武田薬品は28日、口腔用液ミダゾラム(SHP615)について、てんかん重積状態の治療剤として、国内製造販売承認申請したと発表した。てんかん重積状態は、迅速な治療を行わない場合、長期的な後遺障害に至る場合もあり、頬粘膜投与のミダゾラムは、緊急を要する治療において利便性および即効性を有する新たな治療オプションとして期待される。
今回の申請は、けいれん性てんかん重積状態を発症した18歳未満患者に対して同剤を頬粘膜投与した 2 つの国内P3相多施設共同介入非無作為化非盲検試験(NCT03336645およびNCT03336450)の結果などに基づくもの。これらの試験において、同剤の有効性が認められ、安全性に大きな問題はなかった。
ミダゾラムは、合成イミダゾベンゾジアゼピン誘導体で、催眠、鎮静、麻酔、抗不安などの作用に加え、抗けいれん作用を有する。速効性があり、持続静脈内投与も可能なため、多くのてんかん重積状態の患者に使用されていた。2014年には、静脈投与によるてんかん重積状態に対する治療薬として承認された(他社製品)。
また、海外において、ミダゾラム頬粘膜投与は、既に非静脈経路の薬剤として広く繁用されており、米国てんかん学会および英国NICEのガイドラインでも、小児てんかん重積状態初期治療における推奨薬剤の一つに記載されている。
ミダゾラムは、てんかん重積状態を発症した患者に対する頬粘膜投与用プレフィルドシリンジ製剤であり、医療機関内外で使用できる薬剤として、BUCCOLAMの製品名で、EU加盟27カ国、イギリスなど33カ国で承認されている(2020年2月現在)。日本では、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議での協議を踏まえ、てんかん重積状態の治療薬として開発を進めてきた。
なお、同剤は本年 2 月 13 日付で、厚生労働省より「てんかん重積状態」を対象として希少疾病用医薬品に指定されている。
てんかん発作とは、同時に発生した脳ニューロンの異常な過剰発射に由来する一過性の徴候および/または症状と定義されている。 てんかん発作が持続する場合や連続して発生する場合、文字通り発作の連続状態を意味するてんかん重積状態の危険性が高まる。
国際抗てんかん連盟(ILAE)は、てんかん重積状態を「発作がある程度の長さ以上に続くか、短い発作でも反復し、その間の意識の回復がないもの」と定義しており、発作が5分以上持続する場合、速やかに治療を開始する必要があるとしている。
初発てんかん重積状態の年間発症率は小児人口10 万あたり42人であり、日本の0~17歳人口から推計すると、年間約 8000人の初発てんかん重積患者が存在すると推定される。