武田薬品とNatureは10日、9日に米国マサチューセッツ州ボストンで開催された2026年「Innovators in Science Award」の授賞式典において、Netherlands Cancer Instituteの腫瘍内科医であるMyriam Chalabi氏(M.D., Ph.D.)がグランプリを受賞したと発表した。
同式典には、グローバルなライフサイエンスコミュニティ、学術界、非営利団体などのリーダーが集い、武田薬品は総額25万ドル(訳3981万円)の使途制限のない賞金をChalabi博士に授与した。
2016年に創設されたInnovators in Science Awardは、新しい科学の発見に挑戦し、生活を一変させる可能性を持つ革新的な研究を推進する、科学領域における新進気鋭のリーダーを称えるもの。
Nature Awardsが招集した独立審査委員会による審査の結果、消化器・炎症性疾患、神経精神疾患、オンコロジーの3つの疾患領域から選ばれた 9名のファイナリスト の中から、Chalabi博士がグランプリ受賞者として選出された。
Chalabi博士を含む9名のファイナリストには、Natureが運営する12カ月間のキャリア開発プログラムが提供されつ。同ログラムは、科学領域における新進気鋭のリーダーが直面する固有の課題や機会に対応する際に必要なスキルを向上させることを目的としている。
医師で研究者でもあるChalabi博士は、生理学的に大腸がんサブタイプとして定義されるミスマッチ修復機能欠損(dMMR)結腸がん患者さんの治療アプローチを再構築することに貢献してきた。その成果は、従来の臨床診療に一石を投じ、このタイプの大腸がん患者における標準治療のあり方を再定義するものとなっている。
Chalabi博士の臨床研究(1-3)では、手術前に免疫チェックポイント阻害療法を実施することで、ほぼすべての症例においてがんを消失させ、その後も長期にわたり無再発状態を維持できることが示された。これにより、より毒性が強く患者負担の大きい治療を回避できる可能性が示唆されている。
「治療を最小限に抑えることが、より良い結果につながる場合がある」ことについて確かなエビデンスを提示したことで、同氏の研究はすでに臨床ガイドラインに影響を与えつつあり、患者にとって、より短期間で安全性の高い長期回復への道を提供している。
◆アンドリュー・プランプ武田薬品リサーチ&デベロップメント プレジデントのコメント
Innovators in Science Awardは、人々の健康への道筋を変え得るような、科学的な勇気と既成概念を打ち破る発想に光を当てることを目的に創設された。今年のグランプリは、まさにその理念の結実を称えるものだ。特にオンコロジー領域では、医師や研究者が長年にわたり多くの困難を経験してきた。そのような状況において、患者さんの治療を前進させるには、技術的な厳密さだけでなく、大胆さ、想像力、そしてより良い未来が実現可能だという揺るぎない信念が求められる。
Myriam Chalabi博士の先駆的な研究は、まさにその精神を体現している。それは、なぜ私たちが患者さんのため、家族のため、そして医療の未来のために、革新を追求し続けなければならないのかを改めて思い起こさせてくれるような、治療の考え方を根本から問い直す科学である。
◆Victoria Aranda同アワード審査委員長・Nature副編集長のコメント
Chalabi博士は、術前免疫療法の先駆的な研究で知られる、著名な腫瘍内科医で臨床研究者である。博士は、その研究活動や科学面でのコミュニケーションを通じて、特定の大腸がんの治療のあり方を形づくるうえで、すでに大きな前進を遂げており、我々は本賞を通じてその功績を称えられることを大変うれしく思う。
本アワードの一環として、Chalabi博士率いるグランプリ受賞チームの皆さまに、12カ月間のキャリア開発プログラムへの参加機会を提供する。本プログラムは、リーダーシップや研究成果、ネットワーキングにわたる各側面で専門家としての成長を支えるプラットフォームを提供する。
◆Chalabi博士のコメント
このような賞をいただけることは大変光栄であり、この栄誉を授けてくださった武田薬品とNatureに心より感謝する。この賞は、大胆で既成概念にとらわれない発想と、私たちのハイリスクなトランスレーショナルリサーチおよび術前免疫療法研究が、結腸がんの治療パラダイムの転換に寄与してきたことを称えるものである。
この研究を可能にしてくれた臨床医や研究者、本研究を支えてくださったすべての協力者、そして何よりも、本研究に参加しあらゆる進歩を支えてくださった患者さんに、この賞を捧げたい。

