米国で他家iPS細胞由来網膜シート用いた網膜色素変性治療に関するP1/2試験開始 住友ファーマ

 住友ファーマは29日、他家iPS細胞由来網膜シート(立体網膜、開発コード:DSP-3077)」について、同シートを用いた網膜色素変性治療に関するP1/2試験を開始すると発表した。
 同試験のIND申請(Investigational New Drug Application)を本年10月25 日に米国FDAに対して行い、FDAによる30日調査が完了し、同治験を開始する準備が整ったもの。なお、同治験では、非凍結の立体組織を用いる。
 現在、同治験開始に向け、米国マサチューセッツ州ボストンのマサチューセッツ眼科耳鼻科病院(Massachusetts Eye and Ear: MEE)と協議を進めており、住友ファーマは2025年度での患者への移植開始を目指している。
 同社は、すでに網膜色素変性を対象に最適な眼科評価項目の探索を目的とした自然観察研究をMEEで開始しており(NCT06517940)、得られたデータを同治験および今後の臨床開発に活用する予定である。
 同治験に先立ち、2020 年に神戸市立神戸アイセンター病院で開始された世界初の臨床研究「網膜色素変性に対する同種 iPS 細胞由来網膜シート移植に関する臨床研究」において、同社が製造し提供した他家 iPS 細胞由来網膜シートが2名の患者さんに移植されている。
 移植後2年間の網膜シートの生着および安全性が確認されていることが、アイセンター病院より公表されており、治験計画立案の参考にしたが、同治験はこの臨床研究とは別途実施するものである。
 同治療で用いる技術は、国立研究開発法人理化学研究所の笹井芳樹博士の研究グループが見出した多能性幹細胞から立体構造をもつ神経組織を効率良く分化させる方法である自己組織化培養法(SFEBq 法)を基にしている。
 住友化学と理研との 2010 年から2014年までの共同研究において同製法の改良を進め、その成果の実用化を目指して同社が住友化学より引き継ぐ形で、2013年より理研との共同研究を実施し、製法を確立した。現在、理研との共同研究は終了し、当社単独で本技術のさらなる改良、さらに適応拡大を目指した基盤研究も進めている。住友ファーマは、網膜色素変性の患者への新しい治療選択肢の一日でも早い提供につながるよう、同治験を進めていく。

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