survodutide P2試験でMASHの悪化なく肝線維化改善 ベーリンガーインゲルハイム

ベーリンガーインゲルハイムは18日、開発中のsurvodutide (BI 456906)について、P2試験のサブ解析結果として同剤の投与を受けた線維化ステージ F2(中等度)~F3(重度)の成人患者の 64.5%(対プラセボ群:25.9%)が投与開始48週後にMASHの悪化を伴うことなく線維化の改善を達成したと発表した[改善率の差:38.6% (95% CI 18.1% – 59.1%), p=0.0005]。
 ステージF2およびF3は肝臓関連の合併症を発生するリスクが高い患者層を示す。同本試験の詳細なデータは、欧州肝臓学会(EASL)2024で公表され、同時にThe New England Journal of Medicine 誌に掲載された。
 副次評価項目では、survodutide投与群の最大 52.3%(対プラセボ群:25.8%)において、投与開始 48 週後に、線維化ステージF1、F2、F3(F1:軽度、F2:中等度、F3:重度)の有意な改善が認められた[改善率の差:26.5% (95% CI 8.37% – 44.66%), p<0.01]。
 この発表は、同試験の主要評価項目の達成5という今年初めに発表されたデータに続くもの。同試験の主要評価項目である、成人患者の最大で 83.0%(対プラセボ群:18.2%)に MASH の統計的に有意な改善が認められたという結果が示され、survodutideがベスト・イン・クラスの治療薬となる可能性が補強された[改善率の差:64.8% (95% CI
1.1% – 78.6%), p<0.0001]。 survodutide は、新規の作用機序をもつグルカゴン受容体/GLP-1 受容体デュアルアゴニストで、MASH を対象としたP2試験で投与開始 48 週後における肝線維化に対して有益性を示した治療薬候補物質である。同剤は、グルカゴン受容体アゴニストとしてエネルギー消費量を増加させ、肝臓に直接の影響をもたらすことで肝線維化の改善に貢献する可能性がある。GLP-1受容体アゴニストとしては、食欲を低下させ、満腹感と満足感の向上をもたらす作用を示す。
 同試験では、投与開始 48週後に線維化ステージが1 段階以上低下した場合を改善と評価した。線維化は、世界で1億1500万人以上に影響を及ぼしている進行性疾患であるMASHの進行を測る基準だ。MASHは、肝臓の炎症に起因して発生し、線維化に至るおそれがある。重度の瘢痕化(肝硬変)が生じると、末期肝疾患や肝がんのリスクが著しく高まる。
 このステージでは肝移植が唯一の治療法となり、保健医療システムに大きな財政負担を強いる可能性がある。肝線維化は通常、徐々に進行し、広範囲に進行していない場合は気付かない場合がある。
 肝線維化は、進行すると回復が難しくなることが多く、肝硬変になると回復が不可能になるケースもある。
 また、このP2試験において、survodutideは、投与開始48週後の他のすべての副次評価項目についてもプラセボと比較して有意な結果を示した。実際の投与終了時の用量(Actual treatment)の結果では、成人患者の最大87.0%(対プラセボ群:19.7%)が肝脂肪量の 30%以上の相対的低下を達成し、また肝脂肪量の 64.3%以上の相対的低下(対プラセボ群:7.3%)を達成した。
 実際の投与終了時の用量(Actual treatment)の結果において、MASH の改善を評価するために使用される NAFLD Activity Score(NAS)の総スコアのベースラインからの変化量は、survodutide 群でマイナス 3.3(対プラセボ群:マイナス 0.4)であった。
 survodutideは、Zealand Pharmaからベーリンガーインゲルハイムにライセンス供与されており、ベーリンガーインゲルハイムが単独で世界的な開発・販売を担当。Zealand Pharmaは北欧諸国における共同販促の権利を有する。
 同試験において、survodutideは GLP-1をベースとする化合物と一致する安全性データを示し、新たな安全性データの懸念はない。同剤は、2021年に米国FDAよりファストトラック審査の対象とされており、昨年11月に欧州医薬品庁(EMA)より肝線維化を伴うMASHの治療薬として優先審査(PRIME スキーム)に指定されている。
 survodutide については、MASHと関連する過体重や肥満がみられる患者を対象とした 5 件の第P3試験においても評価を行っている。追加のP3試験では、survodutideが、MASHと確定診断された、あるいは推定診断された過体重あるいは肥満の人々の肝脂肪を減らし、体重減少に貢献するかどうかを評価している。

◆同試験の治験調整医師であるArun Sanyal氏(バージニア・コモンウェルス大学医学部の医学・生理学・分子病理学教授、博士)のコメント
 survodutideのP2試験で得られた結果には、特に期待している。survodutideは、GLP-1に加え、グルカゴン受容体アゴニストとして MASHを改善し、同時に線維化の治療を大きく前進させる可能性がある。
 今回のデータにより、survodutideはトップクラスのグルカゴン/GLP-1 受容体デュアルアゴニストとして、MASHおよび臨床的に重大な線維化を有する患者さんに大きな変化をもたらす可能性がある。

◆カリン・ブルヨン ベーリンガーインゲルハイムヒューマンファーマビジネスユニット担当取締役のコメント
 線維化に関するこの結果は、survodutideがMASHのベスト・イン・クラス治療薬になる可能性をさらに補強するものであり、早急にP3床試験へと進める。
 肥満などの心腎代謝疾患と関連するMASHに対する新たな治療薬が緊急に必要とされており、当局と継続的に連携していくことを期待している。

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