アストラゼネカは3日、イミフィンジについて、欧州連合(EU)において、成人の筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)に対する根治的膀胱全摘除術前のゲムシタビンおよびシスプラチンとの併用による術前補助療法、および術後補助療法における単剤療法の治療薬として承認勧告を受けたと発表した。
欧州医薬品庁(EMA)の医薬品評価委員会(CHMP)の肯定的な見解は、2024年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で公表されたP3試験(NIAGARA試験)結果に基づくもの。計画された中間解析では、イミフィンジ周術期レジメンで治療された患者は、対照群に対して、病勢進行、再発、手術未施行、または死亡のリスクを32%低下させた(無イベント生存期間[EFS]ハザード比[HR]0.68、95%信頼区間[CI]0.56-0.82、p<0.0001)。 EFS中央値の推定値は、対照群の46.1カ月に対し、イミフィンジを含む実薬群では未到達であった。また、2年経過時点で対照群では59.8%が無イベントだったのに対し、イミフィンジ周術期レジメンで治療された患者では67.8%であった。
重要な副次評価項目である全生存期間(OS)から得られた結果は、根治的膀胱全摘除術をともなう術前化学療法単独群と比較して、イミフィンジ周術期レジメンが死亡のリスクを25%低下させた(OS HR 0.75、95% CI 0.59-0.93、p=0.0106)。
生存期間中央値については、両群とも未到達であった。2年経過時点で対照群では75.2%が生存していたのに対し、イミフィンジ周術期レジメンを受けた患者では82.2%が生存していた。
2024年には、欧州の主要な5カ国で3万5000人以上がMIBCの治療を受けた。膀胱がんは、腫瘍が膀胱の筋層に浸潤し、遠隔転移を伴わない場合に筋層浸潤性とみなされる。
現在の標準治療は術前化学療法と根治的膀胱全摘除術であるが、これらは根治目的の代表的な治療であるにもかかわらず、多くの症例は術後に再発し、予後は不良である。
イミフィンジの忍容性は全般的に良好であり、術前および術後補助療法において新たな安全性シグナルは観察されなかった。さらに、術前化学療法にイミフィンジを追加する治療法は、この併用療法の既知のプロファイルと一致し、術前化学療法単独と比較して患者の手術実施を妨げることはなかった。免疫介在性有害事象は、イミフィンジの既知のプロファイルと一致しており、管理可能でほとんどが低グレードであった。
イミフィンジの同治療法は、NIAGARA試験の結果に基づき、米国とそのほかの国々において承認されている。日本、およびその他数カ国においても規制当局により審査中である。
◆NIAGARA試験治験責任医師のMichiel Simon Van Der Heijden氏(オランダNetherlands Cancer Institute腫瘍内科医、グループリーダー)のコメント
筋層浸潤性膀胱がんの患者さんの約半数は、術前化学療法と膀胱全摘除術による根治目的の治療にもかかわらず、再発を経験する。デュルバルマブをベースとした周術期レジメンに対する今回の承認勧告は、生存率の有意な向上が実証された重要な新しい治療選択肢の提供に一歩近づくもので、欧州全域の患者さんの治療アプローチを変革する可能性を秘めている。
◆Susan Galbraithアストラゼネカオンコロジー・ヘマトロジー研究開発エグゼクティブ・バイスプレジデントのコメント
P3相NIAGARA試験におけるイミフィンジをベースとした周術期レジメンは、治療後2年時点で80%以上の患者さんの生存を可能にした。これは、根治を目的とした治療の機会が最も高い、疾患のより早期段階に革新的な医薬品を投入するという当社の戦略を裏付けるものである。
承認されれば、この革新的なアプローチは欧州の患者さんにとって待望の新たな治療選択肢となり、この適応における新たな標準治療となる可能性がある。