長瀬産業は、動物由来成分・DMSO不含の細胞凍結保存液「NAGASE’s Cryopreservation Solution-1」(ナガセ・クライオプリザベーション・ソリューション1)を開発し、4月より販売開始予定にある。同製品は、3月9日~11日まで開催される「第8回再生医療EXPO大阪」にサンプルを参考出展する。
細胞凍結保存液は、再生医療などに使う細胞を安全に管理・保存するためのもの。近年、細胞凍結保存液に含まれる成分が細胞に与える影響や再生医療用途への開発ニーズから、成分由来が明確な保存液や、動物由来の成分を含まない保存液の開発が進められている。
同製品は、市場の課題抽出に強みを持つ長瀬産業の商社機能、グループ会社における原材料の製造機能、ナガセR&Dセンターの処方開発機能など、NAGASEグループの機能を掛け合わせて開発。
ケミカリーディファインド(化学的に定義された既知成分からなる)であり、かつ動物由来成分・DMSO不含であるにもかかわらず、高い凍結保存性能を保有している点が特徴だ。
また、従来の製品に比べて、凍結融解後における細胞生存率の低下も少なく、細胞の大量サンプル処理やその自動化でも取り扱いやすい処方設計となっており、長時間の培養などでナイーブとなった細胞への取り扱いや自動化ニーズに適応する。
同製品は、長瀬産業で開発・処方検討を行い、国内で生産を行う。発売後は、主に国内外の再生医療研究機関、クリニック、製薬メーカーの研究機関向けに販売展開する。
原材料メーカー、原材料取扱商社、処方開発会社として、NAGASEグループは、同製品の販売展開を通じて、今後も伸長する再生医療分野における研究の質と作業性の向上に貢献していく。
製品仕様は、次の通り。
◆製品コード:NCS-1
◆製品名:NAGASE’s Cryopreservation Solution -1
◆メーカー名:長瀬産業
◆製造場所:日本
◆保存条件:冷蔵(2~10℃)
◆使用期限:製造後2年
◆容量:100 mL
DMSO(ジメチルスルホキシド):一般的に細胞に対してよく使用される有機溶媒の一つ。細胞障害性は有機溶媒の中では低いが、低濃度でも報告例が挙がっている。
NAGASE’s Cryopreservation Solution-1 (NCS-1)および従来の保存液(10 %-DMSO含有)を用いてヒト脂肪由来間葉系幹細胞 (AT-MSC)を凍結保存後(-80 ℃で1週間)、培養したところ、NCS-1はDMSO不含であるにもかかわらず、本系ではDMSO含有保存液に劣らない起眠直後の細胞生存性(図1:NCS-1) と経時的な増殖性を⽰した(図2:NCS-1)。(2022年1月時点 ナガセR&Dセンターにて調査)
NCS-1 および従来の保存液(10 %-DMSO含有あるいは不含)を用いてヒト骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)を継代して凍結保存後(-80 ℃で2週間) 、細胞生存率を算出した。NCS-1 はDMSO不含であるにもかかわらず、本系ではDMSO含有保存液に劣らない保存性能を示した。さらに、同条件で処理した被検群を融解してそのまま室温で3時間静置後に細胞生存率を算出した。NCS-1 は他のDMSO含有および不含保存液と異なり生存率の低下がほぼないことが確認された(図3:NCS-1)。保存液への長時間暴露において低ストレスであることがうかがわれた。(2022年1月時点 ナガセR&Dセンターにて調査)
NCS-1 および従来の保存液(10 %-DMSO含有あるいは不含)を用いて正常ヒト繊維芽細胞(NHDF)を過継代して凍結保存後(-80 ℃で4ヵ月)、細胞数を算出した。NAGASE’s Cryopreservation Solution-1 はDMSO不含であるにもかかわらず、本系ではDMSO含有保存液に劣らない結果が確認できた(図4:NCS-1)。また、一般的なDMSO不含保存液では細胞状態や保存期間によって保存性能がばらつく可能性が示唆された。(2022年1月時点 ナガセR&Dセンターにて調査)