バイエル薬品は9日、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)「フィネレノン」とSGLT2阻害薬「エンパグリフロジン」を同時に開始する併用療法について、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)患者を対象としたP2試験(CONFIDENCE試験)においていずれかの剤療法と比べ尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)を有意に低下したと発表した。
同試験結果は、第62回ERA 2025年年次学術集会で発表され、医学誌ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンにも掲載された。
フィネレノンは、2 型糖尿病を合併するCKD(ステージ1-4)の幅広い患者集団を対象に、2 本のP3試験(FIDELIO-DKD 試験、FIGARO-DKD試験)で、標準治療に上乗せしたフィネレノンとプラセボの腎および心血管アウトカムへの効果が評価された。SGLT2阻害薬による治療を受けている被験者も2試験の対象であった。
FIDELITY(P3試験 2 本の事前規定された統合解析)のデータより、2 型糖尿病を合併する CKD患者における早期アルブミン尿(UACR)の低下が、フィネレノンの CKD進行抑制効果の大部分を仲介することが確認されている。
今回発表されたCONFIDENCE試験では、2型糖尿病を合併するCKD患者において、フィネレノンとエンパグリフロジンの同時併用療法によりUACRが早期かつ相加的に低下し、180日時点にはべースラインから52%の低下を示した。
同時併用療法ではフィネレノン単剤療法、エンパグリフロジン単剤療法と比べ、ベースラインから180日時点までのUACRの相対低下はそれぞれ29%、32%であった。30%以上のUACR低下は、2剤による同時併用療法から14日以内に認められた。
米国糖尿病学会(ADA)は、CKD患者の腎疾患進行抑制のためにUACRの30%低下を推奨している。同時併用療法ではおよそ4人中3人の被験者がベースラインに対して30%のUACR低下を示し、30%以上のUACR低下の割合はいずれかの単剤療法より 20%高い結果となった。
フィネレノンと SGLT2 阻害薬の同時併用療法の安全性プロファイルは、いずれかの単剤療法と同様であった。同時併用療法のベネフィットは、疾病負荷が大きい集団を含め、事前規定された全ての部分集団において見られた。
糖尿病は、公衆衛生上の重大な問題で、2型糖尿病だけでも世界で推定4億6200万人が罹患している。2 型糖尿病患者の約 40%が CKDを発症しており 、腎機能をより適切に保護し、疾患進行を抑制する治療に対する高いアンメットメディカルニーズがある。
◆CONFIDENCE試験運営委員会委員長のラジブ・アガルワル氏(インディアナ大学医学部、インディアナポリス VAメディカルセンター医学部名誉教授)のコメント
CONFIDENCE試験において、フィネレノンとエンパグリフロジンの同時投与開始は、2 型糖尿病を合併する CKD患者においていずれかの単剤療法の結果よりもUACRが有意に低下し、UACRが 52%の早期かつ相加的な低下を示したという臨床的エビデンスとなる。
UACRが腎アウトカムおよび心血管アウトカムにおいて重要な因子であることを考慮すると、これらは疾患管理を最適化する方法を検討する際に臨床医にとって重要な知見となり、フィネレノンとSGLT2阻害薬の早期併用が患者さんの予後に好影響となることを支持している。
◆マイケル・デヴォイ ドイツ・バイエル社医療用医薬品部門チーフ・メディカル・オフィサーのコメント
CONFIDENCE試験のデータは、2型糖尿病を合併するCKD患者さんのケアを改善するという当社の使命において、重要なマイルストーンである。
今回の知見は、フィネレノンとSGLT2阻害薬の積極的な同時併用療法が UACRの早期かつ相加的な低下をもたらし、腎臓および心血管の保護に関連していることを示唆している。フィネレノンとSGLT2阻害薬の早期併用療法が、世界中の数百万人の患者さんの長期的な予後を改善する可能性を示したこの重要な結果を医師と共有できることをうれしく思う。