
ツムラは、2021年に「#OneMoreChoice プロジェクト」を発足し、生理のつらさを我慢しなくていい社会を目指して活動している。その一環として、生理・PMSをテーマとした企画展「違いを知ることからはじめよう展」を7月24日から27日までの4日間、東京・丸の内の丸ビル1Fイベントスペース「マルキューブ」(東京都千代田区)で開催した。同イベントの開催レポートを紹介する。

生理に悩む人だけでなくパートナーや管理職の男性も理解を深める場に
企画展には、4日間で4886人が来場した。来場者には、生理・PMSの症状に伴うつらさに悩む当事者だけでなく、パートナー同士で訪れる姿も多く見られた。中には「パートナーから声をかけられて一緒に来た」というパートナー同士で来場した人や、「パートナーに教えてもらって一人で来た」という男性も。また、職場に女性が多く「理解を深めたい」と話す管理職の男性や、医療・教育の現場に携わる人、生理の課題に取り組む活動をしている人方の姿もあり、関心の広がりが感じられた。
展示は「イントロダクション」「気づく」「想像する」「向き合う」の4つのエリアに分かれており、来場者は順に巡りながら、生理・PMSによるつらさや日常への影響を疑似体験しながら理解を深めていった。各エリアでの体験に加え、掲示された調査データにも目を通しながら、生理・PMSの症状に伴うつらさついて自然と会話が生まれる様子も見られた。
「隠れ我慢」を可視化する展示が共感を呼ぶ ―音声やマンガで多様なつらさを表現
「気づく」のエリアでは、さまざまな立場・環境にいる人が抱えている、生理・PMSの症状に伴うつらさや、「周囲に迷惑をかけたくない」「気を遣わせたくない」などといった思いから、それを周囲に言えずに「隠れ我慢」してしまう様子を、音声やマンガ(協力:モアドア)などの表現を通して可視化した。隠れ我慢は、心身の不調を我慢していつも通りに仕事や家事を行うことを意味し、ツムラが定義したもの。
来場者からは、「(SNSに投稿された)日常の画像の背景に悩みや思いがあることを副音声を通じて知れて興味深かった。」(20代女性)、「なんとか声をかけてみるものの、どう思っているのか、かけた言葉が正しかったのかが分からなかったので勉強になった。あくまで一例として今後も何か声をかけられる人になりたいと思った。」(40代男性)、「男女の生理に対する見え方の違いや接し方に困る事例は想像できたが、女性同士でもつらさが違って擦れ違いが起こることがあるというのが新たな知見が得られた。」(20代男性)、「部下に女性がいたことがあったが、体調を想像することができていたかと自分を振り返るきっかけになった。」(20代男性)、「笑顔の画像の裏にこんな思いが…!と思うと、日常生活でも、生理に限らずもしかしたら何かつらさを抱えているのかもしれないと想像力を働かせたいなと思った。」(10代女性)、「言いたいけど言えない、分かってほしいけど分かってもらえない、そんな展示を見て分かりあうことが、大切と感じた。」(20代男性)といった感想が寄せられた。
立場や環境の異なる人たちが抱えるつらさを、具体的なストーリーとして知ることができる音声やマンガによる展示は、来場者自身の経験や気づきを引き出す場として、大きな反響があった。


一人ひとり違う生理・PMSの症状に伴うつらさを可視化、日常への影響の疑似体験も
「想像する」のエリアでは、生理・PMSによって生じる倦怠感や眠気、めまいなど、さまざまな症状によって「いつも通りに過ごせない」状態を疑似体験できる空間を展開。参加者は、実際の当事者の声をもとにつくられた体験を通じて、症状の感じ方や日常への影響の違いに触れ、目に見えにくいつらさへの理解を深めていた。
参加者からは、「倦怠感(コート)やめまい(車内)、集中力の低下(パソコン)など自分が体験しているものとは全く異なる生活を女性の方々は経験していることに気づけた。」(20代男性)、「(倦怠感を疑似体験できるコートを着用すると)このくらいかな?という予想を超えて重かったりつらかったりしたので、展示に来て良かった。」(30代男性)、「(倦怠感を疑似体験できる)重いコートを羽織った際に、パートナーはこういうことを感じて生きているのだと思わされた。」(20代男性)、「自分も生理痛とPMSが重いため、つらさを知人に体験してもらい、一緒に対処法を考える機会になった。」(20代女性)、「人によってはこう感じることもあるんだなと思えて自分との違いや、自分の体験も追体験でき、生理についてより考える良い機会になった。」(40代女性)、「『#わたしの生理のかたち』や生理痛VR体験装置の強度を話し合って共有できた。」(40代女性)という感想が寄せられた。
普段は見過ごされがちな生理・PMSに伴う“つらさ”を、体で感じ、想像することで、自分とは異なる〝つらさ“への理解や共感が広がるエリアとなった。
生理痛VR体験装置「ピリオノイド」(協力:リンケージ)の体験には、延べ365人が参加。週末は昼過ぎに整理券の配布が終了するほど体験希望者が多く、日曜日には体験枠を追加して対応した。
エリアの後半には、生理周期(約1か月)に精神的症状や、それによるつらさがどのように生じ、変化するのかのアンケートに協力した10名のエピソードとともに紹介した「こころの波」を展示。
「自分の心の状態もグラフ化して見てみたいと思った。」(40代女性)、「一人ひとり、全然つらいときが違う。100人100様である。ひと月のうち、調子のいい時は3分の1くらいしかない!このことを男性にも知ってほしい。」(60代女性)、「自分と同じ波の人もいれば、全然違う人もいて、こんなにも違うのかと思った。」(20代女性)という感想もあった。


みんなの選択肢をそれぞれの言葉で可視化「わたしの#OneMoreChoice」
展示の最後に設けた「向き合う」のエリアには、生理のつらさを、我慢しなくていい社会へ向けて、“我慢に代わる選択肢=OneMoreChoice”を来場者に書き込んでもらうコーナーを設置。それぞれの選択肢を可視化することで、自分自身や周囲の誰かがつらさを抱えたときに、取れる選択肢を広げるヒントにつなげ貰うことを目的とした。連日多くの人が思い思いの言葉を寄せ、壁面のパネルはコメントで埋め尽くされるほどに。
「相談できる味方をつくろう!」「まずは話してみることから始めたい!」「相手を知る、理解する」「もっと知りたいしサポートしたい!」等、可視化された多様な選択肢が、来場者同士の共感や気づきを生む場となった。

来場者が展示を通して考えた「わたしの#OneMoreChoice」連日壁いっぱいに貼りだされた
展示を通じての気づき「女性同士でも思いやりが大切」「無理して頑張る“普通”がなくなってほしい」
全体を通して、来場者からは、「普段PMSや生理中に感じている感覚をそのまま体感できる空間はすごい。パートナーと疑似体験できたのも良かったし、いろんな人が体験していてすてきだなと思った。」(20代女性)、「女性同士でも思いやりが大切だと学んだ。」(30代女性)、「無理して頑張ることが普通だと思っていたので、その普通がなくなればいいなと思った。」(20代女性)、といった感想が寄せられた。
企画展には、俳優の井桁弘恵も来場し、さまざまな展示や生理痛VR体験装置を体験した。井桁は「違いを尊重して思いやりのあふれる社会に」という「わたしの#OneMoreChoice」を書いた。


井桁も「わたしの#OneMoreChoice」を記載