合計8850億円の事業投資の背景と狙いを説明

15日に大阪市内で開催したメディア向けラウンドテーブルで手代木功塩野義製薬取締役会長兼社長CEOは、「ヴィーブへの追加出資」、「JT医薬部門/鳥居薬品の取得」、「エダラボン事業の取得」による合計約8850億円の事業投資の背景と狙いについて説明。
ヴィーブへの追加出資(約3350億円)は、「さらなる成長を目指したHIV治療薬の超長時間LAI製剤開発を見据えたもの」と説明し、「良いタイミングで適正な価格でヴィーブの株式を取得できた。戦略的に極めて重要度が高い」と自負した。
JT医薬部門/鳥居薬品の取得(約1600億円)では、「JT医薬品部門の取得により低分子領域のさらなる充実を図る」と明言し、「低分子創薬の強みを“感染症”から“QOL疾患”へ拡大」していく考えを強調した。
また、アレルゲン領域、皮膚疾患領域を注力領域とする鳥居薬品の取得については「営業活動のシナジー効果の創出と医療ニーズを満たす製品の充実」を指摘。その上で、「こうした流行に左右されない製品の充実により、国内の医薬品売上高に対する感染症薬の売上比率を2割以下にして売上収益の安定化を図る」と訴求した。
田辺ファーマからのエダラボン事業取得(3900億円)は、「米国で希少疾患領域の薬剤を販売しているチームを獲得したかった」と振り返り、「エダラボン(ALS治療薬)は1000億円の売上が立つ。投資額が大きいとの声もあるが、グローバル化を牽引する米国事業の感染症領域以外の拡大を考えると重要な事業投資である」と説明した。
現在掲げる「2030年8000億円」の売上目標にも触れ、「アップデートする」とした上で、その内訳について「ロイヤリティ+αで約3000億円に上る。それを除く5000億円の内、1000億円はヨーロッパ、塩野義ヘルスケアで上げていく」と明言。さらに、「残りの4000億円は、現在米国で1000億円、日本で1000億円を超える売上高をそれぞれ2000億円近いところまで成長させることで、売上収益がかなり安定化していく」見通しを示した。
塩野義製薬の2025年度の積極的な投資は、2028年~2029年頃のドルテグラビル(経口抗HIV薬)のパテントクリフを、カベヌバなどの長時間作用型抗HIV薬がカバーし、2030年中頃まで安定的なHIVフランチャイズ収入が見込めるようになったことによるもの。
ヴィーブへの追加出資により、持分比率10.0%から21.7%に増加、取締役1名の指名権(議決権2個に増加)を獲得し、持分法適用関連会社化した。これにより、配当金の増加、HIV事業へのより強いコミットメントの実現を目指す。
HIV治療では、治療薬として「長時間作用のLAI製剤」がトレンド傾向にある。ヴィーブでは、塩野義製薬が同社に導出した既存のインテグラーゼ阻害薬と薬剤耐性プロファイルが異なる6カ月に1回投与のULA製剤(Ultra Long Acting)「Sー598」を共同開発している。Sー598は、注射剤のP1試験で、良好な薬物動態と安全性を確認。投与後7カ月まで安定した薬物血中濃度を維持し、年2回投与の可能性が示唆された。
手代木氏は、「P1試験の手ごたえは大変大きい。良い製品が開発できると自信を深めた」と高評価し、「ヴィーブへの追加出資は、「超長時間LAI製剤開発を見据えたものである」と明かした。
JT医薬部門/鳥居薬品の取得のメリットの一つとして手代木氏は、「JT医薬品部門の低分子創薬の強みを“感染症”から“QOL疾患”へ拡大」、「鳥居薬品の注力領域であるアレルゲン領域、皮膚疾患領域薬剤の日本での販売強化、特に季節に寄らない、感染症のみに偏らないセールスの充実」を挙げる。
SLIT製剤(舌下免疫療法)を始めとする鳥居薬品の製品群に加えて、新製品のクービビック(不眠症治療薬)、ザズベイ(抗うつ薬)の販売に尽力し、流行に左右されない製品群の充実して「今後、ゾコーバ(新型コロナ経口治療薬)やゾフルーザ(インフルエンザ治療薬)などの急性呼吸器感染症部門が占める国内全体の医薬品売上に対する比率を2割以下にする」目標を掲げた。また、SLIT製剤は、「パテントに依存しないビジネス強化への寄与」にも期待を寄せた。国内における急性呼吸器感染症部門の売上比率は、2024年度50%以上で、2025年度は40%弱を見込んでいる。
田辺ファーマからのエダラボン事業取得は、「米国での希少疾患フランチャイズを前向きに進めてグローバル化を牽引する米国事業の拡大」を目的としたもの。本年4月1日付けで田辺ファーマからの承継を完了して、米国でラジカヴァ事業会社がスタートし、米国のエダラボンチーム140人が同事業会社に移籍した。エダラボンは米国で1000億円の売上が見込まれる。
また、希少疾患に関して塩野義製薬は、グループ会社のテトラ社と開発中のザトルミラスト(脆弱X症候群治療薬)及びポンペ病治療薬に加えて、JTのパイプライン中に有望な治療薬を有している。
「これらのパイプラインを上市して、米国における希少疾患領域の基盤作りを目指す」と宣言する手代木氏。加えて、「筋肉、CNS、小児をキーワードに今後の希少疾患領域の研究開発を推進する」考えも明らかにした。
手代木氏は、2027年4月1日を効力発生日とするシオノギファーマの再統合や、セフィデロコルの米国内製剤製造設備立ち上げなどグローバルでのサプライチェーンマネジメントにも言及。
「日本の製造拠点は、製造処方設定に優れており、製剤研究や生産技術の開発では日本の重要性が残っている」とした上で、「今後、バランスを取りながらどのように資源を動かしていくかが重要になる」と指摘した。
セフィデルコルの生産については、「日本の金ヶ崎工場と米国内製剤製造設備での生産を併せると、世界の供給量が賄える」との認識を示した。
