小野薬品は11日、オプジーボ・ヤーボイの併用療法について、米国FDAが未治療の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん患者の治療薬として承認したと発表した。提携するブリストル マイヤーズ スクイブ(BMS)が8日(米国現地時間)に公表したもの。
適応症は、FDAが承認した検査により測定された高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)を有する治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん(mCRC)成人患者および12歳以上の小児患者のファーストライン治療。
同承認は、MSI-HまたはdMMRを有するmCRC患者を対象とした免疫療法薬として最大規模のP3試験(n=839)であるCheckMate-8HW試験に基づいている。同試験では、全治療ラインにおいてオプジーボとヤーボイの併用療法(n=354)をオプジーボ単剤療法(n=353)と比較評価し、ファーストライン治療においてオプジーボとヤーボイの併用療法(n=202)を治験担当医師が選択した化学療法(n=101、ベバシズマブまたはセツキシマブとの併用または非併用によるmFOLFOX-6またはFOLFIRI)と比較評価した。 同試験において、オプジーボとヤーボイの併用療法は、2つの主要評価項目である全治療ラインにおけるオプジーボ単剤療法と比較した盲検下独立中央評価委員会(BICR)の評価による無増悪生存期間(PFS)、およびファーストライン治療における化学療法と比較したBICRの評価によるPFSを達成した。
今回の承認は、FDAによるこの申請に対するブレークスルーセラピー指定および優先審査の対象への指定を受けて審査が行われ、処方箋薬ユーザーフィー法 (PDUFA)に基づく審査終了の目標期日であった6月23日より2カ月以上前倒しされた。
CheckMate -8HW試験では、全治療ラインにおける免疫療法未治療の患者において、オプジーボとヤーボイの併用療法群は、オプジーボ単剤療法群と比較して、病勢進行または死亡のリスクを38%低減した(ハザード比[HR]:0.62;95%信頼区間[CI]:0.48-0.81;P=0.0003)。
主要評価項目であるPFSについては、PFS中央値はオプジーボとヤーボイの併用療法群で未達(95% CI:53.8-推定不能[NE])、オプジーボ単剤療法群では39.3カ月でした(95% CI:22.1-NE)。また、12カ月、24カ月および36カ月時点のPFS率でも、オプジーボ単剤療法群と比較して、オプジーボとヤーボイの併用療法群で高い割合が示された(オプジーボとヤーボイの併用療法群でそれぞれ76%、71%、68%、オプジーボ単剤療法群でそれぞれ63%、56%、51%)。
オプジーボとヤーボイの併用療法群とオプジーボ単剤療法群のPFS率のカプラン・マイヤー(KM)曲線は、2カ月から両群の早期乖離が始まり、3年時点でも乖離が持続した。また、同試験では主な副次評価項目であるBICRの評価による奏効率(ORR)も達成し、オプジーボ単剤療法群と比較して、オプジーボとヤーボイの併用療法群で良好なORRが認められた(オプジーボとヤーボイの併用療法群n=296、71% vs オプジーボ単剤療法群n=286、58%;P=0.0011)。
患者の10%以上で最も多く発現した原因を問わない副作用(AR)のうち、グレード3~4のARの発現率は、オプジーボとヤーボイの併用療法群とオプジーボ単剤療法群で同等であった。免疫療法薬2剤による併用療法の安全性プロファイルは、これまでに報告されたデータと一貫しており、認められたARは確立されたプロトコールによって管理可能であり、新たな安全性シグナルは認められなかった。
CheckMate -8HW試験のオプジーボとヤーボイの併用療法群と化学療法群の比較では、ファーストラインの患者において、併用療法レジメンは、化学療法と比較して、病勢進行または死亡のリスクを79%低減しました(HR 0.21;95% CI:0.14-0.32;P<0.0001)。 主要評価項目であるPFSについては、PFSの中央値はオプジーボとヤーボイの併用療法群で未達であり(95% CI:38.4-NE)、化学療法群では5.8カ月であった(95% CI:4.4-7.8) 。
また、12カ月および24カ月時点のPFS率でも、化学療法群と比較して、オプジーボとヤーボイの併用療法群で高い割合が示された(オプジーボとヤーボイの併用療法群でそれぞれ79%、72%、化学療法群でそれぞれ21%、14%)。
オプジーボとヤーボイの併用療法群と化学療法群のPFS率のKM曲線は、3カ月から両群の早期乖離が始まり、2年時点でも乖離が持続した。
オプジーボとヤーボイの併用療法は、MSI-HまたはdMMRを有するmCRC患者において、オプジーボ単剤療法および化学療法と比較して有意な有効性を示した最初の免疫チェックポイント阻害薬による併用療法となる。
オプジーボとヤーボイの併用療法の「警告および注意」には、次の事象が含まれている:重篤かつ致死的な免疫介在性副作用(肺臓炎、大腸炎、肝炎および肝毒性、内分泌障害、腎炎および腎機能障害、皮膚関連副作用、その他の免疫介在性副作用を含む)、輸液関連反応、同種造血幹細胞移植(HSCT)の合併症、胎児毒性、および多発性骨髄腫患者におけるサリドマイド類似体とデキサメタゾンの併用療法にオプジーボを追加投与した際(十分に管理された臨床試験以外では非推奨)の死亡率の増加。
オプジーボ単剤療法またはオプジーボとヤーボイの併用療法は、フルオロピリミジン、オキサリプラチンおよびイリノテカンによる治療後に病勢進行したMSI-HまたはdMMRを有する結腸・直腸がん成人および小児(12歳以上)患者の治療として迅速承認されていた。
今回のFDAの承認は、CheckMate-8HW試験に基づき、オプジーボ単剤療法によるセカンドライン治療の適応から完全な承認へと移行し、オプジーボとヤーボイの併用療法によるファーストライン治療へと適応を拡大するものである。
◆CheckMate-8HW試験治験担当医師のHeinz-Josef Lenz氏(USCノリス総合がんセンターの研究プログラム副部長兼消化器がん研究プログラム責任者、M.D.)のコメント
MSI-HまたはdMMRを有する未治療の治癒切除不能なmCRCは、悪性度が高く特に治療が困難とされるがん腫であり、免疫療法薬2剤による併用療法をはじめとする新たな治療選択肢に対するアンメットニーズが存在している。
CheckMate-8HW試験で示された意義のあるアウトカムは、オプジーボとイピリムマブの免疫療法薬2剤の併用療法による治療の開始によって、良好な生存ベネフィットをもたらす可能性を示すものである。
今回の承認は、この型の結腸・直腸がん患者さんに対する従来の治療法を大きく変える可能性を秘めている。
◆Wendy Short Bartie BMSがん領域コマーシャリゼーション部門シニアバイスプレジデントのコメント
今回の承認で、オプジーボを含む治療法は、消化器がん領域においては9個目の適応承認となる。我々は今まさに、消化器がんの治療における免疫療法薬2剤による併用療法の変革の可能性を目の当たりにしている。
MSI-HまたはdMMRを有するmCRCの患者さんは高いアンメットニーズに直面しており、オプジーボとヤーボイの併用療法は重要な新しいファーストラインの治療選択肢となる。このマイルストンは希望をもたらすものであり、より多くの患者さんに新たな治療選択肢を提供し続けるという当社の使命を支持するものである。
◆Nicole Sheahanグローバル大腸がん協会会長のコメント
結腸・直腸がんは、米国では男女合わせて3番目に多く診断され、がんによる死亡原因の第2位となっているがん腫であり、50歳未満の患者における罹患率の上昇傾向が懸念されている。
結腸・直腸がんには、その罹患率の高さにもかかわらず、依然として高いアンメットニーズが残されており、新たな治療選択肢が早急に必要とされている。今回のFDAの承認により、オプジーボとヤーボイの併用療法がMSI-HまたはdMMRを有するmCRCの患者さんにとって新たなファーストラインの治療選択肢となることを大変うれしく思う