好酸球性副鼻腔炎で真菌叢を発見し、アルテルナリアを術後再発予測因子と同定 福井大学医学部

術後再発に対する新たな診断戦略等に期待

 福井大学医学部の足立直人特命助教らの研究グループは9日、好酸球性副鼻腔炎(ECRS)における真菌叢の存在を新たに発見し、その中でアルテルナリアが術後再発の予測因子となることを同定したと発表した。
 従来、ECRSは、真菌感染を伴わない疾患と考えられてきたが、次世代シーケンサーを用いた高感度の解析により、ECRS患者の鼻腔内に真菌叢が常に存在することを初めて発見したもの。
 さらに、ECRS 患者において、同真菌叢の一つである「アルテルナリア」が検出された場合、検出されなかった場合と比較して内視鏡下鼻副鼻腔手術後の再発リスクが有意に高く、アルテルナリアが独立した術後再発の予測因子であることを同定した。
 アルテルナリアは、環境中に広く分布する糸状菌(カビ)の一種で、アレルギー性疾患の原因抗原として知られており、気管支喘息の増悪との関連が報告されている。気道上皮細胞を刺激して IL-33などの炎症性サイトカインの産生を誘導し、2型炎症を促進することが知られている。
 これらの研究成果は、難治性のECRSの術後再発に対する新たな診断戦略の確立および個別化医療の実現に向けた重要な一歩となる。
 ECRSは、鼻腔内にポリープ(鼻茸)が多発し、重度の鼻づまりや嗅覚障害をもたらす難治性の疾患である。インターロイキン(IL)-5やIL-13などのサイトカインが過剰に産生される2型炎症が原因とされており、内視鏡下鼻副鼻腔手術による治療後も高率に再発する。近年、生物学的製剤などが治療に用いられているが、術後再発を予測するバイオマーカーは十分に確立されていなかった。
 一方で、ECRSは従来より真菌が関与しない疾患として分類されてきた。だが、真菌は上気道粘膜においてT2炎症を誘発することが知られており、ECRS の病態への関与が疑われていた。従来の培養法では感度に限界があり、鼻腔内に真菌が常在するか否か、また真菌とECRS術後再発との関連は未解明のままであった。
 今回、研究グループは、次世代シーケンサー(NGS)を用いた真菌内部転写スペーサー(ITS)領域の解析により、134 名の慢性副鼻腔炎患者(ECRS 81 例、非 ECRS 53 例)および対照群34名を対象に鼻腔内真菌叢を網羅的に解析した。
 その結果、ECRS を含むほぼ全群において真菌が常在することが示され、・要ECRS・非 ECRS を問わずほぼ全対象者において真菌が検出され、Malassezia・カンジダ・Cladosporium・Aspergillus・アルテルナリア・Trametes・Schizophyllumの7属をコア真菌叢として同定した(図1)。なお、ECRS 群と非 ECRS 群の間で真菌叢の多様性や菌属構成に有意差は認められなかった。

 ECRS患者において Kaplan-Meier法を用いた術後無再発生存率の解析を行ったところ、アルテルナリア検出例(約 20%)では非検出例と比較して有意に再発率が高く(P < 0.001)、カンジダ検出例でも有意な再発傾向が認められた(P = 0.015)。
 さらに多変量Cox回帰分析では、アルテルナリアのみが ECRS の術後再発における独立した予測因子(ハザード比 2.81、P = 0.002)であることが示された(図2)。

 アルテルナリア検出 ECRS 群では非検出群と比較して真菌多様性、真菌叢の構成も有意に異なることが示された。またカンジダ・アルテルナリア・Cladosporiumの有意な増加が認められ、アルテルナリアが真菌叢の構成を変化させるドライバーとして機能する可能性が示唆された。
 さらに、アルテルナリア検出患者の鼻ポリープ組織では IL-33 の遺伝子発現が非検出群と比較して有意に高く(P = 0.037)、アルテルナリアが IL-33 シグナルを介して T2 炎症を増悪させる可能性が示唆された(図2)。
 また、ECRS 患者においてアルテルナリア検出例では術後無再発生存率が有意に低く(P < 0.001)、多変量解析でもアルテルナリアのみが術後再発の独立した予測因子(ハザード比 2.81)であることが判明した。
 さらに、アルテルナリア検出例では鼻ポリープ内のIL-33発現が有意に高く、Alternaria が上皮サイトカインIL-33を介して2型炎症を増悪させ、鼻ポリープの再発を引き起こす可能性が示唆された。
 同研究により、ECRS の術後再発において アルテルナリアが重要な役割を果たすことが明らかになった。今後は、術前に アルテルナリア検出を評価することで ECRS術後再発ハイリスク患者を事前に同定し、個々の患者の病態に応じた治療戦略(個別化医療)を立案できる可能性がある。
 また、アルテルナリア潜在型 ECRSという新たな臨床表現型の確立に向けた診断基準や治療管理方法の検討が期待される。将来的には、アルテルナリアが誘発する炎症を標的とした新規治療薬の開発にもつながるものと期待される。

タイトルとURLをコピーしました