塩野義製薬は8日、グラム陰性菌感染症治療薬「フェトロージャ」(一般名:セフィデロコル)に対する感受性を測定するための体外診断用医薬品「塩野義製薬 MICドライプレート セフィデロコル」を同日に発売したと発表した。希望小売価格は、1万5000円/箱。製造販売元は、極東製薬工業。
MICは、細菌の増殖を阻止するための最小薬剤濃度(最小発育阻止濃度)で、MIC 値が低いほど、その抗生物質の効果が高いことを表す。
薬剤耐性(AMR:Antimicrobial resistance)対策として、感染原因と考えられる菌に対する薬剤の感受性を測定し、原因菌を特定した上で適正な抗菌薬を使用することは、新たな薬剤耐性菌の出現を抑える観点から重要である。 同プレートの発売により薬剤感受性検査体制が充実することで、フェトロージャのより適正な使用への貢献が期待される。
セフィデロコルは、多剤耐性菌を含むグラム陰性菌の外膜を効果的に通過して抗菌活性を発揮する新規のシデロフォアセファロスポリン系抗菌薬である。細菌のカルバペネムへの耐性獲得に関連する3つの主な機序(βラクタマーゼによる抗菌薬の不活化、ポーリンチャネルの変異による膜透過性低下、排出ポンプの過剰産生による薬剤の細菌細胞外への排出)による影響を受けにくい特徴を有する。
鉄と結合するセフィデロコル独自の構造を有することにより、細菌が養分である鉄を取り込むために利用する鉄トランスポーターを介し細菌内に能動的に運ばれることで、細菌の細胞壁合成を阻害する。
同剤は、これまでに米欧台日において承認を取得し、欧州においてはFetcroja、米国と台湾ではFetroja、日本においてはフェトロージャの製品名でそれぞれ販売されている。
セフィデロコルはWHOの必須医薬品リストにも掲載されており、また、多くの低中所得国、高中所得国で本薬を必要とする患者へのアクセスを改善するために、The Global Antibiotic Research and Development Partnership(GARDP)およびClinton Health Access Initiative(CHAI)との3者連携契約を通じて準備を進めている。