MSDは9日、21種類の肺炎球菌血清型に対応し、成人に特化して設計された「21価肺炎球菌結合型ワクチン(無毒性変異ジフテリア毒素結合体)について、日本国内で製造販売承認申請を行ったと発表した。
肺炎は、日本人の死因の第5位で、肺炎で亡くなる人の97.8%は65歳以上の高齢者が占めている。肺炎球菌は、日常でかかる肺炎(市中肺炎)の原因菌のなかで最も多い細菌である。また、肺炎球菌が原因となる感染症のなかでも重篤なのが、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)である。IPDは、本来、無菌である髄液または血液等から肺炎球菌が検出される感染症で、発症した成人の22.1%が亡くなり、8.7%に後遺症が残ったという報告がある。
成人に特化して設計された同剤は、成人のIPDの原因として多くみられる21種類(3、6A、7F、8、9N、10A、11A、12F、15A、15C、16F、17F、19A、20A、22F、23A、23B、24F、31、33F及び35B)の肺炎球菌血清型に対応している。そのうち8種類(15A、15C、16F、23A、23B、24F、31、35B)は、これまでに承認されている肺炎球菌ワクチンが対応していない同剤固有の血清型である。
米国疾病予防管理センター(CDC)がまとめた2018~2021年のデータによると、同剤が対応する21種類の血清型は、50歳以上の成人におけるIPDの約84%、65歳以上の成人におけるIPDの約85%の原因になっている。
また、そのうち同剤固有の8種類の血清型は、50歳以上の成人におけるIPDの約27%、65歳以上の成人におけるIPDの約30%の原因になっており、同剤は従来に比べてさらに広くIPDを予防することが期待できる。今回の承認申請は、成人を対象とした複数の海外P3試験、国際共同P3試験、ならびに65歳以上の日本人の成人を対象とした国内P3試験のデータに基づいており、成人における肺炎球菌による感染症の予防を「効能又は効果」として申請している。
同剤は、米国では優先審査品目として、2024年6月に成人における肺炎球菌による侵襲性疾患および肺炎を予防する能動免疫の適応で米国FDAの承認を取得しており、同月、CDCの予防接種諮問委員会(ACIP)は全会一致で、成人の肺炎球菌感染症予防に使用するワクチンとして推奨を決定した。また、現在、欧州医薬品庁(EMA)による審査が行われている。
MSDは、1988年に23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン「ニューモバックス」を発売し、2023年には沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン「バクニュバンス」を発売するなど、35年以上にわたり日本の成人および小児の肺炎球菌感染症予防に貢献。今後も成人に特化して設計された21価肺炎球菌結合型ワクチンの承認取得に向けて取り組むとともに、引き続き日本人の肺炎球菌感染症予防に向けて革新的なワクチンの開発を進めていく。