2025年度は売上収益5300億円目指し大飛躍の1年に 手代木功塩野義製薬会長兼社長CEO

 塩野義製薬の手代木功会長兼社長CEOは12日、2024年度決算説明会で会見し、「売上収益(4282億円)は通期予想に200億円程度届かなかったが、その理由は本年1~3月に新型コロナ感染症が殆ど流行しなかったからである」と説明。
 その上で、「売上収益および営業利益は3年連続で過去最高を更新し、オペレーションそのものは堅調な1年であった」と振り返った。
 2025年の通期売上収益予想についても、「売上収益目標値の公表数字は5500億円から5300億円に下方修正するものの、大きく飛躍する1年である。社内では5500億円を狙っている」と強調。さらに、「吸収合併する鳥居薬品の売上収益は本年9月1日から、JT医薬品事業は12月1日から予算に組み込まれる」と明かし、「両者の年間売上収益は合計900億円超で、2025年度は500~600億円程度の売上収益が追加される見込みである」と語った。
 塩野義製薬の2024年度業績は、売上収益4383億円(対前年比0.7%増)、営業利益1566億円(2.1%増)、税引前利益2008億円(1.2%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益1704億円(5.2%増)となった。期末配当金は、前回予想から1株当たり4円増配し、33円を予定している。
 2025年度業績は、売上収益5300億円(20.9%増)、営業利益1750億円(11.7%増)、税引前利益2220億円(10.6%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益1800億円(5.5%増)を見込んでいる。
 2024年度のHIV事業は、ヴィーヴ社の堅調な成長に伴いロイヤリティ収入が2500億円近くまで伸長。ヴィーヴ社からの配当金400億円と併せて約3000億円の収入があった。同事業は、「今後もヴィーヴ社だけが有する長時間作用型抗HIV薬のカベヌバ(2カ月に1回静注)が治療の主流となるため、さらなる伸長が期待できる」(手代木氏)。
 海外事業は、セフィデロコル(グラム陰性菌感染症治療薬)の安定的な成長が寄与して、4期連続で過去最高を更新した。同剤は、本年2月に韓国で承認取得し、中国では今年度の承認を予定している。
 手代木氏は、「本剤は、薬剤耐性化合物なので、適正使用が重要になる」とした上で、「米国で販売地域の拡大、欧州では東ヨーロッパでの成長とさらなる地域増を目指しており、まだまだ伸びしろがある」と力説した。
 一方、国内では、COVID-19関連製品+インフルエンザファミリーは、「ゾコーバ(新型コロナ治療薬)とゾフルーザ(インフルエンザ治療薬)を併せ持つことで、新型コロナやインフルエンザの流行に濃淡があっても売上収益500億円をコンスタントに出せる体制が整った」
 加えて、昨年12月に販売を開始したクービビック(不眠症治療薬、ネクセラファーマジャパンと販売提携)は、「4週間処方が認められるようになり、これからかなり期待できる」
 ズラノン(うつ病治療)は2025年度に製造販売承認取得を予定。2023年12月に発売したセフィデルコルも堅調に伸長している。
 ゾコーバについては、国内では「インフルエンザに比べて入院患者数は約4倍、死亡者数は約20倍と後遺症や重症化率の高い感染症」の特徴を訴求し、20%(2024年度13.1%)までの治療率引き上げを目標に成長を目指す。
 海外では、米国で予防適応に関するFDAへの承認申請を開始、欧州では治療・予防適応での申請を準備している。アジア各国への展開も推進しており、「グローバル展開が加速している」
 手代木氏は、さらなるM&Aの基本方針にも言及し、「今後、米国、欧州、中国の売りを増やしていきたい。その施策の一つとして日本以外の地域のM&Aを認識している」と断言。
 その一方で、「欧米メガファーマがベンチャー企業を中心に1品目で1兆円単位の資金を投資している。この手法は、規模的にもスタイル的にも塩野義製薬にはそぐわない」と述べ、「今、2つ3つ検討しているが、自社で物を作って自社で展開を進める方針の中でうまくシナジーがとれる組み合わせがあればM&Aを実施する」考えを示した。
 インフルエンザ流行時の医療現場におけるゾフルーザ不足については、「他社も含めて2月から4月にかけてインフルエンザ治療薬の返品が続いている」と指摘。その上で、「日本全体としては物は足りている。それをどのように流通させるかは、今後、他のメーカー、卸と率直にお話して継続したい」と語った。
 今朝のトランプ米大統領の「米国の処方薬価格の世界で最も薬価が安い国と同水準への引き下げ」表明については、「今後の動向を注視したい」と語るに留めた。また、トランプ関税を巡っては、「セフィデルコルの原料に関する関税レベルなら業績に殆ど影響はない」との見解を示した。

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