薬物治療により症状が軽快しても平均約7割の患者は治療継続
Johnson & Johnsonは15日、 日、多発性骨髄腫の治療継続の実態及び認識などを明らかにすることを目的に、本年6月に実施した多発性骨髄腫の患者と多発性骨髄腫を診療する医師を対象とする調査の結果を発表した。
多発性骨髄腫は、現時点では治癒困難な血液がんだが、治療を行うことで長期の生存が可能となる疾患である。このため、「QOL維持しながら長期生存を目指す」を治療目的とされており、その治療は長期に及ぶケースが多いのが実情だ。
そこで、患者や医師の治療継続に関する実態と認識、また前向きに治療を継続する上で必要なことを明らかにするため、今回の調査を実施した。調査の結果、8割の患者が、「薬物治療は落ち着いた状態を維持するために長く続けるものである」と認識しているものの、全体の半数が、「通院などの身体的負担、治療費による負担、治療が続くことへの精神的な負担などから、治療を途中で休みたいと思ったことがある」と回答した。
だが、実際には、患者全体の8割は治療を継続していた。医師を対象にした調査においても、薬物治療により症状が軽快しても、平均約7割の患者は治療を継続しており、実際に患者の多くが長期に治療を継続している実態が改めて示された。
また、‟前向きに治療を継続する上で必要な事項”として、患者も医師も「主治医から、治療や副作用、治療期間に関する十分な説明」、「主治医に治療や副作用、治療期間に関する不安や疑問などを相談できる」、「患者本人が、病気や治療、医療費制度に関する情報を取得」を上位3つに列挙。
医師と患者の双方が「主治医と患者の間での対話や患者本人の情報入手が必要である」と考えていることが示された。
また、これらの結果に加え、医師の約5割は、「身近で世話をする人(家族など)」に、「患者が治療や治療期間、副作用などに関する不安や疑問を相談できること」、「身近で世話をする人が病気や治療、医療費制度についての情報入手」が必要、また医師の約3割は「同じ病気の患者同士で経験を伝えあったり、情報交換するコミュニケーション」も必要と回答した。
この結果から医師は、前向きな治療継続において、医師や患者本人だけでなく、身近で世話をする人(家族など)や患者同士での相談やつながりも大事であると考えており、この傾向は患者よりも、医師の方で多く見られた。調査概要及び調査結果のサマリーは次の通り。
【調査概要】
◆調査主体 : ヤンセンファーマ
◆調査期間 : 患者:2024 年6月3日~7日、医師:2024年6月17日~21日
◆調査対象者: 【患者】多発性骨髄腫と診断され、薬物治療を受けている(もしくは受けたことのある)患者 30 人、【医師】血液内科、血液腫瘍内科に所属し多発性骨髄腫を診療する医師119 人
◆方 法 :インターネット調査(調査実施会社:インテージヘルスケア)
【調査結果のサマリー】
◆患者さんの調査結果より
・患者の80.0%が、「薬による治療は、落ち着いた状態を維持するために、長く続けるもの」との認識
多発性骨髄腫の薬物治療に関し、患者の80.0%が、「基本的に薬による治療は、落ち着いた状態を維持するために長く続けるものである」と認識している(図 1)。
・ 身体的、経済的、精神的な負担などで治療を休みたいと思ったことがある患者もいるが、患者全体の8割は治療を継続
患者全体の53.3%(16/30 人)が、症状が軽快している状況で「(薬物治療を)休みたい」と思ったことがあると回答している。(図 2)。
副作用以外で、薬物治療を休みたいと思った理由は、「通院などが身体的な負担と感じたから(37.5%)」、「薬を含む治療にかかる費用が負担と感じたから(37.5%)」、「治療が続くことで精神的な負担があったから(31.3%)」などを挙げている(図3)。
一方で、休みたいと思ったことがある患者16人のうち、3 分の 2(11/16 人)は、治療を継続しており(図4)、結果的に患者全体の約8割は、休薬することなく治療を継続していた(図5)。
・ 前向きに治療を継続する上で、「医師からの説明」、「医師への相談」、「病気や治療に関する情報の入手」の 3 つが重要
長期間治療を継続するにあたり、どのような状況があれば、治療を継続しやすくなると思うかとの問いに対し、「主治医から、治療や副作用、治療期間に関する説明が十分にある(86.7%)」、「主治医に治療や副作用、治療期間に関する不安や疑問などを相談できる(76.7%)」、「病気や治療、医療費制度に関する情報を得る(56.7%)」が、上位3つとして挙げられた(図6.a)。
◆医師の調査結果より
・ 薬物治療で症状が軽快しても、平均約7割の患者は治療を継続薬物治療により骨髄腫細胞が減少し、症状が軽快した状況となった患者を100とした場合の治療継続の割合を医師に尋ね
たところ、平均71.5%の患者が治療を継続していることが分かった(図7)。
・ 前向きに治療を継続する上で、「身近で世話をする人への相談」、「同じ病気の患者同士のつながり」も重要
患者が長期間治療を継続するにあたり、どのような状況があれば治療を継続しやすくなると思うかとの問いに対し、「主治医から、治療や副作用、治療期間に関する説明が十分にある(70.6%)」、「主治医に治療や副作用、治療期間に関する不安や疑問などを相談できる(69.7%)」、「病気や治療、医療費制度に関する情報を得る(54.6%)」と、患者と同じ項目が上位 3 つを占めた。
加えて、「患者の身近で世話をする人に、治療や治療期間、副作用などに関する不安や疑問を相談できること」も大事だと医師全体の48.7%が回答したのに対し、患者は20.0%と、医師と患者間ではギャップがあった。
さらに、47.1 %の医師は「患者の身近で世話をする人自身が、病気や治療、医療費制度について情報を入手すること」、29.4%の医師は、「同じ病気の患者同士で経験を伝えあったり、情報交換したり、コミュニケーションをとること」も大事と回答した(図8)。
【患者調査結果】
Q1.「基本的に薬による治療は、落ち着いた状態を維持するために長く続けるものである」と思いますか?(SA)
全体の8割(80.0%、24/30)が「そう思う」と回答。
Q2.多発性骨髄腫に対するお薬による治療により、骨髄腫の腫瘍細胞が減少し、症状が軽快した状況で、お薬の治療を休みたいと思ったことがありますか?(SA)
全体の5割強(53.3%、16/30)が「ある」、4割強(46.7%、14/30)が「ない」と回答。
Q3.なぜお薬の治療を「休みたい」と思ったのか、その理由としてあてはまる主な内容を最大3つまで選んでください。(MA)
休薬したいと思った理由として、「通院などが負担」(37.5%、6/16)、「費用が負担」(37.5%、6/16)、「精神的な負担」(31.3%、5/16)と、副作用以外の負担を挙げた患者さんが3割強を占めた。
Q4.お薬による治療を休みたいと回答した方に伺います。お薬による治療を休んだことがありますか?(SA)
休みたいと思った患者さんのうち約7割(68.8%、11/16)は「休んだ経験はない」と回答した。
Q5.多発性骨髄腫に対するお薬による治療により、骨髄腫の腫瘍細胞が減少し、症状が軽快した状況で、お薬の治療を休みたいと思ったことがありますか?(SA)及び お薬による治療を休みたいと回答した人で、実際にお薬による治療休んだことがありますか?(SA) の2つの質問への回答をもとに集計。
患者さん全体で見た際、結果的には8割強(83.3%、25/30)が薬による治療を休んだ経験がなかった。
Q6.多発性骨髄腫の治療は長く続く場合が多いようです。治療を受け続けるにあたり、どのような状況があれば、前向きに治療を続けられると思いますか。当てはまるものをすべて選んでください。(MA)
前向きな治療継続のために必要な状況として、8割強(86.7%、26/30)が「医師からの十分な説明」、7割強(76.7%、23/30)が「医師に相談できること」、5割強(56.7%、17/30)が「病気関連情報を得ること」を挙げた。
【医師調査結果】
Q7.先生が抗がん剤治療を行った多発性骨髄腫患者さんのうち、治療で“骨髄腫の腫瘍細胞が減少し、症状が軽快した状況”となった患者さんを100とした場合に、どの程度の患者さんが抗がん剤の休薬をしていますか。(SA)
休薬をしていない患者さんの割合は平均7割(71.5% 平均)と医師が回答。
Q8.多発性骨髄腫の治療は長く続く場合が多いです。治療を受け続けるにあたり、どのような状況があれば、前向きに治療を続けられると先生は思いますか。あてはまる内容を全て教えてください。(MA)
前向きな治療継続のために必要な状況として、7割(70.6%、84/119)が「医師からの十分な説明」、7割(69.7%、83/119)が「主治医に、不安や疑問などを相談できること」、5割(54.6%、65/119)が「病気や治療などの関連情報を得ること」と回答した【図8】。
また、医師の48.7%が「患者さんの身近で世話をする人に、治療や治療期間、副作用などに関する不安や疑問を相談できること」も大事だと回答したが、患者の回答は20.0%に留まっており【図6.b】、ギャップがあった。