
第58回日本薬剤師会学術大会が10月12~13日の二日間、「薬剤師に聞いてみよう~プロフェッショナリズムの涵養~」をテーマに国立京都国際会館(京都市左京区)で開催され、全国から8300名以上の薬剤師が参加した。
京都府での日薬学術大会開催は、1978年の第11回大会以来47年ぶり。今大会は、「どんな場面でも薬や健康のことはあの薬剤師に訊いてみようとすべての国民が思い、そう思ってもらえるように全薬剤師が本気で目指す」をコンセプトとしたもの。
同コンセプト実現のために、国が地域医療に必要としている5疾病6事業への薬剤師としての対応能力、それをテーマとした分科会や一般演題などを従来の演題分類に追加。“頼りにされて訊ねて貰える薬剤師”がより多く誕生する切っ掛けとなる大会となった。
また、特別記念講演は、臨床応用が目覚ましいiPS細胞の現状と未来について、京都大学iPS細胞研究所所長の高橋淳教授が「iPSが目指す未来」をテーマに講演。iPS細胞移植による置換効果に焦点を当て、高橋氏らが治験を実施し、現在製造販売承認申請中(住友ファーマ)のiPS細胞由来パーキンソン病薬などを紹介した。なお、今大会では、現地開催に加えてオンデマンド配信(会期後の録画配信)も実施された。

開会式では、岩月進日本薬剤師会会長が、「5月14日の一部法改正で、薬局と関係行政機関が連携し、地域に必要な薬剤及び医薬品の安定供給体制の構築が求められるようになった。今後は、薬局・薬剤師と関係行政機関との双方連携が必要となる」と指摘。
その上で、「この実現に向けて日薬では“地域医薬品供給体制強化のためのアクションリスト”を作成し、都道府県、地域薬剤師会、全国の薬剤師とともに取り組みを進めている」と紹介した。さらに、「オンラインだけでは成し得ない医薬品・薬剤師サービスの提供を“地域体制”の観点から再点検・再構築することが重要で、今後の地域薬剤師会のあるべき姿を方向付ける最後に機会となる」と断言し、「急速な少子化や過疎化が進む中で地域の医療資源たる薬局・薬剤師にとって正念場であると同時に大きなチャンスと念頭に置き対応して頂くきっかけの学術大会となってほしい」と呼びかけた。

続いて、河上英治大会運営委員長(京都府薬会長)が、「学術大会開催に当たっては、大阪・関西万博の会期末と重なって宿泊施設の確保が出来るかが最大の懸念であった。その目処が付きしっかりと準備してきた」と振り返った。さらに「我々京都府薬は、薬局、病院、学校の薬剤師が合同で作り上げたものである。今回の大会は、その特徴がしっかりと出ている大会になっていると自負している。メインテーマに沿った大会になればと考えている」と訴えかけた。
来賓祝辞では、福岡資麿厚労大臣(代読)が、「少子高齢化が進む中、薬局・薬剤師を取り巻く環境は大きく変化している。こうした中、薬局・薬剤師は、地域における医薬品供給の拠点に加え、OTC販売や健康相談など多様な役割が期待されている」と明言。
さらに、「先般の関連法改正では、健康支援薬局の認定制度化などが織り込まれており、今後順次施行していく。また、医療DXでは、電子処方箋が約9割の薬局で導入頂いており、調剤結果登録率も全処方箋の8割に達している。今後も医療DXの取り組みを加速していくのでご協力お願いしたい」と呼びかけた。
あべ俊子文科大臣(代読)は、「日本薬剤師会は、薬剤師の倫理、学術的水準を高めると共に、大学における薬学教育の充実・改善に尽力して来られた。この功績に感謝したい」と強調。加えて、「近年、高齢化の進行や情報通信技術の著しい進展などにより薬学部を取り巻く状況は変化している。今後、薬学教育の成果が臨床現場で十分に活かされるよう、薬剤師職能が大いに発揮できる環境を整えて頂きたい」と要望した。

西脇隆俊京都府知事は、「本年は、団塊の世代がすべて75歳を迎える。こうした中、今回の大会は薬剤師の能力、資質上昇のための様々なプログラムが実行される。地域社会の要である薬剤師の皆さんがこの大会を通してその専門性をより一層高められ、地域医療の質の向上に繋がることを期待したい」と述べた。
松井考治京都府市長は、「京都市は、人口143万人を擁するが、地域における孤独化、孤立化を背景としたオーバードースが問題となっている」と指摘し、「地域包括ケアシステム、薬物乱用のキーパーソンである薬剤師の役割は非常に重要である。今後ともご協力頂きたい」と訴えかけた。

松井道宣京都府医師会会長は、「2025年は、いよいよ加速度てきに高齢化社会が進み、支える人と支えられる人のバランスが難しくなる。今後、医師も薬剤師も掛かり付け機能の充実を図っていく。地域包括ケアの中で、多職種の車輪一つ一つがしっかいと動いて皆で社会を支え合って行きたい」と呼びかけた。

第59回日薬学術大会(新潟大会)は、2026年10月11・12日の両日、「‘TOKI’MEKI薬剤師の未来へ 希望を繋げよう」をテーマに、朱鷺メッセ新潟コンベンションメインセンターを主会場に開催される。


京都大会は若干の黒字に

岩月日薬会長と供に記者者会見に参加した河上京都府薬会長は、「8000名の参加者を得たので、大会は黒字化ラインを突破した」と報告した。当初、学術大会参加者は、現地参加8000人、オンデマンド参加2000人の合計1万人を見込んでいたが、会場7000人、オンデマンド1000人(10月12日現在)となった。

河上氏は、「現地参加でもオンライン参加でも、条件があるものの日薬研修センター(PECS)または病院薬学認定薬剤師研修受講単位(JSPH)のどちらかを取得できる」とした上で「オンデマンド配信のPRが不足した感がある」と振り返った。
また、万博最終日と重なるため同大会開催で最も苦労した宿泊施設の確保については「2年前の段階でJTBとの相談により、確保できるとの確約が取れた。JTBによる宿泊ホールド率を上げずに、自分の好きなホテルがネット予約しやすくなるよう工夫した」と明かした。