日本イーライリリーは3日、2型糖尿病治療薬であるGIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ皮下注」(一般名:チルゼパチド)の薬価が、持続可能性特例価格調整の適用により8月1日付で25%薬価を引き下げられたことへの声明を発表した。
声明では、「今回の薬価引き下げは、画期的な医薬品に対する不当に不利益な対応である」と強調。さらに、「日本の薬価制度の予見可能性と安定性を損なう判断であり、予見性の低い日本市場は国際投資先としての魅力を失う」、引いては「ドラッグラグ・ロスが深刻化する」、「低薬価は、不適正使用の増加や、海外からの医療ツーリズムの拡大、さらには利益目的の買い占めや海外への転売といった追加リスクの発生し、日本の患者に安定供給できなくなる」などの警鐘を鳴らしている。その上で、日本政府に対して「公平で透明性が高く、持続可能な制度環境の整備の実現」を強く求めている。声明の全内容は次の通り。
日本イーライリリーは50年以上、イーライリリー・アンド・カンパニーとしては100年以上にわたり、日本の患者さんに革新的な医薬品を届けるため尽力してきた。そして日本市場の成長と期待、そして日本の患者さんに貢献するため、世界における主要な投資市場の一つとして、ドラッグラグ・ドラッグロスを解消するための世界同時開発・同時上市を実現してきた。さらに2022年以降、西神工場に270億円を投資している。
一方、当社は今回、マンジャロに対する持続可能性特例価格調整の適用が決定されたことに対し大きな懸念を抱いている。なぜなら研究開発や製造への長期的な投資の継続、革新的な医薬品の導入、そして新たな治療選択肢への患者さんによる迅速なアクセスを支えるためには、予見可能で透明性の高い政策環境が不可欠であるからだ。
近年の持続可能性特例価格調整を巡る動きは、日本の薬価制度の予見可能性を損なうリスクがあり、将来の投資判断にマイナスの影響を及ぼす可能性がある。薬価制度は、イノベーションの価値を適切に評価し、新たな治療への患者アクセスを確実に支えるものであるべきと考える。
今回の決定によって、マンジャロの薬価引き下げが大幅に、かつ想定されていた時期よりも大きく前倒しで実施されることになった。これは、想定を上回る多くの2型糖尿病のある人を支援することで極めて大きな価値をもたらし、結果として広く使用されるようになった画期的な医薬品に対する不当に不利益な対応であると考える。
今回の事例に限らず、日本では、医薬品が上市された後に適用される薬価制度のルールが十分な予告なく変更されることが少なくなく、またその内容は有効性の高い革新的な医薬品に不利益を与えるものとなっている。
そのような予見性の低い日本市場は国際投資先としての魅力を失うこととなり、結果として、ドラッグラグ・ロスが深刻化し、日本の患者さんが利用できる治療選択肢が他国に比べ限られてしまう可能性が十分に考えられる。
高市早苗内閣総理大臣の成長戦略ロードマップは、日本の世界トップクラスの公衆衛生システムをさらに強化し、イノベーションを重視する活力ある国内ライフサイエンス産業を育成し、次世代医薬品の実現を支える国際投資の主要な受け入れ先となるという明確なビジョンを示している。
しかしながら、今回の持続可能性特例価格調整の適用は、そのビジョンと整合していない。これは、日本の薬価制度の予見可能性と安定性を損なう判断であり、ライフサイエンス分野への投資獲得を巡る国際競争が激化する中、日本が革新的な医薬品をどれだけ重視しているのかについて懸念を抱かせるものだ。
日本におけるマンジャロの薬価は、すでにG7諸国の中で最も低い水準にある。さらに今回の薬価引き下げが行われることにより、日本のマンジャロの薬価は世界における同等規模の経済圏の中で最も低い水準となる。
このような低薬価は、不適正使用の増加や、海外からの医療ツーリズムの拡大、さらには利益目的の買い占めや海外への転売といった追加リスクの発生を助長することが十分に考えられる。結果として、日本国内で2型糖尿病治療のために既にマンジャロを使用し、治療の継続を必要としている患者さんに対して、安定的な供給ができなくなる可能性がある。
こうしたリスクを避けるためにも、日本イーライリリーは、マンジャロを真に必要とする2型糖尿病のある方々へ適切にマンジャロを提供できるよう、供給計画を慎重に精査し尽力していく。
同時に、日本の患者さんと医療制度の双方にとって真の利益となる、公平で透明性が高く、持続可能な制度環境の整備が実現されるよう日本政府および関係者の方々との対話を継続するとともに、日本から他国への医薬品の転売を厳格に規制する措置を速やかに講じていただけるよう日本政府に求めていく。また、当社は今回の決定がもたらす影響を慎重に評価しており、対応可能なあらゆる選択肢を検討している。
日本イーライリリーは、患者さんの安全を最重要事項として捉えており、患者さんが治療アクセスを損なうおそれのある政策上の課題解決に積極的に取り組んできた。今後も、日本政府および関係者の方々と協力しながら、患者さんの安全を支え、イノベーションを適切に評価し、患者さんが革新的な医薬品に継続的にアクセスできる公正で透明性が高く持続可能な環境の実現に取り組んでいく。
