パンデミック対策への貢献期待の革新的技術
住友ファーマは1日、同社の新規 TLR7ワクチンアジュバント「DSP-0546LP」(開発コード)について、感染症流行対策イノベーション連合(本部:ノルウェー、CEPI)が公募した「アジュバントライブラリー」に選出されたと発表した。
CEPIは、感染症の流行およびパンデミックに備えたワクチン開発を支援する国際的な官民連携組織である。今般のアジュバントライブラリーは、COVID-19 パンデミックの教訓を踏まえ、G7およびG20各国の支持のもとでCEPIが主導している「100Days mission」の一環として発足されたもの。
この取組は、パンデミックの可能性を有する新たな感染症に対し、わずか 100 日でワクチンを開発することを目指すもので、同社の新規 TLR7ワクチンアジュバント DSP-0546LP は、その様々な抗原に対して応用可能な汎用性と、ワクチンの効果を高め得る有望な特性が評価され、同ライブラリーに選出された。
TLR7アジュバントは、ウイルス由来の RNA を感知して自然免疫応答を引き起こすToll様受容体の一つであるTLR7を特異的に活性化させる物質を含む製剤である。アジュバントとして抗原に添加することによって免疫応答の量、質および持続性を高める免疫増強作用を有する。
◆福島晃久住友ファーマワクチン事業担当シニアオフィサーのコメント
当社の新規TLR7ワクチンアジュバントは、インターフェロン研究の過程で見出した独自技術の一つであり、現在AMEDの支援のもとアジュバント添加ユニバーサルインフルエンザワクチンとして、欧州にてP1試験を実施中である。
また、グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)の支援のもと当社アジュバント技術を応用したマラリアワクチンの研究開発にも取り組んでいる。これらのアジュバント添加ワクチン開発とともに、本ライブラリーを通じた国際的なパンデミック対策への貢献に取り組んでいく。
◆Richard Hatchett CEPI CEOのコメント
免疫応答を高めるアジュバント技術は、長年にわたり、命を脅かす感染症への対応を大きく進化させてきた。世界初となる今回のアジュバントライブラリーは、ワクチンと多様なアジュバントの最適な組合せを迅速に見極めるマッチメイキングの仕組みを提供することで、命を救い、将来のパンデミックの脅威を食い止める可能性を高めるものである。
◆國井修GHIT Fund CEO兼専務理事のコメント
GHIT Fundは、住友ファーマが新規TLR7ワクチンアジュバント技術を活用して取り組んでいるマラリアワクチン研究開発を2019年度から継続的に支援している。その間には COVID-19 パンデミックの発生により、開発された各種技術を将来のパンデミックへの備えに転用(リパーパス)する重要性が国際社会に再認識された。
今回の CEPIアジュバントライブラリーへの選出は、住友ファーマの新規 TLR7 ワクチンアジュバント技術のポテンシャルがあらためて高く評価された証であり、かつ将来のパンデミックへの備えが強化され、大変喜ばしい。世界のアジュバント技術が結集するCEPIのもとで、住友ファーマの新規TLR7ワクチンアジュバントが将来のパンデミック対策に大きな役割を果たすことを期待している。
◆高橋順一厚労省大臣官房国際課国際保健・協力室長のコメント
日本政府はCEPIの創設メンバーで主たる拠出国でもあり、2022年から2026 年までの3億ドルの拠出のプレッジを含め、これまで CEPIの活動に5億2100万ドル以上を拠出してきた。
日本は、2023年のG7 広島サミットにおいて、強固なグローバル・ヘルス・アーキテクチャーの構築と公衆衛生上の緊急事態に対する予防、備え及び対応(PPR)の強化の重要性を強調した。具体的な施策として、日本は SCARDA(Strategic Center of Biomedical Advanced Vaccine Research and Development for Preparedness and Response)を通じるなどの形で CEPI と緊密に連携している。日本の企業とCEPIとのパートナーシップがPPRの強化に資することを期待している。