住友ファーマは31日、2025年度第1四半期決算説明会を開催した。同四半期は、北米の基幹製品であるオルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤)及びジェムテサ(過活動膀胱治療剤)の大きな伸長等により、売上収益が大幅に増加し好調な滑り出しを見せた。
特に好調であったオルゴビクスの伸長具合や、米国における医薬品に対する関税対策、薬価など不透明な外部環境があるものの、「第2四半期以降もこの業績が続くことを期待し、業績改善に尽力していく」(わけみ裕執行役員)。
また、現時点では5月13日に公表した通期予想(売上収益3550億円[対前年比11%減]、コア営業利益560億円[29.8%増])を据え置いているが、今後、米国の基幹3製品の販売状況を精査し、中間決算では業績予想の修正が可能になると見込んでいる。
2025年度第1四半期の業績は、売上収益1080億円(対前年同期比19.1%増)、コア営業利益204億円(213億円増)、営業利益204億円(235億円増)四半期利益112億円(29.7%減)となった。
同四半期は、オルゴビクスおよびジェムテサの伸⻑等により大幅増収となり、事業構造改善効果の発現や再生・細胞医薬事業の再編等により、販売費及び一般管理費ならびに研究開発費が減少した。
米国の基幹3製品の売上収益は、オルゴビクス327億円(対前年同期比95.3%増)、マイフェンブリー(子宮筋腫・子宮内膜症治療剤)29億円(5.2%減)、ジェムテサ213億円(75.3%増)。
オルゴビクスの大幅な過達は、「新規患者数の増加」、「自己負担額引き下げによるメディケアの患者増加」、「唯一の経口剤という利点の広まり」などによるもの。

北米を担当する中川勉取締役常務執行役員は、「定量的な評価が上振れた。もともと剤のプロファイルは優れている」と明言。さらに、「競合品のリュープリンとは価格の差がハードルであったが、保険制度の変更(メディケア)等で我々の予想を上回った」と分析する。
オルゴビクスの販売好調に伴い、ファイザーから同剤の販売マイルストン(145億円)が2Qに発生する⾒込みにある。さらに、2回目のマイルストーンは、年間売上収益が1ビリオンドルを超えた時に、ファイザーから325ミリオンドル支払われる。中川氏は、「その時期が来年なのか再来年なのかは、今後のオルゴビクスの進捗状況による」と話す。
マイフェンブリーは、数量・価格共にほぼ推定通りに推移した。わずかな未達は、前年度の調整(プルアップ)によるもの。また、昨年12月末でファイザーとの販売提携を終了し、本年1月から住友ファーマアメリカでの単独販売を開始した。本年4月にはジェムテサの一般内科チームと連携する形でコミュニティケアチームを新たに立ち上げ、営業体制を強化した。
こうした体制変更にかかわらず同剤は販売数量を維持しており、順調なスタートを切った。加えて、2025年度第1四半期決算で製品損益の黒字化を実現した。
ジェムテサは、ミラベグロンの後発品上市など市場の変化に対応し、カバレッジよりも価格を重視する戦略を実⾏。カバレッジは一時低下したものの、製品の臨床的意義の浸透により数量は回復基調にある。また、新しい適応症(前⽴腺肥⼤症を伴う過活動膀胱)を活用し、男性患者を対象としたDTCを拡⼤した。
上期業績予想も開示
第1四半期はアプティオムの独占販売期間終了、アジアの既存ビジネスの終了によって収益が集中し、第2四半期にはオルゴビクスの販売好調によるマイルストンの発生が見込まれる。そのため上期と下期の業績に大きな差が生じる状況を鑑みて、同社は上期業績予想の開示に踏み切った。
2025年度2Q累計予想は、売上収益2070億円、コア営業利益700億円、営業利益690億円、四半期利益560億円。営業利益700億円には、オルゴビクスの販売マイルストン(145億円)、アジア事業の譲渡益の一時要因による利益(約600億円)を含んでいる。
気になる米国における医薬品の関税対策について中川氏は、「確固たる情報が無い。情報収集を早くして他社の動きを理解する」とした上で、「その一環として昨年脱退したPhRMA(米国研究製薬工業協会)に本年7月再加入した」ことを明かした。