2023年度男女更年期実態調査で85%が更年期症状の辛さ隠れ我慢 ツムラ

 10月18日「世界メノポーズデー」(Menopause=閉経)からの1週間は「メノポーズ週間」として、さまざまな啓発活動が行われる。更年期に訪れる症状に対し更年期前から健康管理への知識をつけること、症状を感じ辛い思いをしている人に対し社会全体で理解していくことが求められる。
 こうした中、ツムラは、前年に続き2023年も20代〜60代男女を対象とした更年期に関する調査を行った。その結果、更年期症状を自覚している男女のうち85%が更年期症状の辛さを「隠れ我慢」しており、症状に対して何らかの対処をしているのは男性で約3割、女性では約4割と少ないことなどが判明した。
 「隠れ我慢」とは、ツムラが「心身の不調を我慢していつも通りに仕事や家事を行う行動」と定義している。
 同調査では、①更年期の時期とは閉経前の5年間と閉経後の5年間を合わせた10年間、②更年期症状とは更年期の時期に現れるさまざまな症状の中でもほかの病気を伴わないもののことを指している。(出典=「産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編 2020」「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き」から引用) 「20代〜60代男女に聞く、更年期調査」調査の概要と詳細な調査結果、専門家のアドバイスは次の通り。
【調査概要】

◆実施時期:2023年9月12日~14日)
◆調査手法:インターネット調査  

◆調査対象:全国の20代〜60代男女各600人(うち、更年期の症状を自覚する40代〜60代男女各100人)、過去に更年期症状を経験した男女各100人ずつ

◆実査委託先:楽天インサイト ★構成比(%)は小数第2位以下を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合がある。

【詳細な調査結果】

◆現在、更年期症状を自覚する40代〜60代男女各100人調査
更年期症状「隠れ我慢」の実態

更年期症状を自覚する男女の85%が、辛さを我慢して過ごす「隠れ我慢」を経験

 現在、更年期の症状を自覚している男女各100人に、更年期症状の影響について聞いた。
 まず、更年期症状で辛いことを我慢していつも通り仕事や家事などを行う「隠れ我慢」をすることがあるかと聞くと、男女とも約3人に1人が「頻繁にある」(36.0%)、約2人に1人が「時々ある」(49.0%)と答えている[図1]。
 更年期症状を抱える男女の実に85.0%が、辛さを我慢して日常生活や社会生活を過ごす「隠れ我慢」を経験している。

[図1]

隠れ我慢してしまう更年期症状は男女とも「疲れ」

男性は「集中力の低下」「イライラ」、女性は「肩こり」「気分の落ち込み」

 更年期症状を「隠れ我慢」する男女それぞれに更年期症状を提示し、我慢をしてしまう症状を聞いた。すると、男性は「疲れやすい」(57.0%)、「集中力・記憶力の低下」(40.0%)、「イライラ」(37.0%)が多く、女性は「疲れやすい」(55.8%)、「肩こり」(40.0%)、「気分の落ち込み」(36.8%)が多くなっている[図2]。
 男女とも「疲れ」を我慢する人が最も多くなっているが、男性は集中力の低下やイライラを隠しつつ、女性は肩こりや落ち込みを隠しながら、普段通りに振る舞っているようだ。 

・更年期症状を「隠れ我慢」する男女とは図1の「まったくない」と回答した人以外:男性100人、女性95人

・男性と回答した人には男性の更年期症状、女性と回答した人には女性の更年期症状を各診療ガイドラインから引用して提示

[図2]

隠れ我慢する理由は「仕事や家事に支障」「周りへの負担」など周囲への影響を気にしている

 更年期症状の「隠れ我慢」をする男女に、我慢する理由を聞いた。男女とも「休むと仕事・家事に支障が出る」(男性65.0%、女性64.2%)、「仕事や家事など周りに負担をかけたくない」(男性45.0%、女性42.1%)が高く、周囲への影響を気にして我慢をしてしまうようだ。
 また、男女とも約3割が「我慢できると思っている」(男性34.0%、女性30.5%)と答え、男性は「どのような対処法があるのかわからない」(32.0%)、女性は「周りに相談したとしてもわかってもらえない気がする」(31.6%)という理由も高くなっている[図3]。

[図3]

更年期症状の日常生活への影響

男女とも更年期症状を自覚する人の6割以上が、更年期症状によって生活に「支障あり」

 現在、更年期の症状を自覚している男女各100人に、更年期症状の日常生活・社会生活への影響を聞きいた。その結果、男性は13.0%が「支障をきたす」、53.0%が「やや支障をきたす」と答え、更年期症状を自覚する男性の66.0%が日常生活・社会生活に支障を感じている。
 女性は63.0%(支障をきたす9.0%+やや支障をきたす54.0%)と男性よりやや少ないものの、更年期症状を 自覚する人の6割以上が、症状により生活に支障を感じている[図4]。

[図4]

更年期症状による支障を感じるのは、男女とも上位は「仕事」「家事」

 更年期症状により支障を感じる状況を聞くと、男性は「仕事」(65.0%)、「家事」(31.0%)の順、女性は「家事」(63.0%)、「仕事」(48.0%)の順となった[図5-1]。

 更年期症状を自覚する有職男女(男性86人、女性63人)で見ると、男女とも「仕事」(男性70.9%、女性69.8%)が最多だが、有職女性では約6割が「家事」(60.3%)にも支障を感じており、男性(27.9%)の倍以上も多くなっている[図5-2]。働く女性の更年期症状の負担の大きさがうかがわれる結果となっている。

[図5-1][図5-2]

 具体的にどのように大変だったか自由回答で答えてもらうと、「やりたいと思っていることができない」(男性 48歳)、「何事にもやる気が出ない」(女性 55歳)、「何をしていてもパニックになる」(男性 55歳)など、更年期症状が日常生活や社会生活へのダメージとなっている状況が明らかになった[図6]。

[図6]

更年期症状へのサポート

更年期症状へのサポートとして望むこと、男性は「具体的な対処法」、女性は「休息」

 更年期症状を自覚している男女各100人に、更年期症状で支障を感じるときどんなサポートを望むかと聞くと、男性は「具体的な対処法を知りたい」(46.0%)、「体調が悪い時は休む時間・日が欲しい」(44.0%)、「辛いことを理解してほしい」(43.0%)の順で多くなった。
 女性は、「体調が悪い時は休む時間・日が欲しい」(64.0%)、「辛いことを理解してほしい」(60.0%)、「具体的な対処法を知りたい」(53.0%)の順となった[図7]。
 「対処法」(男性46.0%<女性53.0% 7.0pt差)も、「休む時間・日」(男性44.0%<女性64.0% 20.0pt差)も「理解してほしい」(男性43.0%<女性60.0% 17.0pt差)も、男性より女性が多くなっている。

[図7]

◆現在or過去に更年期症状を自覚する40代〜60代男女各400人調査

更年期症状への対処の実態

現在・過去に更年期症状を自覚する人のうち、男性では症状に何らかの対処をした人は約3人に1人

最も多い対処方法は「休息・睡眠を増やす」と消極的

 現在、更年期症状を自覚する男女200人と、過去に更年期症状を 経験した男女200人に、更年期症状への対処について聞くと「対処した」と答えたのは、男性33.5%、女性41.0%でした[図8]。

[図8]

 対処した内容は、女性は「病院を受診」(58.5%)、「サプリメントを 摂取」(37.8%)など積極的なのに対し、男性は「休息・睡眠時間を増やす」(49.3%)と答えた人が最も多くなっている[図9] 。

[図9]

更年期症状の対処法について、「どのように調べられるのかわからない」「調べたことがない」男性が多い

 現在、更年期症状を自覚しながらも「対処していない」133人に、対処しない理由を聞いた。男女とも「この程度であれば我慢できると思った」(男性47.8%、女性53.0%)が最も多くなっていますが、男性は「どのように調べればいいかわからない」が34.3%と、女性(13.6%)に比べ20.7ptも高くなっている[図10]。
 そこで、現在、更年期症状を自覚する全員に更年期症状の対処法を調べた経験を聞くと、女性は71.0%いますが、男性は52.0%と女性より19.0ptも少なくなっている[図11]。
 更年期症状やその対処法について「わからない」「調べない」と放置し、結果「寝るだけ…」の男性も少なくないようだ。

[図10]

[図11]

更年期症状の対処法について、「どのように調べられるのかわからない」「調べたことがない」男性が多い

 更年期症状の対処法を調べた123人に、調べる上で難しかった事柄を聞くと、「自分にあった対処法と確信がもてるほどの情報をみつけること」(男性59.6%>女性47.9% 11.7pt差)、「症状が多岐にわたり調べ方が難しい」(男性48.1%>女性38.0% 10.0pt差)など、女性よりも男性の方が困難に感じているようで、男性の約3人に1人は「対処法の信憑性を疑ってしまう」(34.6%)と答えている[図12]。
 男性の更年期症状については、情報の質も量も、まだまだ足りていないようだ。

[図12]

◆更年期症状を自覚する人・しない人20代〜60代男女各600人調査

更年期症状について相談されたら・・・?

更年期症状について相談されたらどうするか?

 ここからは、更年期症状を自覚する人・しない人を交えた20代〜60代の男性600人・女性600人に聞いた。

 まず周囲の人から更年期症状について相談されたらどうするかを聞くと、更年期症状の経験がない人は「自分自身も理解を深めるきっかけになると思う」(女性 21歳)と、話を聞くことで将来の自分に役立てたいという意見、更年期症状を経験した人からは「人それぞれなので安易にアドバイスはできないが、自分の経験談は全て話そうと思う」(女性 44歳)のように自分の経験談を役立ててほしい、という意見が聞かれた[図13]。

[図13]

更年期症状を抱える人への経験者からのアドバイスは?

 過去に更年期症状を経験した人に更年期症状を抱える人へのアドバイスを聞くと、「更年期は自分を大切にした方がよい」(女性 46歳)、「きちんと病院を受診することの大事さを伝える」(男性 52歳)などの意見が寄せられた[図14]。
 無理をしない、病院に行く、前向きに捉えるなど、ポジティブに向き合うことを勧めるアドバイスが多く見られた。

[図14]

更年期症状への取り組み

「更年期症状に対する知識を得たい」と意欲はあるが、半数が「自分で調べるのは難しい」と感じている

 20代〜60代の男女に更年期の症状への取り組みについて聞いた。すると、男性の約7割(72.5%)、女性の約8割(82.3%)が「更年期症状に対する知識を得ておきたい」と答えている。だが、男女とも半数が「症状や対処法について 自分で調べるのは難しい」(男性50.3%、女性50.0%)と答えた[図18]。
 先に見たように、更年期症状を抱える男女の85.0%が「隠れ我慢」をしている実態が明らかになったが、更年期や更年期症状について正しい知識を得ることが、我慢に代わる選択肢の発見につながるのではないだろうか。

[図18]

【専門家のアドバイス】
 今回の調査結果を基に、男女それぞれの更年期症状との付き合い方について、専門家のアドバイスを得た。男性については日本初の男性外来を開設した堀江重郎氏、女性は産婦人科医で漢方診療も行う丸山綾氏がアドバイスする。

◆堀江重郎氏
・男性の更年期症状では本人が気付けていないことが多い

 更年期症状はホルモン分泌に関係していますが、特に男性では社会活動による影響も大きいため、全ての男性が更年期症状を経験するわけではない。今回の調査では、更年期症状の向き合い方に男女差が見られた。社会的に認知され情報も多い女性の更年期症状に対し、男性の更年期症状は社会的認知が低く、自身の症状が更年期症状かどうかを気付けていないのが現状だ。

・放置すればウェルビーイングの低下にも

 男性の多くは、更年期症状は一過性の体調不良であり、時間経過で治ると思いがちだ。「疲れやすい」「集中力・記憶力の低下」「イライラ」は典型的な男性の更年期症状で、よほど大きな変化がない限り自然に解消することはない。男性は重症になるまで医療機関を受診しない傾向が強いが、症状を放置することでウェルビーイング(心身の社会的健康)を損なう場合もある。
 だが、これらの症状は、医療機関を受診し、専門医の治療やカウンセリングを受けることで、短期間に改善する場合もある。

・健康経営のための更年期症状対策を 

 「プレゼンティーイズム」とは、従業員が心身に不調や疾病を抱えた状態で就業し、本来のパフォーマンスが発揮できない状態のことで、更年期症状がプレゼンティーイズムの大きな原因となることがわかってきた。
 従業員がプレゼンティーイズムに陥ることは、企業にとっても損失になるという調査もある。企業の健康経営の側面からも、これからの企業には、「仕事を休めない」「同僚に迷惑をかける」という理由から我慢しがちになっている更年期症状への対策への取り組みが求められる。

◆丸山綾氏
・女性の更年期症状、程度は人それぞれ

 女性の更年期症状はエイジング経過の一つで、誰にでも起こり得るものである。だが、その症状の種類や程度は個人差が大きく、ほとんど気にならない人もいれば、日常生活に支障をきたす人もいる。

・生活に支障をきたす更年期症状は「病気」

 今回の調査では、更年期症状を自覚する女性の85%が「隠れ我慢」を経験しているが、病気でないから休んではいけないとむち打って我慢するケースもあれば、休みたくても環境がそれを許さず「隠れ我慢」せざるを得ない…というケースもあるだろう。いずれにしても改善すべきで、そのためには更年期症状も、生活に支障をきたせば病気であることを個人も社会も正しく認識することが肝心だ。
 現代では、更年期世代で仕事を持つ女性も多く、更年期症状によるパフォーマンス低下での経済損失も大きいと考えられる。個人の問題ではなく社会全体の問題として捉え、対応する仕組み作りが必要である。産休・育休・介護休暇の流れで「更年期休暇」の導入も検討していただきたい。

・気になる症状は医療機関へ早めの受診を

 ひと昔前と比べれば、更年期症状を病気として認識し、治療対象になることが認知されたようには思う。だが、症状に気付いてすぐに受診する人は少なく、市販薬などを試してみたものの効果がなく、最後の砦として医療機関を受診されるようで、「もっと早く受診すればよかった」という声は非常に多い。
 症状の程度によっては、サプリメントなどで効果が得られる場合もあるが、目安として1ヵ月間試して効果が感じられなければ、医療機関を受診して頂きたい。その方が改善が早いと思われる。

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