京都府薬剤師会は22日、京都市内のホテルで「令和5年新年のつどい並びに会員各賞受章祝賀会」を開催した。
新年のあいさつの中で河上英治会長は、「新型コロナの第8波が年末年始より始まり、自宅療養への対応や、抗原検査キットの府民への無償配布で150軒の薬局が協力し、3万キットを配布した。コロナ禍において薬局は、医療インフラとしての機能を発揮できた」と報告。
さらに、「現在、薬剤師が抱えている様々な問題に対しては、チェードラッグ協会や保険薬局協会との連携が必要となる。職能に関しては病院薬剤師との連携が不可欠で、当会の利点が活かせる」と明言。
その上で、「調剤業務の一部外部委託など、利便性と安全性を天秤にかけた議論では、安全性の重要性について国民の誰もが納得するエビデンスを示さねばならない。当会ではこのエビデンス構築についての事業計画に盛り込んでいる」と訴求した。
河上氏は、後発品を始めとする医療用医薬品の供給不足問題にも言及し、「この困難の最中にも不採算性を理由に製造を中止する後発品メーカーがある」と現況を重視。
加えて、「大手メーカー(日医工)の大量品目の製造中止も聞いており、ますます供給不足を助長するものと考えられる」と強調した。
その要因として、「製造中止は、現在、昭和46年の厚生省薬務局長通知により届け出するのみで可能である」と指摘し、「安定供給のためには法律を改正して、製造中止を厚労省の許可制にしたり、補助金などを支給してメーカーの製造中止を止める必要がある。ここにおられる議員の先生方にもこの場をお借りしてお願いしたい」と訴求した。
最後に、「今年は兎年なので、様々な困難を皆さんと一緒にホップ、ステップ、ジャンプで立ち向かっていきたい」と呼びかけた。
続いて、西脇隆俊京都府知事、門川大作京都市長、西田昌司参議院議員、神谷政幸参議院議員らが来賓祝辞を述べた。祝辞の概要は次の通り。
◆西脇知事
年末年始は、この3年間一貫して皆さんに、休日における薬剤供給体制の確保、昨年末は抗原抗体キットの無料配布協力にご協力頂き乗り越えられた。
岸田総理からは、現在の感染状況を踏まえて新型コロナをこの春から5類相当に引き下げる検討を行うように指示があった。
社会経済活動と感染防止の両立を目指して、日常を取り戻していく重要な時期である。引き続き協力をお願いしたい。
◆門川市長
3年続くコロナ禍において、1週間に1万人を超える感染者が出る年末年始の始まりであった。こうした中、京都市では、149薬局に開けてもらい、3万を超える検査キットを配布して頂いた。京都においては、府、市、医療機関がしっかりと連携していることが、パンデミックに対応できていると痛感している。
医療機関に掛かり難いコロナ禍において、セルフケアの重要性が指摘されており、かかりつけ薬局、健康サポート薬局性がより認識されたと思われる。医療のより充実した街作りのためには、薬剤師の役割はより重要となる。これからもしっかりと連携を取っていきたい。
◆西田参議院議員
国債は借金ではなく通貨発行
後発医薬品の供給不足が問題になっている。医療費引き下げが財務省の1丁目1番地の行政改革になっているが、これは間違いである。
医療費、社会保障を税金で賄っていると言っているのも事実ではない。税金では賄いきれず、国債発行、いわゆる通貨発行によって賄っている。「国債発行は借金である、子供・孫の代までこの借金を残してはならない」との議論をすれば皆さん「そうか」と思われるが、実際は、孫、子供の代になっても借金は返していない。今、国債は1000兆円あるが、この金額はお金を出した記録だと考えて頂ければよい。
国債を借金だと言うから話がおかしくなる。国が国債という通貨を発行して、医療機関などを通じて国民側にお金を供給している。医師会、歯科医師会、薬剤師会側にも、たくさんの雇用を生み税金を納めて貰っている。国債は、社会を回す循環の仕組みになっているだけで、借金ではない。
私は、この理論を防衛費増強の特命委員会の中で主張し、財務省にも納得して貰った。防衛費の増税も間違いで、少なくとも今年、来年で皆さんの税金が上がることはない。大企業・法人税率を1%弱上げる話が検討されているだけで、一般市民に影響する増税の議論ではない。社会保障も含めて、正しい貨幣感とエビデンスに基づいた政策を行わねばならない。
◆本田顕子参議院議員
薬剤師の皆様には、年末年始も変わりなく地域住民の皆さんに必要な医療提供を行っていただいたことに敬意と感謝を表したい。感染症対策は転機に差し掛かってきた。
市民や医療従事者、行政にとって最善の選択をするには、現場に耳を傾けて丁寧な調整と十分な説明をする必要がある。本日は、新幹線トラブルで出席できなかったが、私もしっかりと対応していきたい。
◆神谷参議院議員
本日の会員各賞受賞者の中には、学校薬剤師として活躍された先生方も多く、自身の10年近くの学校薬剤師活動を思い出した。
学校薬剤師の職務の一つに「薬物乱用防止教育」がある。薬物乱用防止は、社会ニーズが高くなっていくものと考えられる。若者の間で一般用医薬品をオーバードーズしたり、若年層の間での大麻使用が広がっている。
今回の通常国会で大麻取締法が改正になり、将来的に大麻成分由来の抗てんかん薬が承認された場合、「大麻は安全」という間違った情報が広まる可能性がある。麻草などに含まれる成分の一種のCBD(カンナビジオールと、治療薬で使用する大麻成分とは違うことをデータでしっかり示せるのは薬剤師である。地域の若者の健康と安全をしっかりと守って行く上においても京都府薬の発展を祈念したい。
後発品を中心とする医療用医薬品不足や薬価問題など、皆さんからの現場の意見をしっかり聞いて対応できるように国政で努力したい。