岐阜大学大学院医学系研究科 糖尿病・内分泌代謝内科学の恒川新教授らの研究グループは、新規糖尿病治療薬「ツイミーグ」(一般名:イメグリミン、販売:住友ファーマ)の実臨床における効果と安全性を検証し、幅広い年代に対する血糖値改善効果と安全性を確認した。
ツイミーグは、インスリンの働きを助けるとともに、細胞内のミトコンドリアの働きを整えることで血糖値を下げることが期待される新しいタイプの薬である。だが、発売(2021年9月16日)から日が浅く、特に高齢者での実臨床データは不足していた。
同研究では、イメグリミンを1年以上継続した79人の2型糖尿病患者を後方視的に解析し、年齢層別の有効性・安全性およびメトホルミン併用時の消化器症状増加の要因について検討した。
その結果、75歳以上を含むすべて年齢層でイメグリミンは同等の有効性と安全性を示し、血糖値の改善だけでなく、体重や脂質、肝機能など幅広い代謝指標にも良い影響を与えることを示した。
さらに、メトホルミン1000 mg/日以上との併用で消化器症状が有意に増加した一方、750 mg/日以下では安全に併用できる可能性が示された。
高齢者は薬剤選択が難しいケースが多く、安全性が確認されたことは実臨床において大きな意味がある。イメグリミンは、体への負担が比較的少なく、複数の代謝改善作用を持つ新しいタイプの薬剤だ。今回の結果は、日常診療における有望な選択肢としての可能性をさらに裏付けるものとなった。同研究成果は、現地時間昨年12月16日にFrontiers in Clinical Diabetes and Healthcare誌で発表された。
日本国内の糖尿病患者は1000万人を超え、特に高齢者人口の増加に伴い、高齢患者が急速に増加している。高齢者では若年者と比べて薬物有害事象のリスクが高いため、安全性の高い治療薬の選択が重要となっている。
イメグリミンは、2021年9月に世界に先駆けて現住友ファーマより日本で発売された、ミトコンドリア機能の改善により血糖値を改善するこれまでにない作用機序を持つ糖尿病治療薬だ。
だが、発売からの期間が短く、実際の医療現場でのデータは十分ではなかった。特に、昨今急速に増加する高齢2型糖尿病患者に対する実臨床での有効性と安全性評価が求められていた。
さらに、P3試験であるTIMES2試験では、糖尿病治療薬で使用されることの多いメトホルミンとの併用で消化器症状の頻度が増加することが示されており、より安全な併用の条件の証明が課題であった。
同研究では、イメグリミンを1年以上使用した79人の2型糖尿病患者の実臨床データをもとに、この課題を後方視的に検討した。
イメグリミンを開始して1カ月後にはHbA1cは有意に低下し、この傾向は12ヵ月後まで継続した。有害事象により中止した6人を除いた73人の12ヵ月後の時点で、体重・HbA1c・ALT・AST・γ-GTP・トリグリセリドが有意に低下を認めた。
参加者を65歳未満(29人)、65-74歳(27人)、75歳以上(23人)3群に分けて比較したところ、HbA1cの推移、HbA1cの変化量、治療目標達成率は同等であった(図1参照)。いずれも年齢による差は認めず、高齢者でも若年者と同様の効果が確認された。
また、副作用発現率も年齢群間で有意差はなく、消化器症状による中止率も同程度でした。

図1、年齢別におけるイメグリミンの有効性の比較
参加者79人中49人(62%)がメトホルミンを使用していた。そこで、メトホルミンの投与量で層別化(750mg/日以下:26人、1000 mg/日以上:23人)したところ、1000mg/日以上で有意に消化器系有害事象が高頻度であった(図2参照)。これは、メトホルミンの化学構造がイメグリミンと類似していることが、副作用増加の一因と考えられる。

図2、イメグリミン開始時の消化器系有害事象とメトホルミン投与量との関係
同研究は、イメグリミンが高齢者を含む幅広い患者層で安全に使用でき、血糖値の改善だけでなく、体重や脂質、肝機能など幅広い代謝指標にも良い影響を与えることを示した。さらに、メトホルミンとの併用は概ね安全である一方、高用量(1000 mg/日以上)では胃腸症状が増える傾向が確認され、併用時の適切な用量調整の重要性が示された。
イメグリミンは、体への負担が比較的少なく、複数の代謝改善作用を持つ新しい治療薬だ。同研究は単施設・後方視的研究ではあるが、高齢者を含む幅広い患者に対して有望であることを実臨床で示した。
今後は、多施設共同研究、前向き研究、メトホルミン併用最適化の検証などにより、同研究結果の再現性と実践的な治療戦略の確立を目指す。
