エーザイは27日、ヒト化抗ヒト可溶性アミロイドβ(Aβ)凝集体モノクローナル抗体「レケンビ」について、4週に1回投与の静注(IV)維持投与が米国FDAに承認されたと発表した。
米国で「レケンビ」は、アルツハイマー病(AD)による軽度認知障害(MCI)または軽度認知症(総称して早期AD)治療についての適応症を取得している。同承認により、「レケンビ」は18カ月間の隔週投与による初期治療後、10mg/kgの4週に1回の維持投与レジメンへの移行を検討するか、もしくは10mg/kgの隔週投与レジメンを継続することができる。
今回の生物製剤一部変更申請(sBLA)は、「レケンビ」のP2試験(201試験)、P3相Clarity AD試験(301試験)、ならびにそれぞれの長期継続投与試験(LTE)から得られたデータによるモデリングに基づくもの。
モデルシミュレーションにより、「レケンビ」の18カ月間の隔週投与初期治療後に、4週に1回の維持投与に移行することで、臨床上とバイオマーカー上のベネフィットが維持されることが示唆されている。
201試験のコア試験終了後、LTEが開始されるまでの無投与期間(ギャップ期間)のデータは、治療の中止により、アミロイドPET、血漿と脳脊髄液のバイオマーカーの再蓄積が引き起こされ、さらに臨床上の疾患進行の速度がプラセボ群と同等になることを示している。
維持療法において、4週に1回の投与レジメンにより、当事者様とケアパートナーは隔週投与よりも治療継続が容易になる可能性がある。
投与の継続は、ADの進行を遅らせ、治療によるベネフィットを延長し、当事者がより長く自分らしい生活を続けられることを目標としている。
Clarity ADコア試験(18カ月)において、主要評価項目である全般臨床症状の評価指標CDR-SBのレカネマブ隔週投与群とプラセボ群のベースラインからの平均変化量の差は、-0.45(P<0.0001)であった。
Clarity ADコア試験とLTEを通して3年間のレカネマブ投与を受けた被験者のCDR-SBのベースラインからの平均変化量の差は、ADNI(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative)データを基にしたADの自然経過による低下と比較して -0.95まで拡大。早期AD当事者にとって臨床的に意義のあるベネフィットが継続していることを示した。
CDRスコアにおいて、記憶、地域社会活動、家庭および趣味に関する項目が0.5から1へ変化(悪化)するということは、当事者が自立して最近の出来事を記憶し、日常生活や家事を行い、趣味や知的関心事を楽しむといった能力が、軽度障害の段階から自立した活動が難しくなる段階へ移行することを意味する。
ADは、プラーク沈着前に始まり、プラーク沈着後も継続する進行性の神経毒性プロセスを有する疾患である。「レケンビ」は、プロトフィブリルの除去とプラークの迅速な除去という二つの作用を有する唯一のAD治療剤で、継続的な投与により、Aβプラーク除去後も神経細胞に損傷を引き起こす毒性の高いプロトフィブリルを継続的に除去する。
プロトフィブリルは、ADによる脳損傷に寄与し、この進行性の深刻な疾患の認知機能低下に主な役割を果たす最も毒性が高いAβ種で、脳内の神経細胞の損傷を引き起こし、その結果、複数のメカニズムを介して認知機能に悪影響を及ぼす可能性がある。
そのメカニズムとして、不溶性Aβプラークの発生を増加させるだけでなく、神経細胞やその他の細胞間のシグナル伝達に直接的な損傷を起こすことも報告されている。
プロトフィブリルを減らすことで、神経細胞への損傷や認知機能障害を軽減させ、ADの進行を防ぐ可能性がある。
「レケンビ」は、米国、日本、中国、韓国、香港、イスラエル、アラブ首長国連邦、英国(北アイルランドを除く)、メキシコ、マカオで承認を取得している。欧州(EU)をはじめ、17の国と地域で承認申請を行っており、2024年11月に欧州医薬品委員会より承認勧告を受領した。
皮下注射製剤維持投与について、2025年1月に生物学的製剤追加ライセンス(BLA)がFDAに受理され、PDUFAアクションデートが2025年8月31日に設定された。
レカネマブについてエーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行う。