医療施設向け搬送ロボットが郡山市チャレンジ新製品に認定 ケイエスエム

医療施設向け搬送ロボット

 ケイエスエム(福島県郡山市)の「医療施設向け配送&案内ロボット」が郡山市チャレンジ新製品に認定され、23日に授与式が行われた。2023年度郡山市チャレンジ新製品認定事業は、本年5年4月10日から19日まで認定申請を受け付け、9件の申請があり、外部専門家らによる審査を経て9件全てが同チャレンジ新製品として認定された。
 ケイエスエムとプードゥ・ロボティクス(中国)の飲食店向け配膳ロボットを改良した「医療施設向け配送&案内ロボット」は、医療従事者の搬送にかかわる業務改善を目的に開発されたもので、病院内のカルテや医療器具を受付や洗浄・滅菌場所など指定した場所に運搬する。
 ケイエスエムでは、金型事業部、メディカル事業部、開発・販売の事業部で事業を展開。今回のプロダクトと金型事業部と開発・販売事業部で培ったネットワークを活かし『オープンイノベーション』によるものづくりを進め市場ニーズの解決を目指している。
 療現場では、少子高齢化に伴う患者数の増加に対し、医療従事者の確保が追いつかず、配膳カートや薬剤運搬カートなどの病院内の搬送業務に加え、清掃や警備等にも多くの労働力が割かれているため、慢性的な人手不足が課題となっている。
 また、感染症対策のため入院患者への面会が制限される中、医材や物品の搬出入で多くの業者が病院内外を行き交うため、衛生面やセキュリティ面での不安の声が上がっている。
 こうした課題を解決するため同社では、病院内での搬送をニーズととらえ、医従事者、看護師の院内における運搬、搬送の効率化を図ることで、より患者に寄り添った医療提供の実現を目指している。
 ケイエスエムは、2021年から医療用カートにおける国内トップシェアであるサカセ化学工業と共同で、医療施設向け搬送&案内ロボットの開発をスタートさせた。
 開発初期段階における2021年11月7日には、郡山市との連携により、ふくしま医療機器開発支援センター、開所5周年記念イベントでAGVの自動走行を披露し、来場者の意見を集約した。
 さらに、同センターが主催する「製品コンセプト検討委員会」で同製品に対する医療従事者へのヒアリングが実施され、医療福祉機器産業協議会会員であるケイエスエムも参加した。
 同コンセプト検討委員会では、県内外の専門技士会(臨床工学技士)の会員から意見が寄せられ、2023年3月にも同様の検討委員会が実施された。
 改良についても実際に使用する看護師からの意見を集約すべく2022年9月にメディカ出版社(大阪府)へ委託し、看護師への搬送、運搬に対してのニーズヒアリングとアンケートを実施した。

■どちらでもない 24人 12%
■感じていない  56人 28%
■感じている   120人 60%

 その結果、約6割強の医療従事者が運搬、搬送に課題があることが判明した。検体によっては、手搬送をしなければならないものがあるものの、業務が多忙だと手搬送ができないため、検査結果が遅れて全体の業務が滞る場合があり、医療施設向け搬送ロボットの開発によりその改善が期待される。(救急救命センター勤務)
 また、看護師でなくてもできる業務に時間を取られている現状がある。加えて、薬剤も定期時間のみ薬剤部クラークが配送しているが、他はなかなか協力が得られずエアシューターもないため、同ロボットの活用が望まれる(看護部)
 その他、「検体の搬送、診療情報提供書など書類の搬送にも役立ちそう」(呼吸器科,消化器科,呼吸器外科)、「薬品を安全に運べない時、衛生材料が重く身体に負担だが解決できそう」(手術室)などの声が寄せられた。
 ケイエスエムの医療施設向け搬送ロボット(AGV)は、既に本年4月に神奈川県の「宝歯科」、群馬県の医療法人社団「絆尚会」の2施設で運用を開始している。
 具体的な使用方法としては、「手術器械の使用後の洗浄・滅菌室迄の搬送業務(現在までは医療従事者が搬送実施)」や「施術後のカルテの受付迄への搬送業務」などが挙げられる。
 同社では、今回の郡山市でのチャレンジ認定支援をきかっけに、さらなる医療従事者の意見を取り入れて製品の改良を行い、医療従事者への業務効率化を提案していく。
 この業務改善提案が、患者にとってのより良い医療の提供につながるように福島県からの事業推進を図る。

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