アッヴィは17日、ウパダシチニブについて、中等症から重症のクローン病を有する成人患者の治療薬として欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品委員会(CHMP)より肯定的見解を取得したと発表した。
対象は、既存治療または生物学的製剤で効果不十分、効果減弱または不耐容であった中等症から重症の活動性クローン病を有する成人患者。
クローン病治療薬としてのウパダシチニブの承認申請は、2つの寛解導入療法試験(U-EXCEEDおよびU-EXCEL試験)、ならびに1つの維持療法試験(U-ENDURE試験)から得られたデータに基づくもの ウパダシチニブ群の患者は、寛解導入療法試験では1日1回45 mgを投与され、維持療法試験では1日1回15 mgまたは30 mgを投与する群のいずれかに無作為に割付けされた。
3つのP3試験すべてにおいて、プラセボ群と比較して、ウパダシチニブ群で有意に高い割合の患者が、主要評価項目であるSF/APに基づく臨床的寛解[1日の平均排便回数(SF)が2.8回以下かつ腹痛(AP)スコアが1.0以下であり、かついずれにもベースラインからの悪化が認められない場合]および内視鏡的改善[簡易版クローン病内視鏡スコア(SES-CD)が寛解導入療法のベースラインから50%超低下した場合]を達成した。
また、3試験のすべてにおいて、ウパダシチニブ群で統計学的に有意に高い割合の患者が、主な副次評価項目である内視鏡的寛解(SES-CDが4以下でかつベースラインから2ポイント以上低下し、かついずれのサブスコアも1を超えない場合)を達成した。
さらに、ベースライン時にSES-CDの潰瘍面のサブスコアが1以上であった患者では、12週時および52週時において、ウパダシチニブ群で多くの患者さんの同スコアが0となった(名目上のp値<0.001)。潰瘍の非発生または消失とともに内視鏡所見の改善が認められることは、粘膜治癒に関連している。
クローン病におけるウパダシチニブの安全性プロファイルは、これまでに確認されているウパダシチニブの安全性プロファイルとおおむね一致していた。
重篤な感染症を含む重篤な有害事象の発生率はウパダシチニブ群とプラセボ群で同様であった。悪性腫瘍、主要心血管イベント、静脈血栓塞栓性イベントおよび消化管穿孔の報告は低頻度であった(100患者年あたり1.0件未満)。
ウパダシチニブは、EUにおいて、X線基準を満たす体軸性脊椎関節炎、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎、関節症性乾癬、関節リウマチおよび中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎を有する成人患者、ならびにアトピー性皮膚炎を有する成人および青年患者の治療薬として承認されている。
英国では、クローン病治療薬として2023年1月に承認された。EUでは、ウパダシチニブの安全性および有効性について評価中の段階である。
◆Roopal Thakkarアッヴィsenior vice president, development, regulatory affairs兼chief medical officer(M.D.)のコメント
今回、ウパダシチニブについて、クローン病治療薬としてCHMPによる承認推奨を得たことは、この疾患に苦しむ患者さんの生活に変化をもたらし得るJAK阻害薬では初の1日1回経口薬の提供の実現に向けた大きな一歩である。
炎症性腸疾患の患者さんに向けて、幅広い治療選択肢を提供できるよう、引き続き研究開発に真摯に取り組んでいく。
◆治験責任医師のJean-Frédéric Colombel M.D.(マウント・サイナイ・アイカーン医科大学内科学教授、炎症性腸疾患センター所長)のコメント
クローン病が与える影響は腸だけに留まらない。疲労などの全身症状や腸症状を引き起こし、社会的・情緒的機能にも影響を及ぼすと言われている。
臨床的寛解や内視鏡的改善などの重要な評価項目を達成する治療選択肢は、この疾患の困難な症状の管理、そしてQOL(生活の質)に関わる健康関連の転帰に変化をもたらす可能性がある。
ウパダシチニブは、コントロール不良の中等症から重症のクローン病の患者さんにとって有望な治療選択肢となり得る。ECの最終決定が待ち遠しい。