MSDは14日、長期間作用型抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体製剤「クレスロビマブ」について、生後初めてRSウイルス感染流行期を迎える新生児および乳児におけるRSウイルス感染症の予防薬として、厚労省に製造販売承認申請を行ったと発表した。
RSウイルスは、気道などに感染する伝染性のウイルスで、感染力が強く、特に乳児や高齢者では重篤な呼吸器疾患を引き起こす場合がある。日本では、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の児がRSウイルスに少なくとも一度は感染するとされている。特に、生後6カ月以内にRSウイルスに感染した場合には、細気管支炎、肺炎など重症化する場合がある。
また、日本の5歳未満の健常児において、RSウイルス感染症による入院率はインフルエンザの入院率の約10倍高かったという調査や、入院した2歳未満のRSウイルス感染症患者の約90%が、RSウイルス感染症重症化のリスクファクター(早産児、 気管支肺異形成症、先天性心疾患(CHD)、ダウン症候群および免疫不全症)を有していなかったという報告があるなど、健康な児においても重症化する例が多くみられる。従って、すべての新生児および乳児が予防できる環境が必要と考えられている。
クレスロビマブは、RSウイルス感染症予防の受動免疫として開発中の半減期延長型、長期作用型のヒトモノクローナル抗体(mAb)である。生まれて初めてRSウイルス感染症流行期を迎える新生児および乳児に、投与時の体重に関係なく同じ1回量を投与することで、抗体が直接的に作用し、迅速かつ持続的な予防効果が得られるように設計されている。
今回の承認申請は、初めてRSウイルス感染流行期を迎える生後1歳までの健康な早産児および正期産児を対象にクレスロビマブ単回投与の安全性と有効性を評価するP2b/3相CLEVER(MK-1654-004)試験、RSウイルス感染症の重症化リスクの高い乳児および幼児を対象にクレスロビマブの安全性と有効性などをパリビズマブと比較するP3相SMART(MK-1654-007)試験に基づくもの。
クレスロビマブは、本年6月9日に米国で、生後初回のRSウイルス感染流行期の新生児および乳児におけるRSウイルスによる下気道疾患予防の適応で米国FDAの承認を取得しており、同月、CDCの予防接種諮問委員会(ACIP)は、生後初回のRSウイルス感染流行期の新生児および乳児(生後8カ月未満)におけるRSウイルスによる下気道疾患の予防薬としてクレスロビマブを推奨した。
MSDは、重症化リスクの高い新生児および乳幼児だけでなく、すべての新生児および乳幼児を対象に設計された長期間作用型抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体製剤の承認取得に向けて取り組むとともに、引き続き日本でのRSウイルス感染症予防と公衆衛生の向上に尽力する。