば良いのかを考える時代に入った」と明言。その上で、「医療現場からは薬局に色々なものが求められている。外来、対物一辺倒から脱却し、チャレンジしていくことで薬局の未来が開けてくる」と訴えかけた。
狭間氏は講演の中で、まず、「医薬分業が定着し、今後薬局はどのような方向に進んでいけば良いのかを考える時期にあり、“薬局の未来が見えにくい時代”である」と指摘した。
とはいえ、全国6万4000軒の薬局、19万人の薬局薬剤師は、必要不可欠な社会資源であり、薬局が単機能であることは、国民にとっても望ましくはない。
狭間氏は、「薬局という社会資源が、薬を渡すだけの場所になってしまったことへの反省」を強調した上で、「私は、経営者、医師の立場から、薬局の未来は決して暗くないと確信している」と断言。さらに、「じっとしているのではなく、前に進むことで抜けられないトンネルはない」と言い切った。
では、薬局の未来を切り開くには何が必要か。“早さ”、“近さ”、“便利”さで勝負すれば、資本力、組織力のある大手チェーン薬局に負ける。大手に勝利するには、第一次世界大戦の航空戦を分析した「ランチェスターの法則」を取り入れる必要がある。
同法則のもとに小さな薬局でも強味が出せるのは、「外来」、「在宅」、「OTC」であり、これらが今後の薬局経営の柱となり薬局の未来を切り拓く鍵となる。狭間氏は、「同じ薬局、薬剤師がこの3つの機能を継続的に提供することが、これからの経営の本質になる」と力説する。
外来は、「服用後の継続的フォローと薬学的アセスメント」、「医師へのフィードバック」が治療の質への向上へと繋がり、在宅への契機となる。
在宅は、「時々入院、ほぼ在宅」で、地域包括ケアを薬物治療で支える。社会保障制度の変化により、医療の現場は医療機関から在宅、介護施設へと広がりつつある。急性期疾患を除けば、医療の多くは薬物治療を基盤としている。狭間氏は、「薬局は、在宅療養支援に対応できる体制を整える必要がある」と強調する。
OTCは、経営の自由度を確保するためにも必要不可欠となる。今後、「重い疾患は公助(公的医療保険)・共助(健康保険制度による支え合い)で支え、軽い不調は自助(OTCなど)で対応する」という原則が具現化してくる。全てを保険や公費で賄う余裕は、もはやわが国にはないからだ。「いきなりOTCをやるのではなく、在宅に持ち込んで行っていくのも一つの方法である」。
その一方で、外来、在宅、OTCを同じ薬局、同じ薬剤師が継続的に提供するには、“掛かり付け”の本質であるLTV(Life Time Value)の向上が不可欠となる。LTV向上のキーポイントとしては、「顧客一人当たりの生涯価値を高める」、「既存客・ファン客をストックする」、「薬局スタッフのやりがいを向上」、「薬局スタッフの待遇向上への原資へ」が挙げられる。
狭間氏は、「外来、在宅、OTCは理念としては理解されても、日々の業務の中で実際に動かすとなると簡単ではない。それでも薬局が変わらなければ未来は開けない」と断言する。
その上で、外来、在宅、OTCを同じ薬局、同じ薬剤師が動かしていくための3つのポイントとして、①「時間・気力・体力をつくる」(業務フローの見直しと機械化、ITC化)、②「スキルアップ」(薬剤師と薬局パートナーの教育・人材育成)、③「協働を支えるICTの仕組み」(正確に伝え、正確にこなすための基礎作り)を指摘する。日本在宅薬学会では、スキルアップを支えるためのプログラムを提供している。
最後に狭間氏は、「これらの取り組みはそれなりの時間や費用が掛かり、組織としてしっかりと取り組む必要がある」と明言。さらに、「いわゆるパパママ薬局のような小さな薬局では単独で実現することは難しい。そうした薬局が外来、在宅、OTCに取り組んでいくために、来年5月から全国で施行される“調剤業務の一部外部委託”を活用してほしい」と呼びかけた。

