紅麹の毒性はAIでE判定 添加物専門家小薮浩二郎氏に聞く シグナルトーク

 小林製薬の紅麹サプリメントを摂取した人の健康被害で新たな被害者や死亡例が確認されており、消費者に不安が広がっている。こうした中、シグナルトークでは、2021年よりサービスを開始しているAIが食品の健康度を判定するアプリ「FoodScore(フードスコア)」(https://food-score.tech/lp)において、約3年前から紅麹を含む食品のほとんどでE判定(健康に悪く、食べない方が良いもの)と判定してきた。
 これは紅麹(紅麹色素)は腎臓や肝臓へのダメージの他、子供や妊婦への悪影響が従来より判っている物質であるためだ。FoodScoreでは紅麹だけではなく体に悪影響がある食品や添加物の判定も無料で行える。

FoodScoreで「紅麹」での食品検索結果例(一部モザイク処理をしている) https://food-score.tech/product_lists?search_text=%E7%B4%85%E9%BA%B9

 FoodScoreは、食品のバーコードや原材料名をアプリで撮影するだけで、AIが原材料の添加物の悪影響から食品の健康度をA~Eの5段階で判定できる。A~Cが概ね食べても良い食品と判定し、良くない食材や添加物は赤文字で表示される。
 お気に入りの食品を投稿することもでき、他の利用者も健康度を確認できる。FoodScoreに投稿された食品は、AIによる独自指標の健康度とともに、投稿による美味しさの評価や口コミが「フードリスト」に表示される。
 リリース後、健康度を判定済みで検索できる食品数は15万2000点を超える。また、これまでの利用回数は28万5000回(2024年3月現在)を超えている。ECサイトの購入リンクや在庫状況表示の他、気になる食品をお気に入り登録できるため、商品購入の参考や比較に活用できる。

【添加物専門家 小薮浩二郎氏インタビュー】

添加物専門家小薮浩二郎氏へのインタビュー内容は、次の通り(聞き手/執筆:栢孝文シグナルトーク代表取締役)。

 -今回の問題となっている紅麹は、どのような危険があるか。

 小薮 紅麹は、従来から腎臓や肝臓への悪影響があることがわかっていて、妊婦さんや子供に対しても骨格形成異常が起こる可能性について指摘されている物質である。

 -腎臓への影響というのはどういったものか?

 小薮 紅麹をラットに大量に与える反復投与毒性試験後に解剖し、腎臓を100枚以上に薄くスライスして顕微鏡で調べると細胞レベルでの異常が見つかる。なぜそうなるのか作用機序については詳しく分かっていないものの、毒性があることは確認できている。
 人間が受けた影響が同じものかは分からないが、多く摂取した場合に問題が起こる可能性がある。腎臓は、むくみや疲れなどの障害が出ている状態ではすでに手遅れになっていることが多く、今回の問題となっている食品を摂った人たちは全員、「血液検査」と「尿検査」を受けるべきだと思う。なぜなら、自覚症状がなくても検査で異常が見つかる可能性もあるためだ。

 -肝臓への影響とはどういうものか?

 小薮 紅麹を摂取するとコレステロールが下がるというのは事実である。肝臓がコレステロールを作る時の酵素を妨害する阻害剤の役割を果たす。だが、医師がコレステロールを下げる薬剤を処方する場合は血液検査で継続的に観察し、コレステロールが正常値になった場合や何らかの異常が認められた場合には投薬を停止するなどの措置を取るが、サプリの場合は血液検査などをしているケースは少ないと思われる。
 正常な人がコレステロールを下げる働きのあるものを飲み続けると、胆汁の生成などがうまくいかず消化器の不良などにつながる可能性がある。また、紅麹には体内で出血をするリスクを高める作用があるため、血液をサラサラにするタイプの薬を服用している人は紅麹を避ける必要がある。このことは商品にも明記すべきである。

 -妊婦や子供に影響があるというのはどういうことか?

 小薮 ラットでの実験結果であるが、妊娠したラットに大量の紅麹を口から投与する実験を続けると、正常に胎児が生まれない可能性が高まり、骨格形成の異常を起こすことが確認されている。

 -今回の問題をどのように解決すればよいと思われるか?

 小薮 問題となっているメーカーの紅麹から極めて毒性の強い青カビが産生するプベルル酸が検出されている。これは製造上で管理が悪かったことを示していて発酵食品全般に警鐘を鳴らしている。
 このメーカーが使用している紅麹菌は、シトリニンという猛毒物質を作る種類ではないそうであるが、他のメーカーが生産している紅麹にそれらが含まれていないという保証はない。
 そのため、紅麹を使用している全てのメーカーはシトリニンなどの物質が含まれていないかどうかを各ロットごとに検査すべきだと思う。そして、食品会社はそのデータを確認すべきである。

 -何か添加物について他に問題があると考えられることはあるか?

 小薮 添加物ではないが、似たような問題がある可能性が気になる。コウジ酸については肝臓がんの危険性があり、また、アフラトキシンは発酵食品に含まれる可能性がある物質であるが、こちらも同様の問題を引き起こす可能性があるためきっちり検査した方が良いと思う。
 また、紅麹は添加物として使用した場合などは表示義務があるが、例えば醤油に混ぜて使用した場合や発酵調味料として使用した場合には表示義務がない。この問題をうけて各メーカーは表示しなくて良い方法を模索して紅麹と表記せずに使用する方向にいってしまう懸念があり、すでに現在もそのようになっている。
 政府は、どのような形で使用しても原材料名に表記する義務を負うという法律に変えていくべきだと思う。

 -ありがとうございます。食品メーカーは命を預かる責任を感じて、表示や安全性試験を行うべきですね。

◆小薮浩二郎氏(添加物研究者)略歴

 九州大学大学院農芸化学専攻(栄養化学講座)修了後、製薬会社の研究部門ほか、添加物開発の最前線で活躍。添加物の研究歴40年以上の第一人者。現在は、食品会社の顧問、食品販売会社特別顧問などに携わる。

【著書】『食品添加物用語の基礎知識・第三版』『コンビニ&スーパーの食品添加物は死も招く』『長生きしたければ、原材料表示を確認しなさい!』『<小説>白い濁流』『食品の裏と表、食品添加物のこわい話』

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