
アストラゼネカは3日、大阪・関西万博の英国パビリオンで、「HealthcareTechnology for the Future」を開催し、疾患予測 AI など最先端ヘルスケアテクノロジーの活用・協業・イノベーションの加速について分野を超えた議論を展開した。
イベントでは、最先端ヘルスケアテクノロジーが紹介されたほか、疾患の早期発見・早期治療介入の新たな可能性など、ヘルスケア業界のみならず、業界・分野を超えてテクノロジーを活用した協業やイノベーションの加速についてディスカッションが展開された。
オープニングセッションでは、2025年大阪・関西万博英国政府代表キャロリン・デービッドソン氏、英国政府主席科学顧問教授 アンジェラ・マクリーン氏、慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学教室 教授宮田裕章氏、アストラゼネカ Chief Digital Officer &CIOシンディ・フーツ氏が登壇。
フーツ氏は、「アストラゼネカは、がんによる死亡をなくすことをビジョンに掲げている。従来の治療を超えてヘルスケアの制度、予防、早期診断、個別化医療を全ての人に届けたいと考えている」と明言。 そのためには、「デジタル化など新しい考え方や、デバイス・データを駆使することによって専門家と患者さんをつなげて障壁を取り除くことが必要である」と訴えかけた。
アストラゼネカでは、新薬の開発に10年かかっていたが、AIの活用により分子の発見が50%早くできるようになってきた。 加えて、日本のヘルスケア分野におけるオープンイノベーション活動を推進するネットワーク「i2.JP(アイツー・ドット・ジェイピー)」に触れ、「日本での達成をグローバルにも共有することで、科学技術の可能性の幅をより広げることを期待している」と訴求。
「新しい技術を活用し協力することで、アストラゼネカが国内外でパートナーとして選ばれ、治療の変革に貢献していく」考えを強調した。こうした中、i2.JPの活動は、ヘルスケア業界における新たな可能性を示している。

「未来のヘルスケアテクノロジーショーケース」では、英国の electronRx 社、日本のエルピクセル社、インドの Tzar Lab 社など国内外のヘルスケアスタートアップ企業の技術や、アストラゼネカ グローバル本社で開発された疾患予測 AI アルゴリスム「MILTON」など、最新のヘルスケアテクノロジーが紹介された。
スラヴェイ・ペトロフスキーアストラゼネカVP Centre for Genomics Research, BioPharmaceuticals R&D は、 MILTON について「当社の遺伝学研究センター(CGR)により開発され、幅広いバイオマーカーにおけるパターンを特定し、慢性腎臓病、アルツハイマー病、腫瘍など、約1000種類の疾患や表現型の発症を高精度で予測する能力を有している」と仕組みを説明。
その上で、「診断遅れ防止への期待を寄せ、病気を治す意味の“シックケア”よりも、病気が進行する前に早期介入していく“ヘルスケア”を推進していく」重要性を訴えかけた。
プレゼンテーション&パネルディスカッション「日本におけるヘルスケアの未来:業界を越えた協業で医療課題を解決」では、冒頭に平将明デジタル大臣がビデオメッセージの中で「私たちが向き合う医療課題は、制度の枠を超えて一人ひとりの暮らしに深くかかわっている。現場の声に耳を傾けながら技術と制度をどう結び付けていくかが問われている」と指摘。
その上で、「本日の闊達かつ具体的な議論が未来の医療を形作る第一歩となることを心より願っている」とコメントした。
続いて、医療界・産業界・行政・自治体など分野を超えた有識者が集い、最新技術と社会課題解決策を共有・議論し各分野の協働による革新創出のヒントを発信した。
その中で、明石順子経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 課長補佐は、「デジタルヘルス推進政策」や「新技術創出を支える実証フィールド・民間協業への期待」、「医療データ流通事業化の課題」を紹介。
さらに、川畑雅照港区 医師会常任理事(日比谷川畑診療室)が「港区の肺がん検診における AI を用いた医用画像解析ソフトウェア導入の経験」、石見拓京都大学医学研究科社会健康医学系専攻予防医療学分野教授が「パーソナルヘルスレコードによる突然死防止・見守りサービスの構想やヘルスケアへのデジタルテクノロジー活用・社会実装のための課題」 、トヨタ紡織リチャード・チャンChiefInnovationOfficer&Advanced Technology Development Segment Chief が「モビリティが生み出す未来のヘルスケア」について紹介。現場で直面するリアルな課題や将来に向けた展望について、それぞれの知見を語った。
また、登壇者4人による「業界を越えた協業で医療課題を解決」をテーマとしたパネルディスカッションも実施された。

また、当日は会場前に、トヨタ紡織が提案する車室空間コンセプト MOOX を特別展示。同イベント限定のコラボレーションとして、トヨタ紡織のMOOX に、アストラゼネカのインプット、さらにはi2.JPのパートナーである英国のスタートアップ「electronRx」の技術を搭載したオリジナル仕様が実現。3社が連携し具現化したモビリティ×ヘルスケアの未来を来場者に披露した。


疾患の早期発見・早期治療介入に寄与する新たなテクノロジーが次々と生まれている近年、それをどう育て、社会実装させていくかが鍵となっている。日本において「i2.JP」を運営するアストラゼネカは、今後もこうした取り組みを通じて、EXPO2025大阪・関西万博が掲げる「いのち輝く未来社会のデザイン」の実現を、ヘルスケア業界全体で目指していく。
◆閉会に当たっての堀井貴史アストラゼネカ代表取締役社長のコメント
「いのち輝く未来社会のデザイン」という大阪・関西万博のテーマが、人・社会・地球の健康に貢献するという弊社の方向性と合致していたことから、世界各国が直面する保健医療システムや気候変動への課題解決に向け、産官学で対話と共創の機会を創出するべく、様々なイベントを展開してきた。本日は新しいテクノロジー・技術・取り組みが紹介され、一連の締めくくりにふさわしいイベントであったと感じている。
イベントの中で触れていただいた『i2.JP』は5周年を迎え、温めてきた組織が花開き、様々な取り組みにつながっていることを誇りに思っている。弊社は大阪府の未来医療国際拠点『中之島クロス』事業コミュニティパートナーに採択され、本社のある大阪でこれからもベンチャー・スタートアップ・アカデミアなど様々な方と共創できる環境を作っていきたいと考えている。
我々は全員、製薬会社として、患者さんに貢献したいという思いを持っている。より健康な人、健康な社会、健康な地球となるよう、アストラゼネカはこれからも皆様とパートナーシップを組んで取り組んでいく。