エンハーツを始めとするDXd-ADCのグローバル開発加速と売上伸長が最優先 奥澤宏幸氏が新社長の抱負

奥澤氏

 第一三共は31日、同社本社ビルで「会長・社長人事に関する記者会見」を開催し、真鍋淳社長兼最高経営責任者(CEO)と新社長に選出された奥澤宏幸取締役最高財務責任者(CFO)が会見。
 奥澤氏は、新社長就任の抱負として、「第5期中期経営計画(2021年度~2025年度)達成に向けて主力抗がん剤エンハーツを始めとするDXd-ADCのグローバル開発加速と売上伸長を最優先に取り組んでいく」考えを強調した。
 さらに、患者が心から待ち望んでいる確信的な治療を提供するために、「第一三共のサイエンス&テクノロジーの強み、統合データ解析基盤、がん領域でのデジタルセラピューティクスなどのDXの強みを最大限に活用するとともに、2030年ビジョンで想定するトータルケアエコシステムの構築にも貢献する」戦略を披露した。
 また、第一三共推進力として最も期待している事項として「グローバルレベルでの人的資本の充実」を挙げ、「ワンDSカルチャーの醸成」を訴えかけた。
 第一三共では、第4期中期経営計画(2016年度~2020年度)の最も大きな柱である主力抗がん剤3ADC(エンハーツ、Dato-DXd、HER3-DXd)の最大化について、ここまで想定以上の結果を出してきた。特に、エンハーツは乳がん治療にパラダイムシフトを起こし得る画期的な臨床試験データが得られ、様々な患者、治療ラインの適応取得が進みつつあり、急速に市場浸透している。
 エンハーツに続く他のADCにおいても、それぞれ極めて良好な臨床試験データが得られている。

眞鍋氏


 真鍋社長兼CEOは、「第5期中期経営計画の最終年度となる2025年度の経営目標である売上収益1兆6000億円、がん製品売上収益6000億円以上は、達成できるものと考えている」と明言。
 その上で、「中期経営計画に掲げる2025年度目標を確実に達成するため、さらなる経営体制、執行体制の強化を目的に社長兼CEOに奥沢CFOを任命した」と説明。奥澤氏の人柄については、「社内で否定する者が居ないくらい誠実である。目の前に課題があれば、必ず解決するための施策を実行してくれる」と述べ、大きな信頼を寄せた。
 奥澤氏は、1986年に三共に入社し、20代から30代にかけてヨーロッパの統括会社があるドイツに延べ8年間駐在し、降圧剤「オルメサルタン」上市などに携わった。帰国後は、社長直轄で旧三共と旧第一製薬の統合交渉もリードした。その後、経営戦略部や人事部などコーポレート部門を経験し、アジア、中南米事業の責任者を歴任後、2021年4月に現職のCFOに就任した。
 「2030年ビジョン、第5期中期経営計画についてはこれまでCFOの立場から強くコミットしてきたが、4月1日からは社長CEOの立場でさらに高い視点から眞鍋会長兼CEOとともにその実現と達成をリードしていきたい」と抱負を述べる奥澤氏。
 さらに、「第5期中期経営計画(2021年度~2025年度)達成に向けては、主力抗がん剤エンハーツを始めDXd-ADCのグローバル開発加速と売上伸長を最優先に取り組んでいく」考えを示し、「第5期中期経営計画の先を見据えて、現在の研究開発パイプラインの中からDXd-ADCに続く成長ドライバーを見極めることも重要課題であると認識している」と断言した。
 DXd-ADCに続く成長ドライバーについては、国内申請中の「新型コロナmRNAワクチン」を挙げ、「mRNA技術もその一つであると思っている」と期待を寄せた。
 第一三共の推進力となる人的資本の充実では、「エンハーツを筆頭とするDXd-ADCのパイプラインは、世界中の優秀な人材を引き付けている。グローバル共通の人事制度とシステムを整備し、経営戦略と人事戦略を連動させてグローバルな適所適材を実現する」と力説。
 その上で、「社員一人ひとりの多様性を尊重してグローバルな協業を促し、社員が成長し、高いエンゲージメントを持って活躍できる環境を整え、ワンDSカルチャーの醸成を推進する」決意を表明した。

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