第一三共は8日、HER2に対する抗体薬物複合体「エンハーツ」について、HER2陽性の再発・転移性乳がんの二次治療を対象としたグローバルP3試験(DESTINY-Breast03)において、全生存期間でT-DM1(トラスツズマブ エムタンシン)と比較して統計学的に有意に死亡リスクを36%改善したと発表した。併せて三次治療を対象としたP3床試験(DESTINY-Breast02)結果も公表した。
DESTINY-Breast03試験、DESTINY-Breast02結果は、米国サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で報告された。また、DESTINY-Breast03のデータは、医学雑誌「The Lancet」に掲載された。
DESTINY-Breast03では、有効性については、主要な副次評価項目である全生存期間において、エンハーツはT-DM1(トラスツズマブ エムタンシン)と比較して統計学的に有意に死亡リスクを36%改善した。
全生存期間の中央値には、両群ともにまだ到達しいないが、24ヶ月時点における生存率では、T-DM1投与群の69.9%に対し、同剤投与群は77.4%であった。
また、追加のフォローアップとして、主要評価項目である無増悪生存期間の中央値は、T-DM1投与群の6.8ヶ月に対し、エンハーツ投与群は28.8ヶ月であった。客観的奏効率は、T-DM1投与群の35.0%に対し、同投与群は78.5%であり、奏効期間の中央値はT-DM1投与群の23.8ヶ月に対し、同剤投与群は36.6ヶ月であった。
安全性では、新たな懸念は認められなかった。グレード3以上の有害事象は本剤投与群で47.1%に認められ、主なものは、好中球数減少(16.0%)、貧血(9.3%)、血小板数減少(7.8%)、悪心(7.0%)等であった。
間質性肺疾患(ILD)については、15.2%(39名)がILD 外部判定委員会により同剤と関連のあるILD と判定された。大部分が低グレードであり、グレード3が2名、グレード4およびグレード5(死亡)は認められなかった。
DESTINY-Breast02では、有効性については、エンハーツ投与群は治験医師選択薬投与群と比較して、主要評価項目である病勢進行または死亡リスクを64%低下させた。
無増悪生存期間の中央値と全生存期間の中央値は、同剤投与群において17.8ヶ月と39.2ヶ月、治験医師選択薬投与群において6.9ヶ月と26.5ヶ月であり、どちらも統計学的に有意な改善がみられた。
また、エンハーツ投与群は、治験医師選択薬投与群と比較して死亡リスクを34%低下させた。
安全性については、新たな懸念は認められなかった。グレード3以上の有害事象は同剤投与群で41.3%に認められ、主なものは、好中球数減少(10.6%)、貧血(7.9%)、好中球減少症
(7.7%)等であった。
ILDについては、10.4%(42名)がILD 外部判定委員会により本剤と関連のあるILDと判定された。大部分が低グレードであり、グレード3は3名、グレード4は0名、グレード5(死亡)は2名であった。
第一三共とアストラゼネカは、エンハーツにより、HER2陽性の再発・転移性乳がん患者の二次治療および三次治療に貢献していく。