日本の小学生の家庭での目のケア実施率は26.0%と極めて低く他国と大きな乖離 ロート製薬「こどもの目の白書2025 GLOBAL編」公開

 世界的にこどもの目の健康に対する関心が高まる中、ロート製薬は6月10日の「こどもの目の日」に合わせて、アメリカ・シンガポール・中国・ドイツ・日本の5カ国に在住する小学生の保護者とそのこどもを対象に、目のケアや生活習慣に関する意識調査を実施した。なお、同調査はインターネットを通じて各国の小学生の保護者を対象に実施されたもので、各国の一般人口動態の傾向を正確に反映したものではない。
 同国際調査は、現在開催中の2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)を契機に、世界に目を向けた取り組みや交流が活発になる中、各国の保護者がこどもの目に対してどのようなケア意識があるか、また日常生活における行動や習慣にどのような違いがあるかを把握することを目的としたもの。なお、ロート製薬は大阪・関西万博にブースを出展し、来場者に対して目の健康チェックを提供するなど、グローバルな視点で「目の健康啓発」に取り組んでいる。
 同調査の結果、こどもの目に対する保護者のケア意識やその内容、またデジタルデバイスとの関わり方や屋外活動の傾向などにおいて、5カ国間、また各国の保護者とこどもたちの間での違いや特徴があることがわかった。調査概要、調査サマリーは、次の通り。

【調査概要】
◆調査対象国 :アメリカ、シンガポール、中国、ドイツ、日本
◆調査対象者 :小学生のこどもを持つ親 各国100名(合計500名)
◆調査方法 :インターネット調査 調査機関 :自社調査
◆調査期間 :2025年5月19日(月)~5月27日(火)

【調査サマリー】
■PART1:こどもの目のケアとその内容、保護者自身の目のケア意識
・中国の保護者はこどもの目に対するケア意識があり、その内容も幅広い
その他の国の保護者は、こどもの目に対するケア意識とその内容には違いが見られた
・日本は保護者自身の目をケアしていない割合が12%、ドイツは4%、その他の3カ国は0%
■PART2:世界のこどもの生活習慣
・小学生のデジタルデバイス接触時間は、中国が短い結果に
・屋外活動の時間は、ドイツが長い結果に
■PART3:眼科医・松村先生の解説
・こどもの目を守るためには、各家庭での意識と日々の行動が重要
・デジタル機器との付き合い方や適切な視距離の確保、屋外活動など、日常の生活習慣を見直すことが予防に
・ケアの実施においては、正しい知識と早めの対応が大切

PART1:こどもの目のケアとその内容、保護者自身の目のケア意識

 小学生のこどもの目のケア意識について、ケアを「かなりしている / まあまあしている」と回答した保護者は、アメリカでは94.0%、シンガポール88.0%、中国98.0%、ドイツ85.0%と、いずれも9割前後に上った。
 また、「こどもの目のケアをかなりしている / まあまあしている」と答えた人に、どんなケアをしているかを聞いたところ、5カ国の保護者の意識に違いが見られた。
 アメリカの保護者の回答では「メガネやコンタクトの使用」や「定期的な視力検査」といった項目のケア意識があることがうかがえる。
 シンガポールの保護者の回答では「メガネやコンタクトの使用」「デジタルデバイスの接触時間管理」や「適切な照明」など生活環境へのケア意識が目立った。
 中国の保護者の回答では「屋外活動の促進」「視力検査」「デジタルデバイスの接触時間管理」や「睡眠」「食事」など、ほぼすべての項目への意識が見られ、幅広いケア意識があることがうかがえる。
 ドイツの保護者の回答では「視力検査」や「デジタルデバイスの接触時間管理」「適切な照明」など、生活環境へのケア意識がある様子が見て取れる。
 日本の保護者の回答はサンプル数が少ないため参考値ではあるが、「視力検査」「デジタルデバイスへの接触時間管理」への意識があることがうかがえる。

 保護者自身の目のケア意識についても、各国で違いが見られた。「保護者自身の目のケアにおいて、どんなことをしているか?」という質問に対して、日本では12.0%の保護者が「自身の目のケアをしていない」と回答し、ドイツは4.0%で、アメリカ、シンガポール、中国では0%と、いずれもほとんどの保護者が自身の目のケアを行っていることが示唆された。日本では保護者自身の目の健康意識がやや低い可能性が示唆された。


PART2:世界のこどもの生活習慣

 デジタルデバイスの接触時間や屋外活動時間と視力には一定の関連があると言われているため、それらの実態を調査した。
 各国の保護者の回答によると、こどものデジタルデバイス接触時間の一日平均はアメリカは96.9分、シンガポールは93.3分、中国は56.8分、ドイツは69.6分、日本は89.7分となり、中国が短い結果となった。
 屋外活動時間の平均については、アメリカが91.1分、シンガポールが88.4分、中国が83.6分、ドイツが115.3分、日本は72.8分となり、ドイツが長い結果となった。

PART3:眼科医・松村沙衣子氏(東邦大学医療センター大森病院講師)の解説

 今回の国際調査から、日本の小学生は、家庭における目のケア実施率はわずか26.0%と極めて低く、他国との大きな乖離が明らかとなった。中国やアメリカでは9割以上、ドイツやシンガポールでも8割以上の保護者が目のケアを行っているのに対し、日本では約4人に1人という結果である。
 さらに、日本の保護者の12%が自身の目のケアも行っておらず、こうした低い健康意識がこどもの目のケアにも影響している可能性が指摘される。
 注目すべきは、各国で実施されている目のケアの内容の違いである。中国では視力検査やデジタルデバイス使用の管理に加え、睡眠、食事、屋外活動まで含めた包括的な対応が定着しており、シンガポールは矯正と生活環境の整備、アメリカは眼科的なケア重視、ドイツは照明環境やデジタル機器管理など予防的アプローチが主流である。
 これに対し、日本では多くの項目で実施率が他国よりも低く、家庭内での予防的取り組みが進んでいない実態が浮き彫りになった。 生活習慣の面でも、日本の小学生はデジタルデバイスとの接触時間が比較的長く(約85分)、屋外活動時間は5カ国中最も短い72.8分と、近視リスクを高める傾向がみられる。特に近年は近視の低年齢化が進んでおり、文部科学省のデータでも裸眼視力1.0未満の小学生は年々増加している。
 今後は、「見えているから大丈夫」という誤った安心感を改め、保護者自身が正しい知識を持って日常的なケアを実践することが求められる。
 日常生活の中で取り組めるケアとしては、
①1日2時間を目指した屋外活動
②30分近業ごとの休憩
③正しい姿勢と視距離の確保(30cm以上)
④500ルクス以上の明るさの照明
⑤スマートフォンなどの使用時間の制限(小学校低学年は1.5時間以内、高学年は2時間以下)
⑥睡眠の質の向上
などが挙げられる。
 また、学校健診で異常を指摘された場合は、必ず眼科を受診し、必要に応じて治療や矯正を行うことが重要である。本調査が、子どもの視力を守る第一歩となることを期待している。
 

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