ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)は27日、選択的心筋ミオシン阻害剤「カムザイオス」(一般名:マバカムテン)について、閉塞性肥大型心筋症(HOCM)を効能・効果として、厚労省より製造販売承認を取得したと発表した。
カムザイオスは、HOCMの根本的な病態生理を標的とする初めてかつ唯一の心筋ミオシンに対する低分子の選択的心筋ミオシン阻害剤である。肥大型心筋症(HCM)は、他の心疾患や全身性疾患など心室肥大(心室壁厚の増加)を起こす明らかな原因がないにも関わらず、心室肥大が認められる原発性の心筋症であり、左室流出路閉塞の有無により閉塞性と非閉塞性に大別される。
HOCMの臨床症状は患者個々でその程度は異なるが、症状を有する場合、安静時又は労作時の息切れ、疲労、胸痛、立ちくらみ、失神が認められる。これらの症状は従来、有効な治療がない中で徐々に悪化し、身体的負荷が増え、患者や家族の日常生活に多大な影響を及ぼしていた。
同承認は、主に国内P3試験(CV027004/HORIZON-HCM 試験)および海外P3試験(MYK-461-005/EXPLORER-HCM試験)結果に基づいている。HORIZON-HCM試験は、日本人のHOCM患者を対象に本剤の有効性、安全性を評価した非盲検単群試験である。
主要評価項目である投与30週後の運動負荷後の左室流出路圧較差のベースラインからの変化量は、-60.7mmHg(95%信頼区間[CI]: -71.54~-49.86)であった。なお、投与54週後までの副作用発現頻度は2.6%(1/38例)であり、認められた副作用は動悸であった。重篤な副作用は認められなかった。
一方、EXPLORER-HCM 試験は、HOCM患者を対象としたプラセボ対照無作為化二重盲検比較試験である。主要評価項目である投与30週後における臨床的奏効(「心肺運動負荷試験(CPET)で測定された 最大酸素摂取量(pVO2)の1.5mL/kg/min以上の増加、かつNYHA(New York Heart Association)心機能分類のⅠ度以上の改善」又は「pVO2の3.0mL/kg/min以上の増加、かつNYHA心機能分類の悪化なし」のいずれかを満たす)割合は、同剤群が36.6%(45/123例)、プラセボ群が17.2%(22/128例)(群間差:19.4%、95%信頼区間[CI]:8.67, 30.13、p=0.0005)であった。
副次評価項目であるベースラインから投与30週後までの運動負荷後の左室流出路圧較差変化量は、同剤群 -47.2mmHg、プラセボ群 -10.4mmHg(群間差:-35.6mmHg、95%[CI]:-43.15, -28.06)であった。
なお、投与 38 週後までに認められた副作用発現頻度は、同剤投与群で 15.4%(19/123 例)、プラセボ群で14.1%(18/128例)。主な副作用は、浮動性めまい(本剤群4.1%、プラセボ群2.3%)、頭痛(3.3%、1.6%)心房細動(ともに1.6%)、不眠症(1.6%、0%)、呼吸困難(1.6%、0.8%)であった。
◆アンジェラ デイビスBMS研究開発本部長のコメント
慢性かつ進行性の疾患である閉塞性肥大型心筋症の患者さんとそのご家族は、長い間、新たな治療選択肢を待ち望んでいた。日本の患者さんは、この疾患の根本的な病態生理を治療するファースト・イン・クラスの心筋ミオシン阻害剤であるカムザイオスを新たな治療選択肢として得ることになる。
我々は、今回の承認が患者さんとご家族にとってどれほど重要なマイルストーンであるかを理解している。本剤をいち早く治療にお役立ていただけるよう引き続き尽力していく。