
ロート製薬は11日、東京科学大学(本部:東京都目黒区)は、サイバーフィジカルシステム:Cyber Physical System(CPS)に関する研究を行う協働研究拠点の設置に向けた協定を締結したと発表した。同協定は、サプライチェーンマネジメントの最適化に向けた研究の加速化を目的としたもの。
CPSとは、フィジカル空間(現実空間)にある多様なデータをセンサーネットワーク等で収集し、サイバー空間(仮想空間)で大規模データ処理技術等を駆使して分析/知識化を行い、そこで創出した情報/価値によって、産業の活性化や社会問題の解決を図っていく仕組みを意味する。
ロート製薬では、顧客の悩みに寄り添う多様な商品展開を実現してきたが、年々、製造品目や製造量の増加に伴い、より高品質な製品を安定的に生産するためのシステム構築が課題となっていた。
そこで、東京科学大学藤澤研究室との共同研究により、CPSをマザー工場の上野テクノセンターで実装し、工場内の最適化を進めてきた。IoT やセンサ技術を用いて取得したフィジカル空間におけるヒトやモノの動きなどの情報をサイバー空間で解析し、AIやディープラーニングによって最適な生産プロセスを導き出すことで実際の現場環境での生産性向上を図ってきた。
昨今の2024年物流問題を踏まえ、ロート製薬においても事業成長とともに複雑化しているサプライチェーンを適切に管理し、改善していくことがさらなる課題となっている。これまで培った知見を工場外の倉庫や物流へと拡大し、IoT技術を活用して最適化されたプロセスを提案することで、サプライチェーン全体に関わる会社の人々、製品やサービスを利用する顧客のウェルビーイングの向上につなげていく。
これまでのCPS導入実績の実例としては、「モノの移動最適化」に向けてCPS導入を積極的に推進。上野テクノセンターと周辺倉庫における自動倉庫の運用最適化(夜間棚替え)において、東京科学大学藤澤研究室が開発した搬送シミュレータや最適化アルゴリズムを実際の現場に導入し、日中の輸送機の移動距離を50%以上削減、作業者の待ち時間も約 30%減少した。
さらに、エネルギー消費の削減やリアルタイムでの工場内状況の把握も実現し、生産効率とコスト削減に大きく貢献している。 今後は、さらに柔軟で迅速な「リアルタイム最適化」を目指し、センサ技術とシステム間の連携を一層強化して、より精度の高いリアルタイムシミュレーション技術の開発を進める。
加えて、販売予測や在庫管理を含め、サプライチェーン全体の流れを俯瞰したシミュレーションを行うことで、企業活動全体の効率性向上を追求する。
サプライチェーンにおいては、原材料調達から製品輸送までの物流ネットワーク最適化を進め、輸送能力を最大限に活用するとともに、温室効果ガス(GHG)排出削減を推進する。従来の工場の部分最適化を目指す研究から、マーケティング・製造・物流までロート製薬のバリューチェーン全体をデジタルで革新する体制構築に向けて研究拠点を整備し、さらに研究を加速・具体化する。
また、CPSを核に企業活動全体のデジタルプロセスを加速させ、社会・環境課題の解決にもつなげていく。