片岡一則センター長が「クラリベイト高被引用論文研究者」に7年連続8度目の認定 ナノ医療イノベーションセンター

 ナノ医療イノベーションセンター (iCONM)は28日、同センターセンター長の片岡一則氏(東京大学名誉教授)が「クラリベイト高被引用論文研究者」に7 年連続8度目の認定を受けたと発表した。
 世界的な情報サービスプロバイダーである英国・クラリベイト社が、15日に高被引用論文研究者の2023 年度版リストを公開したもの。
 同リストに上がった研究者は、過去10年間において分野別・出版年別の被引用数で上位1%にランクされる高被引用論文を複数執筆しており、今年度は世界67ヶ国から6849名の研究者がリストアップされた。これは、研究者全体の約0.1%に相当する。
 片岡氏は、高被引用論文研究者として2017年から7 年連続、通算8回認定されており、9月19日には「クラリベイト引用栄誉賞」も受賞している。
 同氏は、5月に発表されたResearch.com 2023科学者ランキングでは、化学領域で世界42位、国内1位。マテリアル科学で世界56 位、国内3位にランクされている。
 世界的な情報サービスプロバイダーである英国・クラリベイト社は、過去10 年間に発表された学術論文のうち、被引用数で上位1%にランクされる論文著者について、同社独自のデータ解析に基づいた高被引用論文研究者を毎年公開している。
 今年度は、世界67ヶ国から6849名がリストアップされ、15日付で公開された。iCONMの片岡一則センター長は、2017年から7年連続、通算8度目の「高被引用論文研究者」認定となる。
 片岡センター長は、1979 年に東京大学大学院工学系研究科で工学博士を取得後、東京女子医科大学医用工学研究所に助手として赴任している。
 その当時から薬物送達の構想を持っていたからこその医学部への転身だったが、高校生の時に観た映画「ミクロの決死圏」による影響は強く、薬剤を運ぶ担体(ナノマシン)が免疫システムにより破壊されないようにするには、どのような材質にすべきかを検討し、水溶性のポリエチレングリコール(PEG)と疎水性のポリアミノ酸(PAA)からなるユニット構造ができあがった。
 いずれも生体内で異物として免疫に認識されないため水中で自己会合を起こし、ミセル構造を形成しても免疫反応が起こらない。さらに、PAA鎖に抗がん剤を結合させたものを担がんマウスに投与し、制癌作用を実証したのが1980年代後半であった。
 当時、「EPR効果」と呼ばれる高分子化合物が腫瘍組織に集積しやすいという現象が報告されたこともあって、がんを標的としたナノ医療は急速に発展していった。
 1990年代初めからは、今のワクチン技術にも繋がる DNA/RNAといった核酸分子の送達にも取り組んだ。核酸分子がマイナスの電気を持つ性質に着目し、PAA 部にプラスの電気を持つ塩基性アミノ酸を用い、静電気の力を使った独自の送達法が世界的に注目されたことで論文の引用数が増え、Gene Delivery(核酸送達)の領域で確固たる地位を築いたことが、クラリベイト引用栄誉賞受賞の大きな原動力となった。
 今年5月には、科学者のための著名な学術プラットフォームであるResearch.comが2023年度の科学者ランキングを発表し、片岡氏は化学領域で世界42位、国内1位となった。
 片岡氏の研究を嚆矢とする高分子ナノ構造体を用いるDDS(ナノDDS)の研究開発は、現在、世界各国の研究グループへと拡がりを見せており、診断薬を含む様々な薬剤、タンパク質、核酸医薬、mRNA、遺伝子を体内に運び、適切に機能させるシステムへと展開されている。

タイトルとURLをコピーしました