
 小野薬品の滝野十一代表取締役社長COOは30日、2026年第2四半期決算説明会で会見し、「ロンビムザ(腱滑膜巨細胞種)の進捗に留まらず、セノバメート(抗てんかん薬)の申請、ONO-4578(EP4拮抗胃がん一次治療)やONO-2802(多系統萎縮症)のP2試験でかなり明確な有効性の結果が得られた」と報告。「ポジティブな材料がいくつも息吹始めた。楽しみが増してきている」と次の成長に大きな期待を寄せた。
 デサイフェラプロジェクトの海外売上については、「キンロック(消化管間質腫瘍)は、前年同期比100億円増加の181億円、ロンビムザは新規処方が想定以上に獲得できており28億円を計上した」と2025年度前期を振り返り、通期では、「キンロックは360億(当初予想より20億円上方修正)、ロンビムザは80億円(同30億円上方修正)となる」見込みを示した。
 小野薬品の2026年第2四半期決算は、売上収益2571億3600万円(前年同期比7.0%増)、営業利益520億6900万円(6.7%増)、税引前利益521億7500万円(9.7%増)、中間利益399億8100万円(6.8%増)、当期利益400億8900万円(7.1%増)となった。
 売上収益は、国内でフォシーガ(SGLT2阻害薬)が売上高を拡大した一方でオプジーボの売上減少により全体としてやや減少したものの、海外でのキンロック、ロンビムザの伸長や ロイヤリティ収入増加がカバーし増収となった。
 利益面は、デサイフェラ社の研究開発費および販管費が前年比較で3カ月分多く計上されたことなどで費用は増加したが、売上増加がこれを上回り増益となった。
 2026年3月期業績予想は、売上収益4900億円(前期比0.6%増)、営業利益850億円(42.3%増)、税引前利益850億円(43.3%増)、当期利益670億円(33.6%増)。
 フォシーガの後発品参入による売上減少が見込まれるものの、キンロック、ロンビムザ、海外ロイヤリティ収入の増加がカバーして増収・増益を見込んでいる。
 会見では、滝野氏がロンビムザの対象となる腱滑膜巨細胞種(TGCT)の潜在的市場と成長機会について説明した。
 米国におけるTGCT患者は年間1.5万人程度である。その中でロンビムザの治療対象となり得る患者層は、◆Step1:実際に腫瘍内科医によって抗がん剤TKI(チロシンキナーゼ阻害剤)で治療を受けている患者=約700人/年、◆Step2:腫瘍内科医が診察するもののTKIの治療を受けていない患者=約700人/年、◆Step3:整形外科医が診察する患者約1300人/年ーの3相で構成される。
 本年2月に米国で承認され、3月に上市されたロンビムザは、「今年度中には、Step1の半数以上に処方されていくペースで進捗しており、極めて順調に市場伸長している」と分析する。さらに、「現状のペースであっても患者毎の投与期間が1年、2年と続いていけば、来年度、再来年度には治療する患者が積み重なって来年度売上予想(80億円)の2倍、3倍と売上が伸びていくと予想している」と強調した。
 また、今後、安全で切れの良いロンビムザの評価が高まっていけば、「Step2の患者にも広がり、ひいてはStep3の未だ腫瘍内科に掛かっていないTGCT患者にも広がっていくと考えられる」との予測を示した。
 同剤は、本年9月にも欧州で承認されており、「ロンビムザのピーク時売上予想である500~600億円、あるいはそれ以上を十分実現できると見込んでいる。市場での評価、手応えをかなり感じているので、大いに期待してほしい」と訴えかけた。
 ONO-4571については、「オプジーボによる治療において、同剤の効果を減弱する原因の一つにMDSC及びM2マクロファージという腫瘍免疫をネガティブに制御する細胞が関与している。これをONO-4571が解除する裏付けを得た」と説明した。
 ONO-4571の胃がんを対象としたP2試験でかなり明確な有効性を得ており、大腸がんのP2試験も実施している。
 滝野氏は、「世界的に最も多いがんの一つである胃がんの一次治療に、大腸がんのP2試験で好結果が出れば、ONO-4571かなり大型製品になる」と期待を寄せた。
 加えて、「基本的にONO-4571そのものが次世代を担っていく薬剤であるが、もし何らかの形で早期に国内あるいは海外で上市できれば、オプジーボの特許切れ対策にもなり得る」と述べた。
  
 
		