熱中症シーズンで朝食抜きやダイエットが危険なワケ 教えて!「かくれ脱水」委員会委員長服部益治氏

服部氏

 日本地で早くも梅雨明け宣言が出され、6月から真夏日が続いている。こうした中、教えて!「かくれ脱水」委員会委員長の服部益治氏(枚方療育園医療福祉センターさくら院長・兵庫医科大学特別招聘教授)が、熱中症シーズンにおける朝食抜きやダイエットが危険なワケを解説した。 
 我々は、普段の食事によって1日に必要な水分(水+電解質)の約半分を摂取している。「かくれ脱水」JOURNALでは、過去にも紹介しているが、残念ながら、まだ一般には浸透していないのが現状だ。
 水と電解質の摂取によってつくられる体液は、日々入れ替わり我々の健康を維持している。脱水症や熱中症のリスクを避けるだけでなく、健康を維持するためにも、食事から摂れる水分は重要な役割を果たしている。

16%の人しか知らない!“水分量の半分は食事から”

 我々の1日に必要な水分(水+電解質)は、一般的に1500ml〜2500ml。そのうち約半分の量を、食事から摂取している。だが、この事実は、残念ながらまだあまり知られていない。

出典:株式会社大塚製薬工場大塚製薬工場
カラダの水分(体液)や脱水症・熱中症の認識に関する実態調査(2022年)


 2022年1月に実施された大塚製薬工場のインターネット調査(対象:20歳〜69歳 1030名)によると、「1日に必要な水分の約半分は食事から摂っている」「食事量の減少により脱水症になり得る」の事柄について、「知っている」と答えた人々は、それぞれ約16%、18%であった。
 また、健康な状態ではカラダに入ってくる水分量と出ていく水分量が同じに保たれていることへの認識も13.6%と低いようだ。
 食事は、栄養とカロリーを摂るものと捉えている人が多いのではないだろうか。実は、生命維持に直結する水と電解質の摂取は、二の次というのが実情だ。

小児と高齢者の、食事からの水分摂取の重要性


 食事による水分の摂取が、1日に摂取する水分量の約半分を占めていることを知れば、様々なことに気づく。たとえば、高齢者が熱中症になりやすい、脱水症になりやすいことには幾つかの理由があるが、なかでも「カラダの水分貯蔵庫である筋肉の量自体が減少傾向に向かう」現象と、「食事量の減少に伴う水分摂取量の低下」が大きな要因である。カラダに蓄えられる水分量が少なくなっている高齢者は、1日3回の食事とこまめな水分補給が特に重要だとわかる。
 また、カラダの生理機能が十分に発達していない小児は、皮膚や呼吸から自然と失われる水分量(不感蒸泄)が多く、汗腺の発達も未熟で体温調節がうまくできない。遊びなどに夢中になりやすく、体の異変や喉の渇きに気づきにくいことも脱水状態を進める要因となる。意識的に水分摂取が必要な小児が、欠食することは、出来る限り避けるべきである。

水分視点で見る朝食の重要性

 年齢に関係なく、朝食抜きで早朝のクラブ活動に参加したり、仕事に出かけたりした人が脱水症や熱中症になりやすい。我々は、睡眠中にコップ1杯程度の汗をかいている。朝は、1日のうちでも、脱水リスクが高くなっている状態だ。それを朝食に含まれる水分によって補っているわけである。
 朝食の欠食により脱水状態になった場合は、集中力を欠如させることもわかっている。表立った脱水の症状が表れなくとも、工場などで働く人にとっては事故の原因となったり生産性に影響したりすることが考えられる。学生なら、勉強への悪影響があるだろう。
 近年、健康を考える上で、5大栄養素の役割や摂取カロリーについて意識する人は増えているのではないだろうか。栄養素については、非常に多くの種類のサプリメントが販売されているし、肥満やシェイプアップなどを意識したカロリーコントロールや、健康を意識したさまざまな食事制限法も、世代や性別を超えて実践している人がおられる。

熱中症や脱水症対策には、3度の食事をちゃんと摂ることが重要。

 3度の食事により水分と塩分などの電解質を適時適切に摂ることで、一日健やかに過ごせる基本ができると考えられる。
 最近は、1日一食や二食といったライフスタイルもトレンドになっている。若い世代には朝食抜きが定番化している層もあるといわれている。1日の食事量の増減ですぐに栄養不良になるのはそう多くはないと考えられる。だが、朝食を抜いた場合などは、食事量の減少にともなう脱水症のリスクが高まっていると考えられ要注意である。

場合によっては、経口補水液を活用する

せっかく健康のために行っている食事量の調節も、気を付けないと脱水症リスクが高くなり、季節によっては熱中症リスクも高めてしまうのでは本末転倒だ。
 健康維持や美容のために食事量を調節するという人も、極端に量を減らしたり欠食したりしてしまうと、自然に食事から摂れるはずの水分がとれず、体水分量が減少し、本来の水分出納バランスが崩れてしまうことを知ろう。
 健康増進の目的で食事量を減らす場合や止むを得ず食事を抜いてしまう場合などは、いつも以上に食事以外の水分補給に気を使って頂きたい。
 その場合の水分補給は、“水+電解質”を意識すること。1日の出納を考えた体水分マネジメントを心がけよう。
 事量の調節で脱水症になった場合は、脱水した体に必要な水と電解質をバランスよく含んだ経口補水液の摂取が役に立つと思う。その備えとしての経口補水液を常備しておくと良いだろう。

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