
介護施設入所に特化した身元保証サービス事業を行うウェルビト(本社:東京都)は、4月22日18時から「認知症の方の生活障害への支援」をテーマにオンライン勉強会を開催する。現在、参加申し込みを受け付けている。参加料は無料。概要・申し込みは、https://mi-ka-ta.jp/study_session/study_session_2504_1/
厚労省の統計によれば、認知症高齢者の数は2022年時点で443.2万人、2040年には584.2万人になると推計されている。さらに、日常生活は送れるものの認知症様症状がみられる軽度認知障害(MCI)の高齢者数(2022年で558.5万人)を加えるとその数はすでに1000万人を超え、高齢者の約3割が認知症またはMCIになっているのが現状だ(https://www.mhlw.go.jp/content/001279920.pdf)。 こうした中、高齢者の生活をサポートするケアマネージャーも認知症の利用者を担当する機会が増加しており、さまざまな日常生活の困りごとに直面している。
そこで、ウェルビトでは、ケアマネージャーを対象に認知症の生活障害に関する独自アンケートを実施した。その結果、認知症の方の在宅ケアにはさまざまな困難さがあり、BPSDの症状などは介護者にとって大きな負担となっていることがわかった。認知症になれば、これまで当たり前にできたことができなくなり、日常生活に支障を来たす場合がある。
一方で、こうした日常生活の困難さは、本人のできることや得意なこと、習慣を活かすことで改善できるケースもある。
これらの結果を踏まえ、今回、「“生活の困りごと”から考える認知症の方への支援―ご利用者の視点を活かしたケアの工夫―」をテーマにオンライン勉強会が企画された。

同勉強会では、高齢者の心理支援を専門とする臨床心理士/公認心理師の扇澤史子氏を講師に招き、「認知症の人の得意なこと、できること」にフォーカスを当てた支援のあり方について解説。高齢者の日常生活を支えるケアマネージャーが明日から役立てられる情報を紹介する。なお、ウェルビトがケアマネージャーを対象に認知症の日常生活での困りごとをテーマに実施したアンケート調査の概要、結果は次の通り。
【概要】
◆アンケート対象:ウェルビト勉強会参加者(ケアマネージャー)
◆アンケート方法:アンケートフォームへの入力
◆実施日:2025年2月22日
◆アンケート回答者数:117人
【調査結果】
Q. 認知症を有するご本人からの訴えの多い生活障害はどんなものがありますか(複数選択可)?

図 1 認知症を有するご本人からの訴えの多い生活障害
※ウェルビトによるアンケート調査結果より回答数の多かったものを抜粋。
認知症の人は、服薬管理の困難や金銭管理の混乱、外出・買い物、食事準備・摂取の問題など、日常生活のさまざまな場面で困難さを感じているという結果となった。回答の90%以上が複数回答となっているため、一人の人が複数の困難さを抱えて生活している様子が伺える。
Q. 認知症を有する方のご家族からの訴えの多い生活障害はどんなものがありますか(複数選択可)?

図2 認知症を有する方のご家族からの訴えの多い生活障害
※ウェルビトによるアンケート調査結果より回答数の多かったものを抜粋。
家族からの訴えの内容も本人とほぼ同様である。ただ、結果を見ると本人ではそれほど多くなかった排泄トラブルや危険行動(火の不始末など)が上位にきている。その理由は、こうした障害は「ケアする側」の負担が大きくなりがちなためと考えられる。
暴言・暴力や徘徊など、認知症のBPSDの悪化により在宅生活が困難になるケースが多い。
Q. 認知症の人の在宅生活が難しくなる最大の要因は何ですか?

図3 認知症の方の在宅生活が難しくなる最大の要因
認知症の方の在宅生活が難しくなる要因として、最も多く挙げられたのが「認知症の行動・心理症状(BPSD)の悪化」(46.2%)であった。BPSDとは認知症の人が示す行動面・心理面の症状のことで、本人の日常生活に大きな影響を及ぼすと言われている。では、具体的にBPSDのどのような症状が問題になるのか。
Q. 認知症の方の生活支援のうち行動・心理症状(BPSD)に関連した項目で難しい、もしくは不十分と感じるものを選択してください(複数選択可)

図4 行動・心理症状(BPSD)に関連した項目で難しい、もしくは不十分と感じるもの
※ウェルビトによるアンケート調査結果より回答数の多かったものを抜粋。
認知症のBPSDへの対応が難しい症状として最も多かったのは「不穏・攻撃性」であった。具体的には、落ち着かずに家の中を歩き回ったり、怒鳴ったり暴力を振るったりといった行動が挙げられる。こうした症状により、同居の家族や介護者などの負担が重くなり、在宅生活を困難にするという実情があるようだ。
同じく介護者の負担が大きい要素として「徘徊への対応」を挙げる人も多かった。夜中に一人で出歩いたりしてしまい、その結果行方不明になったり事故に巻き込まれたりするリスクが高く、常時の見守りが必要となるためと考えられる。
その他、幻覚・妄想(「家に(いるはずのない)誰かがいる」と言う、など)、睡眠障害(昼夜逆転、など)といった症状への対応も、在宅生活を困難にする要因として挙げられた。このように認知症のBPSDはさまざまな症状が出るため、その有無や重症度により生活支援のあり方や困難さは変わると同時に、在宅生活の継続にも大きな影響を及ぼすと言えるだろう。
Q. 認知症の方の生活支援のうちADLに関連した項目で難しい、もしくは不十分と感じるものを選択してください(複数選択可)

図5 ADLに関連した項目で難しい、もしくは不十分と感じるもの
※ウェルビトによるアンケート調査結果より回答数の多かったものを抜粋。
認知症が進行することにより、日常生活動作(ADL)が徐々に困難になるケースも少なくない。そこで、ADLに関する対応での困難さについて聞いてみたところ、排泄関連への対応が最も多い結果となった。トイレの場所がわからなくなるため誘導が必要になったり、排泄を失敗してその片付けに追われたりなど、介護負担が重くなる要因となる。その他、入浴・清潔関連(入浴や口腔ケアにサポートが必要)、食事関連(準備や咀嚼の手伝いが必要)、移動・外出関連(付き添いが必要)といった内容にも困難さを感じているという意見があった。