ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)は13日、東亞合成とトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の治療を目的とした革新的siRNA(small interfering RNA、低分子干渉RNA)医薬に関する共同研究契約を5月1日に締結したと発表した。
TNBCは、乳がんの中で最も進行性で予後も悪く、一般的な乳がんの標準治療であるホルモン療法や HER2 分子標的薬が効かないトリプルネガティブ乳がん。今回、TNBCに対する新たな治療用siRNA医薬創製に関する共同研究契約を締結したもの。
TNBCは、予後が最も悪い乳がんのひとつで、乳がん全体の 10-15%を占める。診断から5年以内の再発リスクが他の乳がんに比べて高く進行も早い特徴があり、また一般的な乳がん治療に用いられるホルモン療法、HER2 分子標的薬が効かず治療の選択肢が少ないという課題がある。そのため、新たなモダリティでの効果的な治療法の開発が待ち望まれている。
東亞合成の独創的 siRNAデザイン技術により創出したTDP-43(TAR DNA-binding protein of 43 kDa)遺伝子を標的とするsiRNA は、TNBC 細胞に対して細胞増殖抑制作用を有していることが in vitro で確認された(論文投稿中)。
同共同研究において、核酸医薬の送達技術として世界的に注目され、既に乳がんなどの臨床試験で実績のある iCONMの高分子ナノミセルやユニットポリイオン複合体(uPIC: Unit Poly-Ion Complex)などを用いたナノDDS(Drug delivery system)技術と融合することでin vivoで有効な革新的 siRNA医薬を創製し、5年以内の臨床試験開始を目指す。
東亞合成のsiRNAデザイン技術は、疾患の原因遺伝子の異常発現を直接制御するものであるため、様々な難治性がんを始め、神経疾患、希少疾患などの難病治療のほか、新種のウイルスによるパンデミック時の迅速な感染拡大防止など多くのUnmet Medical Needs(未充足医療)に対応出来ると考えられる。
また、iCONM 独自のナノDDS技術は日々進化しており、難治がん克服の鍵を握る腫瘍微小環境における間質バリアの突破や高分子ナノミセルからの組織選択的薬剤放出技術などといった革新性の高い技術を組み合わせることで、必要最小量のsiRNAを特定の部位に送達でき、有効性と安全性のバランスが良い治療法をリーズナブルな医療費で提供できることが期待できる。
同共同研究の進展により、TNBC患者の治療に新たなモダリティでの選択肢をもたらすとともに、世界レベルでの様々なUnmet Medical Needs に応えられるsiRNA医薬の創製を迅速かつ的確に進めるプロセスを提供し、未来の医療に貢献していく。