塩野義製薬は28日、新型コロナ経口治療薬「ゾコーバ」について、大規模レセプトデータベースの解析により重症化抑制効果が確認されたと発表した。
また、日本の臨床現場での一般使用成績調査最終解析において、日常診療下におけるゾコーバの安全性と有効性が示されたことも公表した。
これらの新たな臨床データは、6月27~29日に日本で開催中の、第98 回日本感染症学会学術講演会/第72回日本化学療法学会総会合同学会で報告された。
ゾコーバの重症化抑制効果に関する臨床研究は、重症化リスク因子を有する18歳以上の新型コロナ感染症外来患者16万7310 名を対象に、ゾコーバの新型コロナ感染症重症化抑制効果を評価したもの。
主要評価項目である「理由を問わない入院イベント」に関して、ゾコーバ群は対症療法群と比較して、約37%入院リスクが減少し、統計学的に有意に入院イベントを抑制した(ゾコーバ群:入院リスク:0.494%、対症療法群:入院リスク:0.785%、リスク比 [95%信頼区間] :0.629 [0.420, 0.943] 、リスク差:-0.291 [-0.494, -0.088] )。
この結果から、ゾコーバが新型コロナ感染症重症化抑制効果を有し、重症化リスク因子を有する患者に対する効果的な治療薬であることが示唆された。
◆同臨床研究を実施した迎寛氏(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 呼吸器内科学分野教授)のコメント
昨今、新型コロナ感染症の主流行株はオミクロン株になり重症化率は低下したものの、高齢者を中心に重症化し、入院に至る患者さんがまだまだおられる。
本研究では、オミクロン株流行期の実臨床のデータを用いて、ゾコーバの有意な重症化抑制効果を確認した。優れた抗ウイルス効果を有するゾコーバを重症化リスク因子を有する患者に早期投与することで、新型コロナ感染症の重症化抑制が期待される。
なお、同結果に関する論文は、国際的な査読付学術誌「Infectious Diseases and Therapy」に掲載される予定である。
一方、日常診療下におけるゾコーバンの安全性と有効性は、一般使用成績調査最終解析結果に基づくもの。日本で実施した一般使用成績調査では4125例の患者が登録され、そのうち安全性の解析対象として3760例、有効性の解析対象として3638例が評価された。集計結果の概要は以下の通り。
【安全性】
・副作用は271例(7.2%)に認められ、主な副作用は、下痢91例(2.4%)、悪心43例(1.1%)、頭痛42例(1.1%)であった。
・重篤な副作用は3例5件(頭痛、悪心、嘔吐、冷汗、全身性浮腫)であり、いずれも5日以内に回復した。
・重要な特定されたリスクである「アナフィラキシー」の発現は確認されなかった。
【有効性】
・エンシトレビルの投与後、解熱までの時間の中央値は約1.5日(36.0時間)、全症状消失までの時間は約6.5日(156.0時間)であった。
・エンシトレルビル投与開始後28日以内に入院した症例は、14例(0.4%)で、そのうち10例がCOVID-19の悪化によるものであった。
・死亡は2例(0.1%)であり、いずれも偶発症や原疾患/合併症に起因すると考えられた。
これらの結果、ゾコーバは、重症化リスク因子の有無に関わらず、良好な忍容性と有効性を示し、新たな懸念は認められなかった。
今回の結果により、日本においてゾコーバがより安心して使えるようになり、重症化リスク因子の有無にかかわらず、幅広い新型コロナ感染症治療に貢献することが期待される。
また、塩野義製薬は、グローバルでの開発を加速し、さらなるゾコーバの集積に努めるとともに、より多くの国々でのコロナ治療に貢献できるよう努めていく。