rusfertide 真性多血症対象P3試験で主要評価項目の瀉血必要性を有意に減少 武田薬品

 武田薬品は1日、rusfertideについて、真性多血症(PV)を対象とするProtagonist Therapeutics社との無作為化プラセボ対照P3相試験(VERIFY試験)において、主要評価項目である真性多血症における瀉血の必要性を減少させ、ヘマトクリット値のコントロールが4倍改善されるなど主要な副次評価項目を達成したと発表した。
 同データは、同日、第61回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で公表された。rusfertideは米国FDAから希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)指定およびファストトラック指定を受けている。
 PVは、赤血球の過剰産生(赤血球増多症)を特徴とし、血液の粘度が増加(過粘稠 )し、脳卒中、深部静脈血栓症、肺塞栓症などの生命を脅かす血栓症を引き起こす可能性がある。PV患者は、重度の疲労、集中困難、夜間発汗、皮膚掻痒症などの負担のある症状を経験し、生活の上での機能やQOLに悪影響を及ぼす可能性がる。
 ヘマトクリット値は、体内の総血液量に対する赤血球の割合だ。PVの治療目標は、血栓症を予防し、症状を緩和するため、ヘマトクリット値を45%未満に減少させ維持することであるが、多くの患者は現在の標準治療を受けても、ヘマトクリット値のコントロールができない状態を経験する場合がある。
 rusfertideは、開発中のファースト・イン・クラスのヘプシジンのペプチド模倣薬であり、PV患者のヘマトクリット値コントロールのために鉄の恒常性と赤血球産生を調節する可能性について、P3相VERIFY試験で評価されている。
 同試験では、頻繁な瀉血に依存する患者が、細胞減少療法の有無にかかわらず、現在の標準治療に追加して週1回のrusfertideまたはプラセボを受けるように無作為に割り付けされた。
 同試験は、主要評価項目である臨床的奏功割合を達成した。臨床的奏効とは、20週から32週の間に瀉血の対象でないことを指している。試験結果において、rusfertideと現在の標準治療を併用した患者の76.9%が臨床的奏効を達成し、プラセボと現在の標準治療を併用したグループでは32.9%であった(p<0.0001)。
  rusfertide群で観察された反応は、リスクの有無や併用されている細胞減少療法の種類にかかわらず、すべてのサブグループで一貫していた。さらに、VERIFY試験において、rusfertide群はプラセボ群に比べて次の主要な副次評価項目すべてで統計学的に有意な結果を示した。

◆usfertideと現在の標準治療を併用した患者1人あたりの平均瀉血回数は0.5回であり、プラセボと現在の標準治療を併用した患者1人あたりの平均瀉血回数は1.8回であった(0~32週目;p<0.0001)。

◆rusfertideと現在の標準治療を併用した患者の27%が0週から32週の間に瀉血を必要とした一方、プラセボと現在の標準治療を併用した患者では78%であった。

◆rusfertide群における0週から32週の平均瀉血回数は、リスクの有無や併用されている細胞減少療法の使用を含むすべてのサブグループにおいて、プラセボ群と比較して減少していた。

◆rusfertideと現在の標準治療を併用した患者の62.6%がヘマトクリット値を45%未満に維持した一方、プラセボと現在の標準治療の併用では14.4%の患者が維持した(p<0.0001)。

◆rusfertideは、PROMIS Fatigue2(p<0.03)およびMFSAF Total Symptom Score3(p<0.03)において、ベースラインから32週までの平均変化において統計学的に有意な改善を示した。rusfertideは、PV患者の疲労および症状負担の患者報告アウトカム(PRO)において統計的に有意な改善を前向きに示した最初の開発中治療薬である。

 安全性においては、rusfertideは概ね良好な忍容性を示した。ほとんどの有害事象は低グレードであり重篤ではなく、rusfertideと関係すると見なされる重篤な有害事象は報告されなかった。主要分析時点で、rusfertideと現在の標準治療を併用した患者においてプラセボと現在の標準治療を併用した場合と比較してがんのリスク増加の証拠はなかった。がんイベントはrusfertide群の患者1人(0.7%)およびプラセボ群の患者7人(4.8%)で報告された。治療に伴う最も一般的な有害事象は、局所注射部位反応(55.9%)、貧血(15.9%)、疲労(15.2%)であった。

◆VERIFY試験主任研究者のDr. Andrew T. Kuykendall氏(Moffitt Cancer Center血液専門医 M.D.)のコメント
 PVは、衰弱にともなう症状や深刻な血栓性イベントのリスクなど患者さんにとって重大な問題を引き起こすため、ヘマトクリット値のコントロールは患者さんのアウトカム改善に重要である。VERIFY試験は、細胞減少療法を受けている患者さんを含む、瀉血依存の患者さんに対し、rusfertideでの治療がヘマトクリット値をコントロールすることを示した。これらの結果は、rusfertideがPV患者さんの標準治療の一部となる可能性を示唆している。

◆Dinesh V. Patel Protagonist Therapeutics社社長兼CEO(Ph.D.)のコメント
 これらの発見は、PVに対するファースト・イン・クラスの赤血球増加症特異的治療薬としてのrusfertideの可能性を示し、当社のペプチド技術プラットフォームによる10年以上の科学的革新を裏付けている。世界中のPV患者さんの標準治療を革新する可能性を持つrusfertide治療を前進させるうえで、武田薬品とパートナーシップを組めることを嬉しく思う。

◆Phuong Khanh (P.K.) Morrow武田薬品Oncology Therapeutic Area Unit Head(M.D.)のコメント
 これらの有望で重要なデータは、現在の標準治療を受けているものの十分なヘマトクリット値のコントロールが達成できていない可能性のある、幅広いPV患者さんに対するrusfertideの潜在的な恩恵を力強く裏付けている。
 今年後半にVERIFY試験から追加データを受け取り、rusfertideを承認申請に向けて進め、Protagonist Therapeutics社との協力を続けることで、この革新的な治療薬を患者さんにお届けすることを楽しみにしている。

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