住友ファーマは31日、ライブ配信による2023年度第1四半期決算説明会を開催し、野村博社長が統合失調治療薬「ユーロタロント」のP3試験主要評価項目未達について、「共同開発中の大塚製薬とともに次のステップを決定するための更なるデータ解析を進め、今後FDAと協議する」方針を改めて強調した。
ユーロタロントの開発遅れに伴う「中期経営計画2027(2023-2027 年度)」への影響についても、「本中計中のユーロタロントの貢献はそんなに大きいものではないので、目標値などの修正はない」と言い切った。
また、米国で特許切れした大型主力品ラツーダ(非定型抗精神病薬)に代わる戦略品のジェムテサ(過活動膀胱治療剤)、オルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤、マイフェンブリー(子宮筋腫・子宮内膜症治療剤)の第1四半期の進捗状況にも言及。「第1四半期で想定していた売上高に対して、ジェムテサ(87億円)は89%、オルゴビクス(93億円)は106%、マイフェンブリー(18億円)は60%強の達成であった」と報告。
その上で、「ジェムテサの年間目標値(470億円)は達成できる見込みにある。マイフェンブリーだけ弱含みだが、今行っている営業施策が効果を発揮することを期待している」と力を込めた。
野村氏は、利益面についても「オルゴビクスとマイフェンブリーは、コ・プロモーションしているファイザーと折半なので想定通り」と語った。
住友ファーマでは、2023年度第1四半期において米国グループ会社の再編を完了し、7月1日に住友ファーマアメリカ(SMPA社)を発足させた。
SMPA社は、米国グループ会社7法人(サノビオン社、スミトバント社、マイオバント社、ユーロバント社など)の機能と人材を集約。再編により、2023年度末までに北米総人員数は約500人削減、コストシナジー(販管費、研究開発費)として、2023年度に約2.6億ドル、2024年度に約4億ドル削減を見込んでいる。
一方、ユーロタロントのP3試験については、DIAMOND 1試験および DIAMOND 2試験において主要評価項目であるPANSS合計スコアの減少が、プラセボ投与群で-19.3、-14.3といずれも高値を示し、同剤投与群との比較で有意差を示すことができなかった。
木村徹代表取締役専務執行役員は、「プラセボ投与群のPANSS合計スコアの減少は、通常-10程度が一般的であるが、今回高くなった要因としてCOVID-19の影響が示唆されている。プラセボ群の数値が高くなった他の要因の解明も含めて詳細なデータ解析を継続しており、次のステップを決定する」と説明。
さらに、「大塚製薬とともに、このままFDAとの協議のみに委ねるのか、別の試験をするのかも含めた様々なオプションを検討している」と補足した。
木村氏は、現在実施しているマイフェンブリーの営業施策についても、「今、割引率の問題に取り組んでおり、今後特に子宮内膜症での売上伸長を見込んでいる」と説明。
その上で、「子宮筋腫を有する女性にターゲットを絞っていく。セールスレップの配置も含めてこれまでのやり方を少し変えていくことで、マイフェンブリーの需要を掘り起こしていく」と強調し、「第3・第4四半期でその効果が表れてくることを期待している」と訴求した。