ブロックバスター候補最新「Drugs to Watch 」レポート公開 クラリベイト

アステラス製薬の転移性HER2陰性の胃・食道胃接合部腺がん「Zolbetuximab」など13医薬品特定
 

 クラリベイトは23日、「Drugs to Watch 2024」レポートを発表した。同レポートは、今年の注目の医薬品を特定するために、数百の疾患、医薬品、市場をカバーする160人以上のクラリベイトのアナリストが専門知識を活用し、研究開発および商業化のライフサイクルにまたがる以下の11の統合データセットを活用。商業的・臨床的に成功の可能性がある医薬品について、詳細な予測分析を行っている。同レポートは、進化する医薬品業界における重要な業界資料で、レポートを発行してきた11年間を通じて、これまでに85を超える医薬品を特定している。
 クラリベイトのアナリストは最新版のレポートで、2024年に発売または発売予定の医薬品で、2029年までにブロックバスターの地位を獲得する、あるいは世界中の何百万人もの患者にとって臨床上の画期的な存在になると予測される13医薬品を特定した。
 これらの有望な進歩には、乳がん、血友病A、鎌状赤血球症、クローン病、潰瘍性大腸炎、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、多発性骨髄腫など、幅広い疾患に対する革新的治療が含まれている。
 さらに、同レポートは、中国本土で成長する慢性疾患市場に焦点を当てており、2029年までに10億ドル規模のブロックバスターの地位を獲得または患者に大きな影響を与える可能性のある医薬品を7つ特定している。
 Mike Wardクラリベイトのライフサイエンス・ヘルスケア部門ソートリーダーシップのグローバルヘッドは、「バイオ医薬品業界を支えるファンダメンタルズはかつてないほど強固なものとなっており、新しい技術が医療の進歩を促進し、これまで満たされていなかった医療のニーズを持つ患者さんに治療法の選択肢を提供している」と明言。
 その上で、「業界の深い専門知識と包括的な治療領域別データを活用し、今年のDrugs to Watchレポートでは、患者の転帰に影響をもたらすと考えられる最近の科学的ブレークスルーに基づく革新的な医薬品を特定している」と説明する。
 2024年は製薬業界にとって、革新的な一年になることも予想されている。過去10年間の科学的ブレークスルーに裏打ち新しい治療法が臨床的成功を収め、これまで満たされていなかった医療ニーズを持つ患者さんに治療法を提供し始めている。
 その一方で、医療費抑制に向けた政府の取り組み、高止まりする資本コスト、世界的な地政学的紛争といった外部要因が、このセクターへの投資意欲にブレーキをかけている。
 Drugs to Watchレポート2024年度版では、新薬の発見、開発、供給にとって重要なトレンドのいくつかに焦点を当て、ブロックバスターまたは画期的な新薬としての地位を確立するために、今後数年間で重要なマイルストーンを達成するであろう医薬品や新薬候補にスポットを当てている。2024年の注目すべき主な医薬品は次の通り。

◆Aflibercept (high dose; EYLEA HD)
開発元:バイエル薬品、リジェネロン・ファーマシューティカルズ
湿性加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)または糖尿病網膜症(DR)の患者において、選択される治療法が侵襲的で頻回投与の煩雑さを伴うため薬剤摂取が制限される場合には、高量afliberceptのより低頻度での投与により、現在の標準治療と同様の有効性と安全性を達成することができる。

◆Budesonide (TARPEYO/Kinpeygo/Nefecon)
発売元: Calliditas Therapeutics AB, Everest Medicines and STADA Arzneimittel AG
 TARPEYO/Kinpeygo(プロジェクト名Nefeconとして開発)は、副腎皮質ステロイドであるBudesonideの第2世代の非ハロゲン化合成製剤である。Budesonideの遅延放出製剤は、原発性免疫グロブリンA(IgA)におけるタンパク尿の減少および腎機能低下の遅延に対する有効性が高く、従来の副腎皮質ステロイドよりもはるかに優れた安全性プロファイルを示している。

◆Datopotamab deruxtecan (Dato-DXd)
発売元:アストラゼネカ、第一三共
 HRポジティブ/HER2ネガティブおよびトリプルネガティブの両方の乳がんおよび非小細胞肺がん(NSCLC)の治療薬としてGilead Sciences IncのTRODELVYに次いで2番目に市場に登場しdatopotamabderuxtecanは、クラス最高のTROP2標的抗体薬物複合体(ADC)となる可能性がある。
 アストラゼネカと第一三共の提携は、NSCLCおよび乳がんに焦点を当てたアストラゼネカの戦略と、第一三共独自のDXd ADC技術との統合を可能にしている。

◆Efanesoctocog alfa (ALTUVIIIO/BIVV001)
発売元:サノフィ(BioverativTherapeutics Inc.)、Swedish Orphan Biovitrum AB
 efanesoctocog alfaは、週1回の静脈内投与による第VIII因子(FVIII)補充療法で、現在使用可能な他のFVIII補充療法の投与頻度に伴う患者負担の軽減に役立つ。モノクローナル抗体や遺伝子治療など、新規の治療に消極的な患者にとって、efanesoctocog alaは魅力的なオプションとなる可能性が高いと考えられる。
 臨床医も、現在入手可能な臨床試験データから示されている達成可能FVIIIレベル、注射頻度および安全性プロファイルから、efanesoctocog alfaを肯定的に評価している。

◆Ensifentrine (RPL554)
発売元:Verona Pharma
 ensifentrineは吸入型のホスホジエステラーゼ(PDE)3およびPDE4の二重阻害剤で、中等症から重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪を、現在使用されている経口投与PDE阻害剤による全身性の副作用を伴うことなく低減させることが期待されている。
 承認されれば、COPDの維持療法に利用可能なメカニズムとして10年以上ぶりに登場した新規メカニズムによるファーストインクラスの医薬品となる。利用可能な治療クラスの選択肢が限られているこの患者集団において、ensifentrineはその臨床プロファイルおよび安全性プロファイルから、 有望な新規治療薬となる。

◆Exagamglogene autotemcel (CASGEVY/exa-cel)and lovotibeglogene autotemcel (LYFGENIA/lovo-cel/formerly LentiGlobin)
発売元:CRISPR Therapeutics and Vertex Pharmaceuticals Inc (exa-cel) and Bluebird Bio (lovo-cel)
 exagamglogene autotemcel(exa-cel)とlovotibeglogene autotemcelは、鎌状赤血球症(SCD)とβサラセミアに対する初の疾患修飾薬として大きな注目を集めている。exagamglogene autotemcel は、ヒトの疾患の根本的な遺伝的原因を標的とした新しい治療法 を発見および開発するために、CRISPR/Cas9に 焦点を当てて生み出された最初の治療剤である。

◆Mirikizumab (Omvoh™/ LY-3074828)
発売元:Eli Lilly and Company
 mirikizumabは、IL-23のp19サブユニットを標的とするモノクローナル抗体(mAb)で、潰瘍性大腸炎のためのファーストインクラスの治療薬としてEMAおよび米国FDAから承認されている。クラスで3番目のクローン病治療薬としても承認される可能性が高いと考えられる。
 Drugs to Watch 2023に含まれていたが、米国FDAが製造に懸念を示したため上市が遅れ、Drugs to Watch 2024でも引き続き注目している。

◆Niraparib + abiraterone acetate (AKEEGA)
発売元: Johnson & Johnson Innovative Medicine
 AKEEGAは、PARP阻害薬(niraparib)と第2世代ホルモン剤(abiraterone acetate)を組み合わせた最初で唯一の二重作用錠剤(固定用量配合(FDC)錠剤)である。
 病的変異または病的変異疑いのあるBRCA遺伝子変異転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者への治療薬となり得るため、より有効な治療薬を必要とするこれらの患者への対応促進に役立つと思われる。

◆RSVpreF (ABRYSVO/PF-06928316) and RSVpreF3 (AREXVY/GSK-3844766A)
発売元:Pfizer Inc (ABRYSVO) and GSK plc (AREXVY)
 RSウイルス(RSV)感染症は、特に乳幼児および高齢者(65歳以上)においては常に公衆衛生上の問題となっている。RSV感染症は、季節性の一般的な上気道感染症の一種で、症状はインフルエンザおよびCOVID-19と類似しており、重症例では入院に至る可能性がある。公衆衛生の専門家が「トリプルデミック」と称している、RSV感染症、 インフルエンザおよび COVID-19の3つの感染症の同時期の流行により、 特に発症リスクが最も高い集団に関して、医療負担が増大している。
 乳幼児および高齢者を対象としたRSVワクチン(RSVpreFおよびRSVpreF3)の初の承認は、公衆衛生上の重要な節目となる。

◆Talquetamab (TALVEY)
発売元:Johnson & Johnson Innovative Medicine
 ECからの条件付き承認およびFDAからの迅速承認を受けたtalquetamabは、多発性骨髄腫の治療のための、CD3およびGPRC5Dを標的とするファースト・イン・クラスの二重特異性抗体である。 talquetamabの承認は、複数の治療歴を有する、再発/難治性の多発性骨髄腫患者を対象としたピボタルP1/2相MonumenTAL-1試験に基づくもの。進行中のP3試験により、talquetamabの承認された適応における臨床的有用性が確認され、他の承認済み薬剤(Johnson & Johnson Innovative MedicineのDARZALEXなど)との併用を含め、他の多発性骨髄腫患者集団への適応拡大につながることが期待される。
 Talquetamabは、治癒困難で再発頻度の高いこの疾患に対して、重要な新たな治療選択肢として加えられることが期待される。

◆Zolbetuximab (IMAB362)
発売元: Astellas Pharma Inc
 転移性HER2陰性の胃・食道胃接合部(GEJ)腺がんは、治療が極めて困難であり、新たな有効な治療法に対する大きなアンメットニーズが存在している。trastuzumab(Genentech)やENHERTU(第一三共)などのHER2標的薬が利用可能なHER2陽性疾患とは対照的に、HER2陰性患者に利用可能な標的治療薬の選択肢は非常に限られている。Zolbetuximabは、オンコロジー領域における ファーストインクラスのクローディン18.2(CLDN18.2)阻害薬および転移性HER2陰性胃腺がんまたはGEJ腺がんのための1stライン治療薬として、これらのアンメットニーズのいくつかに対処できる可能性がある。

 2024年に重要な概念実証が達成される可能性が高い新しいテクノロジープラットフォームには、 CRISPR-Cas9 遺伝子編集や、創薬、臨床開発、商業発売における人工知能 (AI)/機械学習 (ML) ツールアプリケーションが含まれる。長期的には、後者の技術は製薬企業のコスト削減とイノベーションサイクルの短縮に役立つ大きな可能性を秘めており、今後より革新的な医薬品をより迅速に患者に届けることが可能になる。


 

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