共有結合型薬剤の利点に着目した新規反応基開発の共同研究開始 大鵬薬品と九州大学

 大鵬薬品と九州大学は26日、標的タンパク質との共有結合型薬剤創製のための新規反応基の開発を目的とした共同研究を開始したと発表した。共有結合型薬剤は、その作用メカニズムにより、従来の可逆的薬剤と比較して、薬効の増強および作用時間の延長などが期待できる。
 大鵬薬品では、標的となるタンパク質に存在する特定のアミノ酸(システイン)と共有結合する薬剤の創製を目的としたシステイノミクス創薬(共有結合型薬剤創製技術)を推進してきた。

共有結合型薬剤とは:標的タンパク質と共有結合を形成してその機能を不可逆的に制御する医薬品。タンパク質のポケットに結合する部分 (リガンド) と特定のアミノ酸に共有結合する部分(反応基)から構成されている。
 

 システイノミクス創薬は、システインを有する多様な標的タンパク質に対して共有結合型薬剤を連続的に生み出すための大鵬薬品独自の創薬技術である。システイノミクス創薬基盤は、標的タンパク質データベース、共有結合型化合物ライブラリー、各種化合物評価システムなどから構成され、これまでに複数の自社パイプラインを創製した実績があり、2022年にはFGFR阻害剤の承認を米国で取得している。
 一方、九州大学では、共有結合型薬剤の利点に早くから着目し、独自の新規反応基の開発に取り組んできた。これまでに、同反応基を用いたがん治療薬や感染症治療薬の開発を行い、強い薬効と優れた標的選択性を併せ持つ複数の共有結合型阻害剤を見いだすことに成功している。
 大鵬薬品と九州大学は、両者が得意とする創薬技術を融合させ、特定のアミノ酸に対する新規反応基の開発に関する共同研究契約を本年3月に締結した。この共同研究により、標的タンパク質の拡張や新しい共有結合型薬剤の提供につながるものと期待される。

◆相良武大鵬薬品取締役 開発・MA 部門管掌、研究部門担当のコメント
 九州大学との共同研究を通してシステイノミクス創薬を拡張することで、これまで創薬が困難とされていた疾患に対する薬剤を創出することが可能になると考えている。
 我々は、引き続きシステイノミクス創薬を推進し、アンメット・メディカル・ニーズの高い領域に新薬を届けられるよう尽力していく。

◆王子田彰夫九州大学大学院薬学研究院教授のコメント
 大鵬薬品との共同研究により我々が行っている共有結合型薬剤の創薬化学研究をさらに発展させることが可能になると考えている。大学研究人の持つ発想力を生かし、大鵬薬品との協働を通じて、優れた医薬品の創出に貢献できるよう努力していく。

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