ストレスが高く睡眠時間が短いと太りやすい ドクタートラスト

 ドクタートラストは、ストレスチェックサービスを利用した累計受検者264万人超のデータ(国内最大規模)を活用し、様々な分析を行っている。今回は2023年度にストレスチェックサービスを利用した受検者のうち、「1年間の体重変化」の回答が得られた128,896人のデータをもとに、ストレスレベルとの関係を調査した。
 その結果、 1年間で体重が5kg以上増えた人のうち、4人に1人以上が高ストレスを受けており、体重変化は疲労感や不安感、睡眠時間と関連していることが判明した。また、平均睡眠時間が「5時間未満」の割合が最も高いのは、体重が「かなり増えた(5㎏以上)」グループであった。
  ストレスチェック制度は、従業員のメンタル不調の予防やその気付きを促すこと、また、ストレスが高い人の状況把握やケアを通して職場環境改善に取り組むことを目的として制定され、2015年12月以降、従業員数50名以上の事業場で年1回の実施が義務づけられている。
 また、ドクタートラストの提供するストレスチェックサービスでは、ストレスチェックと同時に、生活習慣に関する6つの設問が追加できる。今回は、追加設問のうち「1年間の体重変化」の回答結果からストレスレベルとの関係を分析した。分析は、①減った、②変わらない(2㎏未満)、③やや増えた(2㎏以上3㎏未満)、④増えた(3㎏以上5㎏未満)、⑤かなり増えた(5㎏以上)の5択形式で実施した。回答の内訳と割合、調査結果の詳細、総括は、次の通り。

【回答内訳と割合】


図1

 図1は、1年間の体重変化の回答内訳である。最も多かったのは「変わらない(2㎏未満)」で55.2%、以下「やや増えた(2㎏以上3㎏未満)」17.8%、「減った」14.6%、「増えた(3㎏以上5㎏未満)」8.2%、「かなり増えた(5㎏以上)」4.2%であった。

【調査結果の詳細】

1、 1年間で体重が5kg以上増えた人のうち、4人に1人以上が高ストレス 

 高ストレス者率とは、実際に受検をした人の中で、高ストレスと判定された人がどれくらいいるかを示した割合である。

<高ストレス者とは>
・ ストレスの自覚症状が高い人

・ ストレスの自覚症状が一定程度あり、かつ仕事の負担と周囲のサポート状況が著しく悪いと判定された人

 ドクタートラストのストレスチェックサービスでは、ストレスチェック受検者のストレスレベルをA~Eの5パターンで示している。A判定はストレスが最も低く、E判定はストレスが最も高いことを示す。今回はA、B判定を「低ストレス者」、E判定を「高ストレス者」とする。

図2

 図2は、体重変化別のグループごとの高ストレス者率と低ストレス者率を示したものだ。
 高ストレス者率が最も高かったのは、1年間で体重が「かなり増えた(5㎏以上)」グループで、26.8%であった。次いで「減った」20.2%、「増えた(3㎏以上5㎏未満)」19.9%、「やや増えた(2㎏以上3㎏未満)」15.5%、「変わらない(2㎏未満)」12.2%と続く。
 つまり、1年間で体重が「5kg以上増えた」グループの4人に1人以上が高ストレス者であることがわかった。
 一方、低ストレス者率が最も高かったのは「変わらない(2㎏未満)」グループで26.4%であった。低ストレス者率が最も低いのは「かなり増えた(5㎏以上)」グループで、17.3%であった。1年間で体重が「変わっていない」グループの4人に1人以上が低ストレス者であり、高ストレス者率とは逆転した結果となった。

2、 心身の疲労や不安感、睡眠不足などは体重増減と関係がある

 図3は、体重変化別のグループごとに回答割合の差が大きい5つの設問を示している。
 高ストレス者率が最も高い「かなり増えた(5㎏以上)」グループと、高ストレス者率が最も低い「変わらない(2㎏未満)」グループにおいて、回答割合の差が大きかった設問は、「だるい」、「不安だ」、「気分が晴れない」、「よく眠れない」、「イライラしている」の5つであった。

図3

3、平均睡眠時間「5時間未満」の割合が最も大きいのは、体重が「かなり増えた(5㎏以上)」

 図4は、体重変化別の睡眠時間の割合を示したグラフである。
 平均睡眠時間が5時間未満の割合は、体重が「かなり増えた(5㎏以上)」グループで21.8%と最も高く、「変わらない(2㎏未満)」グループの11.6%と比較して、およそ1.8倍の差が見られた。
 また、平均睡眠時間が「6時間以上7時間未満」および「7時間以上9時間未満」の割合が最も大きかったのは「変わらない(2㎏未満)」グループであった。

図4
【総括】
 1年間の体重変化とストレスレベルを調査した結果、最も高ストレス者率が高かったグループは「かなり増えた(5㎏以上)」で、最も低かったのは「変わらない(2㎏未満)」であっった。一方、低ストレス者率では逆転した結果が見られた。
 また、高ストレス者率が最も高い「かなり増えた(5㎏以上)」と最も低い「変わらない(2㎏未満)」で、回答割合に大きな差があったストレスチェック設問は、「不安だ」、「気分が晴れない」、「イライラしている」などのメンタルヘルスに関する項目や、「だるい」、「よく眠れない」などの身体的な問題に関する項目であった。
 さらに、平均睡眠時間が「5時間未満」の割合が最も高かったのは、体重が「かなり増えた(5㎏以上)」グループであった。一方、「変わらない(2㎏未満)」グループでは、平均睡眠時間が「6時間以上7時間未満」、「7時間以上9時間未満」の割合が他のグループと比較して高い結果となった。
 これらの結果から、体重の増減は心身の不調や睡眠時間と密接に関連していることが示唆される。自分自身のセルフチェックとして、生活習慣を整えることが心身の健康を守るための第一歩になるのではないか。
文責:押切愛里氏(ストレスチェック研究所 アナリスト)
 

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