Johnson & Johnsonは21日、抗がん剤「タービー」について、多発性骨髄腫を対象とするP1/2相MonumenTAL-1試験における日本人コホートのサブグループ解析で、再発または難治性の多発性骨髄腫において深く持続的な奏効を示したと発表した。
同試験の日本人コホートは、免疫調節薬、プロテアソーム阻害剤及び抗CD38モノクローナル抗体製剤を含む少なくとも3つの標準的な治療歴を有する再発または難治性の多発性骨髄腫を対象としたもの。
タービーによる治療の結果、追跡期間中央値13.4ヵ月の時点で、全奏効率(ORR)は77.8%であった。また、臨床的に重要な患者集団においても、全患者集団と一貫した有効性を示した。これらの結果は、2025年第87回日本血液学会学術集会(JSH)で口頭発表された。
多発性骨髄腫における治療は進歩しているものの、依然として治癒困難な血液がんであり、再発を繰り返し、その度に別の治療が不可欠となる患者が多く存在する。さらに、再発して症状の再燃を繰り返す度に症状は悪化し、治療が奏効する可能性は低くなり、奏効持続期間も短くなる傾向にある。
日本国内における2021年の多発性骨髄腫の新規診断者数は約7800人で、2023年の死亡者数は約4300人とされている。
MonumenTAL-1試験のP2相日本人コホート(n=36)では、国内P1相MMY1003試験において忍容性が確認されたタービーのP2相推奨用量(RP2D)について、日本人患者における有効性及び安全性を、ORRを主要評価項目として評価した。
解析の結果、日本人患者において、タービーの深く持続的な奏効が認められた。
タービーは、T細胞表面に発現するCD3受容体と、多発性骨髄腫細胞表面に高発現するGタンパク質共役型受容体ファミリーCグループ5メンバーD(GPRC5D)に結合する二重特異性抗体である。
タービーは、治療選択肢が限られた治癒困難な多発性骨髄腫の治療薬として、国際共同P1/2相MonumenTAL-1試験及び国内P1相MMY1003試験の結果に基づき本年6月24日に日本国内での製造販売承認を取得している。
これらの試験では、再発または難治性の多発性骨髄腫患者におけるタービーの有効性及び安全性を評価している。
MonumenTAL-1試験のP2相日本人コホートでは、追跡期間中央値13.4か月におけるORRは77.8%で、最良部分奏効(Very Good Partial Response:VGPR)以上が72.2%、完全奏効(Complete Response:CR)以上が55.6%、厳格な完全奏効(Stringent Complete Response:sCR)は47.2%であった。
初回奏効までの期間中央値は1.2ヵ月であった。12ヵ月時点の奏効持続期間(Duration of Response:DOR)率、無増悪生存期間(Progression Free Survival:PFS)率、OS率はそれぞれ66.4%、56.3%、74.1%であった。
さらに、サブグループ解析の結果、ハイリスク染色体異常を有する患者集団における12ヵ月時点のDOR率、PFS率、OS率はそれぞれ58.4%、53.5%、66.3%で、完全奏効以上を達成した患者集団における12ヵ月時点のDOR率、PFS率、OS率はそれぞれ74.0%、74.6%、95%で、ハイリスク染色体異常があるにも関わらず、全患者集団と一貫した有効性を示した。
安全性に関しては、MonumenTAL-1試験の海外データと一貫しており、安全性に関する新たなシグナルは認められなかった。グレード3/4の有害事象としては血液毒性が最も一般的に認められ、主なものは、リンパ球減少症(全グレード、47.2%;グレード3又は4、47.2%)、好中球減少症(全グレード、38.9%;グレード3又は4、27.8%)、貧血(全グレード、27.8%;グレード3又は4、22.2%)であった。
サイトカイン放出症候群(CRS)が75.0%で認められたが、いずれの症例もグレード1(58.3%)又はグレード2(16.7%)であり、治療の中止をせずに全て回復した。免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は認められなかった。感染症は52.8%の患者さんで認められ、グレード3又は4の感染症の発現率は16.7%であった。
GPRC5D関連有害事象として、味覚関連、発疹以外の皮膚障害、爪関連、皮疹関連有害事象がそれぞれ80.6%、66.7%、55.6%、36.1%で認められたが、ほとんどがグレード1又は2で、治療の中止例はなかった。
◆Yusri Elsayed J&J Innovative Medicine Global Therapeutic Area Oncology Head(M.D., M.H.Sc., Ph.D.)のコメント
少なくとも3つの標準的な治療歴を有する再発または難治性の多発性骨髄腫の患者さんにとって、BCMAを標的とする治療薬の前後いずれでも投与できるタービーは、非常に重要な治療選択肢となる。
さらに、今回、日本人患者さんにおいて、またハイリスク染色体異常を有する患者さんにおいても深く持続的な奏効を示しており、アウトカムの改善において重要な治療選択肢となることが示された。タービーが、日本の多発性骨髄腫治療を進展させる上で、今後重要な役割を果たすものと期待している。